うぜえよ
2 :
マロン名無しさん:05/01/30 11:54:32 ID:TpK3xYz3
楽々A
2get
ベッカム様
Cinco様
レオさま
ちんこ様
明日菜様
たちむぽタッちゃん
I桜木
J流川 楓だ
階段
M三井寿
15少年漂流記
17 :
マロン名無しさん:05/02/01 02:59:01 ID:DQTJWoUM
てすと
テスト
test
TEST
ネギまがうざい
絵を原哲夫風に変えたらいいマンゲになりそう
>>20さんの読み方は「ブラックコートマホラ」でいいんですか?
23 :
マロン名無しさん:05/02/19 23:51:06 ID:5t2FN4q8
24 :
マロン名無しさん:05/02/20 22:17:55 ID:4JvIVPs8
age
(巛ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡)ミ彡ミ彡)ミ彡)
,,从.ノ巛ミ 彡ミ彡)ミ彡ミ彡ミ彡)ミ彡)''"
人ノ゙ ⌒ヽ 彡ミ彡)ミ彡)ミ彡)''"
∧_∧ ,,..、;;:〜''"゙゙ ) 从 ミ彡ミ彡)ミ彡,,)〜'')
√(:::.´_ゝ`) _,,..、;;:〜-:''"゙⌒゙ 彡 ,, ⌒ 彡') 彡"
| (:::..、===m==<|::::::゙:゙ '"゙ミ彡)彡 ヽ(`Д´)ノ') 〜''
|_= |:::. |::. | ' ``゙⌒`゙"''〜-、:;;,_ ) 彡,,ノ彡〜''" ( ),,←
>>1=ちゃこぺん ◆hOdQ/VJSok
(__)_) ゙⌒`゙"''〜-、,, ,,彡⌒''〜''" ,,/ヽミ 〜''
"⌒''〜" 彡〜" "
糞スレ立てんな。蛆虫。死ね。
目覚めは最悪、どぶ川の底を流されながら時折水面に顔を出し必死に息継ぎをしているようなもので、
相も変わらず気の休まる時間は私には訪れないらしい。
一向に鳴り止まない耳鳴りに最早諦め顔で、味など満足に感じられやしないモーニングティーを口に運ぶ。
決して紅茶の味がわからない訳ではないし、寝起きだからといって舌がぼけている訳でもない。
要は精神的なものなのだろう…と、昨日の朝も思った事をまた反芻する。
変わらない毎日の繰り返し、クラスメイト達は今日もにこやかな顔で幸せな学園生活を送っている。
変わらない毎日の繰り返し、私は得体の知れない憂鬱に身をやつしながらこの繰り返しに終わりが訪れるのをただ待ち続けている。
一つ、ゲームをしよう。
この無限に巡る廻廊を打ち砕くための切っ掛けとなるもの、永遠の終わりとなる起点。
…早い話、大層な大義名分をうち立てさえできれば何でも良かったのだ。
手元には冷たく光る短剣。
近衛家に代々伝わる短刀で、今では私のお守りとしてこの学園寮一室のインテリアよろしく部屋の隅に飾られていた。
元は魔を討つために鍛えられたものだという話だが、それならば私を捉えて放さないこの悪夢を打ち破るために一役かって貰うとしよう。
短剣を懐にしまい込み、ルームメイトの二人を起こしにかかる。
ネギ君もアスナも今朝は早起きする用事はないらしく、ギリギリ学園に間に合う時間で起こしてくれと頼まれていた。
平和な学園風景、皆の談笑が教室中に溢れている。
その無邪気な笑い声がどうにも私をあざけ笑っているような気がして、私とこの世界との断絶を改めて感じ取った。
世界への嫌悪感が増すと共に、私の剥き身の感覚はますます鋭敏なものへとその姿を変えていく。
「お嬢様、本日はどうも顔色が優れないご様子ですが大丈夫なのでしょうか…?」
私を気遣いつつも、彼女は相変わらず余所余所しい話し方で接してくる。
…我慢ならなかった。
私が「また昔みたいに呼んでな?」と彼女にそう言ったのは、物を知らぬ少女としての無遠慮さからでは決してない。
