だいらんど連載中

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353マロン名無しさん
「うはははは!!」
 桜井は清水に向かってジャンプした。
「死人に口なしよ──っ!!」
 清水は目をつむった。

 どさっ
354マロン名無しさん:2005/11/24(木) 20:13:54 ID:???


       Look at ME!!

3553/7:2005/11/24(木) 20:15:07 ID:???
夜 公園(承前)

 飛距離が足りなかった。桜井は清水の眼前で大の字になって地面に着地した。
 なんなのこの人、と清水は言った。だから病気なんだって、と池田は答えた。
今のうちだと彼が再び逃走を勧めると、桜井がにまりと笑いながら起き上がった。
とうとう私を怒らせたわね。桜井は叫びながら逃げる二人を追いかける。私は
逃げるつもりなんてない、と反駁する清水だったが、自分の右手に繋がれた
池田の左手を見ると顔を赤らめて沈黙した。
 逃げるなら人通りの多い方角を、と清水が言った。池田はそれは実験済みだと
答えた。彼女は昼間噂で聞いた「けっこう仮面」の正体を知った。
 公園の階段を下りながら、池田は自分が清水の手を引いていることに気がついた。
彼は手を離して今は逃げて桜井が正気に戻るのを待つしかない、と言った。
 清水は振り向き、桜井に向けて言った。
「あなた本当に女神なら空だって飛べるんでしょ? 飛んでみて下さらない?」
「はいっ!」桜井は階段の上から、またもや大の字になって、飛んだ。

 桜井が目を覚ますと、手足が拘束されていた。
「正気に戻ったみたいだな」池田が言った。桜井は己を恥じた。
 清水を納得させることには成功した。「あとどうするかは清水しだいだな」
 池田は言った。おら知らね。清水はコホンと咳をして答えた。
「ひとつ条件があります」決して退屈な授業はしない。無理な宿題は出さない。
無意味に生徒をいじめない。つまり楽しい授業をしてください。
「本来勉強って楽しいものだと思うんです」でもそれを教えてくれる先生は
ほとんどいません。その点、先生の授業は、清水は言った。
「とても楽しかったです」その楽しい授業が続くかぎりは先生の秘密について
黙っています。「ありがとう清水さん」桜井は感謝した。
3564/7:2005/11/24(木) 20:16:09 ID:???
朝 教室

 淡々とした中年教師の声が教室を満たしていた。
「池田秀一 宿題の提出がまだですね」やってねえ。
「なぜやってないのです? 理由を言いなさい」やりたくなかったから。
「やる気のない者は出て行きなさい」学ぶ権利は基本的人権だろうが。
「あなたに人権を云々する資格はありません」教師がそんなこと言っていいのかよ。
「いいんです」

昼 美術準備室。

 美術教師は清水の提出した宿題を泣き顔で受け取った。
宿題を持ってきてくれたのは君のクラスでは二人だけだよ。進学校の美術教師なんて
なるもんじゃないなあ。
清水は机の上にもう一人の宿題が置いてあることに気がついた。2-B 池田秀一
清水は目をゆがめながら思った。

 ・・・・・・いじっぱり!
3575/7:2005/11/24(木) 20:16:59 ID:???
昼休み 校庭の隅 木の下

 池田と桜井と清水は三人で昼食をつまんでいた。これからの対策を話し合うためで
ある。とにかくストレスをためないことだ、と池田は主張した。話は難航した。
ストレス解消につきあってくれる友達もいない。運動オンチで、趣味もない。
清水が言った。「恋人とはどうなんです?」池田が焼きそばパンを噴き出した。
それもねー、最近・・・・・・ 桜井がそう言うと池田が動揺した。
 桜井は唐突に気がついたのか、あまりプライベートなことはちょっと、と
口を濁した。そこに他の生徒たちがやってきた。あまりこの場を見られたくない
池田はそそくさと身を引いた。桜井はなかなかの人気ですでにファンクラブまで
出来ていた。会員たちはおそらくは作ったばかりであろう会員カードを桜井に見せた。
握手会が始まった。「会員番号は五桁まで用意してありますから!」
 そこに桜井ファンクラブたちをどいてどいてと押しのけてひとりの少女が現れた。
「新聞部の加藤です インタビューさせてください まず恋人はいらっしゃいますか」

 遠くからそれを見ながら清水がすごい人気ね、と言うと、池田はふんと鼻で答えた。
かと言って嫉妬しているわけではなかった。むしろ他の生徒たちが知らない桜井を
知っていることで池田は優越感すら覚えていた。「すけべ」清水が言った。
「おれが何考えているのかわかるのかよ!」それにしても・・・桜井のやつ男がいるのか?
3586/7:2005/11/24(木) 20:17:45 ID:???
午後 校内

 けっこう仮面あらわる

 学校新聞の大見出しにはそう書いてあった。記事には上半分が使われていた。
そして下半分は桜井の新任について書かれていた。教師桜井写真入りだった。
「一面独占してんじゃん」池田は言った。
「編集部では現在写真を入手すべく・・・ああどうしよう」桜井は動揺していた。
 池田はそのふたつの記事を結びつけて考えるやつなどいないと言った。
清水はこのままけっこう仮面が現れなければすぐにみな忘れると言った。
 ストレスさえためなければ、と桜井が笑っているとそこに中年教師が
通りがかった。「桜井先生 ちょっとお話が」

午後 2-B教室

 桜井は見る影もなく暗くなっていた。
・・・・・・前回の続きから始めます 6ページを開けてください。
 今にも死にそうな顔だった。教室がざわめく。それに気付くと桜井は
両手で顔をぺちぺちと叩き、明るく授業を始めた。「ではLesson 1!」

英語U終業後 廊下

「おい 宇田川のやろうになんか言われたのか?」
 なんでもないの 心配かけてごめんなさい。
「宇田川の新人いびりは有名だからな」
「今夜・・・また切れてしまいそうですか?」清水が訊ねた。桜井はちょっと考えて、
「だいじょうぶ! 自分でなんとかするから」と答えた。
3597/7:2005/11/24(木) 20:18:31 ID:???
午後 2-B教室 化学の授業

 池田は窓から外を眺めていた。そして驚愕した。桜井がふらふらと校庭を
歩いていたのだった。服を両手で押さえている。今にも脱ぎだしそうだった。

 おいおい!? 何がなんとかするだよっ!?
 もう切れちまってるじゃね〜〜か!?

                 三話 おわり