立場の違いなど本当にどうでも良かったのだ。
幼い頃の彼女との繋がり…二人の間に壁などなかったあの頃の距離感こそが、私にとっては何よりも大切な物だったのだ。
だというのに、彼女のこの態度…これは最早私への裏切りと呼んで相違無いのではないか。
第一、私の顔色が優れないのは今日に始まった事ではない。
もとはと言えば、いくら求めども決して私との距離を縮めようとはしない彼女のその姿勢こそが私を悩ませ、
重い心労の種となり、ひいてはこの"世界との剥離"の切っ掛けを私にもたらしたのだ。
………ゲームの役者は決まった。
後は彼女がどう演じるか、だ。
「…せっちゃん、今日は折り入って話があるんや…昼休みに屋上で待っとるえ。」
「!――分かりました。」
一体何の用かと訪ねもせずに、やや緊張した面持ちで答えるその姿は、
常に私の"従者"として振る舞い続ける彼女らしいと言えば彼女らしかった。
待つ事数分…ふいに屋上の扉が開き、顔を不安に曇らせた彼女の姿が私の目に映る。
「おじょ…なあぁぁぁっ!!!!!」
まるでこの世のものではない何かを見てしまったかのような叫び声を上げ、彼女は私の元へと一目散に駆け寄ってくる。
「な、何があったのですかお嬢様!こんな、こんなぁ…っっっ」
しかし無理もない、何故なら私は血の付いた短刀を手に、脇腹から血を流しながらうずくまっていたのだから。
「…っちゃん。」
「はい、何です!?何ですかお嬢様っ!」
「落ち着いてな?誰かを呼んだりはせぇへんよに。」
「し、しかしっ!」
まだ私が治癒魔法を使いこなせないものだと思いこんでいる彼女は、戸惑いと焦りの色を隠す事ができないようだ。
実際には魔法のおかげで痛みは無く血もとうに止まっている、その気になれば傷跡一つ残さず即座に完治させる事すらできる。
私との距離を取り必要以上の接触を断とうとなどするから、そんな事にも気づかないのだ。
「これな、ゲームや。」
「は、…ゲーム?」
訳が分からないといった表情の彼女。
「そ、ゲーム。ルールは簡単………せっちゃんは気づいてはいませんでしたが、
ウチはとある人のせいで、結果毎日想像を絶する苦しみを味わう事となってしまいました。」
「なっ!誰がそんなっ、いつの間に…お、お嬢様、一体そやつに何をされたというのですか!?」
「…そしてある日、ウチはその人のせいでこ〜んな大怪我を負うハメとなってしまったのです。」
「お嬢様、そやつに脅されているのですね!?そしてこんな妙な問いかけを私にしろと…
おのれぇっ、何処に隠れている!見ているのだろう、出てこいっ!私が相手をしてやる!!!」
「さて、その人とは、一体誰の事でしょう?………せっちゃん聞いて…今ここで答えて。これがルール、チャンスは一度きりや。」
囁くような私の声に、びくんっと彼女の体が震える。
「この私が気配すら感じとれないとは、余程の手練れか?この、"ゲーム"とやらに付き合うしかないというのか…。」
焦りを通り越して顔面蒼白の彼女は、ゲームのルールなど無視してひとまず私を連れて
この場を離れるべきかどうか、迷っているようにも見える。
「なぁ、せっちゃん…分からへんの?」
「…いえ、少しお待ちくださいお嬢様…ここまで強行な手段をして私達を狙いうる者…、!まさか、天ヶ崎千草っっっお前か!?」
「天ヶ崎千草…それが、せっちゃんの答えなんや?」
私の声に、彼女は私を庇うような姿勢で周囲に警戒を張り巡らせた。
「お嬢様、ご安心ください。例え今の答えが間違いであろうとも、お嬢様にはもう傷一つ付けさせはしません。
必ずそやつをこの手で打ち倒してみせます、この私の命に代えても!!!」
「………そか。なら、死んで?」
とす。
私の握りしめた短刀は思ったよりも軽い感触と共に、彼女の心臓の中心へと吸い込まれていった。
「…え?」
ビックリした、というよりは何が何だかわからない…そんな表情を顔に貼り付け、
次の瞬間大量の血を口から吐き出しながら、彼女はその場に崩れ落ちた。
…即死だった。
「ありゃ、流石は近衛家家宝の退魔の短刀やわぁ。ほんまに一突きで夢魔を払ってしもた。」
クックックックッと、壊れた自動人形のようにリズミカルな響きを口中から漏らしつつ、木乃香は嗤う。
さて、後は死体の処理だが…大した手間ではない。
最近気づいた事ではあるが、治癒魔法とは逆の要領で魔力を作用させれば、
意図的に怪我や病と同じ症状を対象に引き起こす事ができるようなのだ。
祖父が持つ魔法関係の蔵書を調べてみてもそういった前例はなく、あるいはこれは私だけが持つ
天性の才能であるのかも知れないが…ともかく、そういった真似ができるという事実に変わりはない。
彼女の死体の傷を治し――魂までは戻らないが――今度は心臓ショックと同じ症状をその躰に引き起こす…
死の直後であればいくらでも誤魔化しはきく。
私は学園理事長の孫娘、アリバイは学園職員を動かせばいかようともなる。
かくして彼女の死の真相は、暗い闇の底へと葬り去られた。
目覚めは最悪、どぶ川の底を流されながら時折水面に顔を出し必死に息継ぎをしているようなもので、
相も変わらず気の休まる時間は私には訪れないらしい。
一向に鳴り止まない耳鳴りに最早諦め顔で、味など満足に感じられやしないモーニングティーを口に運ぶ。
今朝の紅茶は、味ばかりかとうとうその香りさえも感じとる事ができなかった。
う〜む……刹那も木乃香も好きなんだがこれにはGJ!と言いたい俺がいる……。GJ!
アンチスレにここまで気合いの入ったSSを投下してくるとは‥‥
多分マロン版木乃香スレで活躍してたSS職人だな。
この作者が座薬だったらワロスなんだがなぁ。
座薬っぽい
木乃香の人肉餃子料理ものとか書いてた人じゃないか?
>>37 おそらく
木乃香がイカレて笑うシーンの表現がもの凄く似ているし
あのスレはキチガイ系職人がたくさんいて面白かったな
せっちゃん木乃香をボコにする
このちゃん・・・。
保守
保守
hoshu
最近、こんな夢を見る。
僕がまだもっと小さかった頃…アーニャと初めてケンカした日の事、お姉ちゃんの誕生日パーティーの思い出、
罠にかかっていたカモ君を助けた時の事、様々な思い出と共に僕も成長していって…。
そして、夢の最後はいつも同じ。
魔法学校卒業式の日の夜、僕が家に戻るといつもは出迎えてくれるお姉ちゃんの姿がどこにも見あたらない。
「お姉ちゃん、どこにいっちゃったの?」
お姉ちゃんを探して家中を歩き回り…やがて地下室に降りた僕は、そこでついにお姉ちゃんを見つけた。
ルビーの装飾を施された短剣に胸を突かれ、既に絶命しているその姿を。
「………あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
何も考えられなかった。
頭の中は真っ白で、ぐわんぐわんに世界が歪み…と同時に、強烈な光が僕の脳裏を焼き尽くし…。
「ぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「きゃぁっ!…び、びっくりした〜、どうしたのよネギ!?」
「あ…あれ…アスナさん?」
目の前には僕をのぞき込む彼女の顔、ちょうど僕を起こそうとしてくれていたようだ。
どうやら…またいつもの夢を見ていたらしい。
気がつけばパジャマはびっしょり汗だくで、喉がカラカラに乾いている。
「あれ、じゃないわよ!本当にもう…驚かさないでよね。何か怖い夢でも見たの?」
…夢。そう、夢だ。
ここ数日毎晩見ている、ウェールズ時代の夢。
いつもならば、あの夜家中を歩き回っている所で夢から覚めていたのだが…今日の夢、
その続きに当たる内容はとんでもないものだった。
「ホームシック…なのかなぁ」
だから、不安がその形を変えて…こんな悪夢を見たのだろうか。
しかし、よりにもよってお姉ちゃんが胸を刺されて死んでいるだなんて。
「…ま、なんだかんだ言って、あんたもまだ10歳の子供だもんね…。
ホラ、ちょーど今朝はお姉ちゃんからの手紙が届いてたわよ!これでも読んで元気出しなさいっ。」
そう言って明日菜さんは水の入ったコップと一緒に一通の手紙を僕に手渡してくれた。
当然、僕のお姉ちゃんは死んでなどいない。
今も時折こうして僕に手紙を送り続けてくれている。
手紙を開くとそこにお姉ちゃんの姿が浮かび、最近身の回りで起こったというちょっとした出来事や
僕への心配、励ましなどを魔法のホログラム像を通して伝えてくれる。
…うん、ありがとう、お姉ちゃん。
手紙を読み終えた僕はそれをいつもの場所…僕の机の一番上の引き出しにしまい込み、鍵をかけた。
「あー、あんたって本当に大切なものはいつもそこにしまうのよね〜。」
と明日菜さん。
そう。僕にはウェールズ時代から、とても大切なものは自分の机の一番上の引き出しにしまうという習慣があった。
そこにしまっておくと何となく安心できるのだ。
飲み終えたコップを台所に片づけに行くと、ベッドの方では丁度木乃香さんが目を覚ましたようだった。
「ふぁ〜…やっぱり日曜はのんびり起きられてええなぁ〜。」
「木乃香ぁ、のんびりするのは良いんだけど、今日の朝食の当番あんたでしょ?
もうあたしお腹ペコペコで…。」
「ありゃりゃ、そやった!スマンスマン、今すぐ作りよるから堪忍な〜。」
そう言って木乃香さんは台所に近づき、そして僕に気がつくと…ニコッと笑顔を浮かべて、僕へとすり寄ってきた。
………マズイ。
この場所は明日菜さんの位置からは死角になっている。
慌てて台所を出ようとする僕に、木乃香さんは「おはよ、ネギ君」と声をかけながら…
その手を僕の股間へと滑らせてきた。
「ひゃうっ!」
「…ネギ、どうかしたの?」
明日菜さんがいぶかしげな声で話かけてくる。
「あ、いえ、何でもないですっ。」
そんなやりとりをしている間にも、木乃香さんの手は怪しい動きで僕のあそこをさすり続ける。
(ちょ、ちょっと止めてください、木乃香さんっ!)
僕がその手を払いのけると、(んふふふ〜)と彼女は笑い…ふいに、僕の唇に軽く口を重ねてきた。
「!!!」
それも一瞬の事で、後は何事もなかったかのように僕をすりぬけ、彼女はそのまま台所で朝食の準備に取りかかってしまう。
(ハァ、参ったな…)
心の中でため息をつきながら僕はリビングへと戻った。
…何がきっかけかは分からないが、最近の木乃香さんは妙に積極的というか、
明日菜さんの見ていない所で僕にああいった態度を取ってくる事が度々あった。
僕としては明日菜さんにいつ知られてしまうか気が気ではないのだが、木乃香さんからは
どうもそれを楽しんでいるような節すら感じられる。
今はまだいいが、いつその行為がエスカレートしないとも限らない。
僕自身、木乃香さんの事はもちろん嫌いではないのだが、男女のそれとしての感覚とはちょっと違う気がしている。
(やっぱり、誰かに相談した方がいいのかな…)
日曜の朝だというのに、僕の気分はどことなく沈んだままだった。
夜中の三時、丑三つ時。
ゴーン、ゴーンという時計の音と共に、少女はパチリと目を覚ました。
「…おしっこ、したくなっちゃったかも…」
布団をはい出て、廊下に出る。
トイレは廊下の角を曲がったすぐそこだ。
「…?」
トイレの中から気配がする。
先客だろうか?
ちょっと恥ずかしいな、などと思いつつそのまま足を踏み入れた。
…!???
一瞬、そこに鏡があるのかと思った。
だがおかしい、このトイレの鏡は入り口をちょっと横に入った所に備わっているはずだ…
それに、鏡にしては枠がない。
そこでようやく気がついた、自分と全く同じ顔・姿をした人間が目の前に立っているのだと。
「………ひっ………」
あまりの驚きに声すら出ない。
正に鏡写しのその相手は、無表情にこちらを見やり…そして、
まるでマジック・ショーのように一瞬にしてかき消えてしまった。
…少女はへたりとその場に座り込む。
寝ぼけていたのだろうか?いや、それにしてはあまりにもリアルすぎた。
何が何だか分からない…。
次々と沸き上がってくる恐怖心に突き動かされ、彼女は慌てて自分の部屋へと舞い戻る。
布団を深く被り、とにかく早く夜が明けるのを待つばかりだった。
刹那は思う。
最近のお嬢様のネギ先生に向けての行動は、何処かおかしい。
幸いにも鈍い同級生達は気づいていないようだが、人目を盗んではネギ先生にややゆきすぎたスキンシップを迫っている。
だがこうも思う、その原因は私にこそあるのでは…と。
昔みたいに呼んで欲しいという彼女の願い、それを最近の刹那は少しずつ受け入れるようになっていた。
だがある日、木乃香に寮の裏の林の奥に呼び出された刹那は、そこで彼女に肉体的な関係を迫られる。
それは、刹那にはあまりにも刺激的な誘惑で…しかしそればかりは、最後の一線ばかりは越えられぬと彼女の誘いを断った。
こうも言った、私はこのちゃんには健全な女性としての幸せを掴んで欲しいのだ、と。
返事はこうだ。
「せっちゃんが望むなら…ウチ、そうする」
一切の迷いが感じられない澄んだ瞳で、そう言われた。
それこそが、今の歪な彼女を作り上げてしまった原因だったのではないか…?
あの時もし彼女を受け入れていたら…いや、あるいは従者としての立ち位置を譲らず、
あくまで彼女のお付きの者として振る舞い続けてさえいれば…。
…分からない。何が正しかったのか、あるいは間違いであったのか…。
木乃香を思うあまりの自責の念は、今日も刹那の心に重くのしかかっていた。
「ドッペルゲンガー?」
「うん、そんな感じだった…」
「ドッペルゲンガー…ドイツに伝わる有名なお話ですね。
自分と全く同じ姿をしたそれを見た者は、近い内に死に至るという…。」
「ひぃっ…」
ガタタッ!
思わず椅子を引きずりながら後ずさるのどかに、しかし夕映はこう続ける。
「大丈夫ですよ、のどか。所詮は迷信です。
実際には幻覚の一種だろうと考えられているです、要は脳が見せる幻にすぎないのですよ。」
それでもまだ怯えの色を浮かべているのどかの背中をさすって落ち着かせながら、ハルナが口を開いた。
「夕映のいう通り!それに、のどかったらその時寝起きだったんでしょ?
ただ単に寝ぼけて幻覚を見ちゃったっていう、それだけの事じゃない!」
「そうかな…そう、だよね…?」
ようやく落ち着いてきたのどかが、自分に言い聞かせるように呟いた。
あの後、朝を迎えてようやく起き始めたルームメイト達に自分が見たものを話すべきかどうか、
彼女は迷っていた。
朝の光を浴びていると、まるで昨夜の事はやはり寝ぼけた末の白日夢だったのではないか?と思えてきて…
しかし、夢にしては"昨夜の彼女"のディティールはあまりにも鮮明すぎた。
悩んだあげくに彼女はその日の昼休み、気の置けぬ仲間達に昨夜の事を打ち明けたのだ。
「そうそう!怖い夢を見たようなもんよ、すぐに忘れるって!」
ハルナの明るい笑顔を見ていると胸の中に溜まっていたもやもやが薄れていくのを感じる。
(やっぱり相談して良かった…)
彼女は心の底から友人達に感謝した。
キーンコーンカーンコーン…
昼休みの終わりを告げる鐘の音が響く。
「おっと、次の時間は移動教室だったっけ。早めに支度しないとね〜。」
そう言いながら机に向かうハルナを見て自分も準備に取りかかろうとしたのどかに、
夕映が耳元で囁いた。
「のどか…もし良かったら、放課後二人で図書館島に行きませんか?」
「え?」
「先ほども話した、ドッペルゲンガーは脳が見せる幻覚だ…という件について、
科学的な裏付けに基づいた説明がなされている本があったはずです。
それを読めば、のどかの不安も幾分安らぐのではないですか?」
夕映なりにのどかを元気づけようとしてくれているのだろう、ここは好意に甘えるのも悪くない。
「…うん、そうだね、そうしようかな。あ、ところでハルナは一緒に行かないの?」
彼女達の誰かが図書館島に用がある時は、都合の許す限り三人一緒に連れ立って行くのが常であった。
「ああ…パルはここ数日はこっちの用があるそうですから。」
そう言いながら、夕映はペンで原稿に描き入れる時のような手振りをのどかにして見せる。
「ああ…なるほどね。ふふっ」
二人で顔を見合わせ、笑い合った。
「…?何二人して笑ってるの?」
丁度二人を迎えに来ていたハルナが、不思議そうな顔を浮かべている。
「クスッ…いいえ、何でもないですよ…ねぇのどか?」
「うん、気にしないでねハルナ…うふふっ」
「…?変な二人…」
しきりに首をかしげるハルナであった。
「…その本、かなり深い所にあるんだね。」
もうどれだけの間夕映の後を追いながら歩き続けていただろうか。
図書館探検部の活動で慣れているとは言え、流石に若干の疲れを感じ始めたのどかが
確認するかのように漏らした。
「ええ、でもそろそろ着く頃です。」
…放課後、彼女達は例の本の在処へと向かうべく図書館島の中を二人きりで歩いていた。
「えぇと、確かここの石を動かして…。」
ふいに立ち止まった夕映が足下の何気ない石を横に動かすと、
振動と共に側の壁の一部が徐々にせり出し、その裏に新たな通路がぽっかりと姿を現した。
「!!!夕映っ、これって探検部の地図にも載っていない隠し通路なんじゃ…」
「ええ、その通りです。以前に偶然発見したものなのですが、
この先には貴重な心理学関係の書物が蔵書されていたのです。例の本もこの中ですよ。」
「ふぇ〜…」
「さ、行きましょう。」
…のどかは気づくべきだったのだ。
いくら貴重であったとしても、ただの脳科学的な解説書を置くためだけにわざわざ"この図書館島"に
隠し通路を作る必要性が果たしてあるのだろうか?と。
だが、信頼しきっている友人が自分のために時間を割いて本を探しに来てくれているのだという事実が、
お人好しな彼女の判断を鈍らせていた。
通路の奥にあった部屋は中央にテーブルと一組の椅子、そしてそれを囲むように幾つかの本棚が置かれていて、
そこにはどこかもの悲しい空気が漂っていた。
「…何だか、寂しい感じのする部屋…」
そう呟くのどかを脇に夕映はテーブルの上に備え付けられたろうそくに火を灯し、
まずは椅子に腰掛けるようのどかに勧めた。
「長々と歩かせてしまって済みませんです。」
「あ、ううん、そんな事ないよ!ところで…」
「ああ、例の本ですね。これから持ってきますのでちょっと待ってくださいです。…その前に。」
夕映はおもむろに席を立つと、とある本棚の中から一冊の本を持ち出してきた。
「面白い本がありましてね。せっかくここに来たついでですから、是非のどかにも読んでみて貰いたいのですが。」
「へぇ〜、どんな本かな?ええと…"秘められし魔術儀式とその技法"?
…え、これって…」
「そう、"魔法"に関係する書物です。」
「えっ???」
突然の事に頭が追いつかなかった。
脳科学の本を探し求めてやってきたはずが、目の前にあるのは魔術に関して記された書物。
ネギ先生の一件で魔法の存在そのものは知っていたし、基礎的な魔法の練習をした事もあった。
自分自身、図書館島で魔術の基礎について記された書物がないかどうか調べた事もあったのだが、
少なくとも探検部が把握している範囲では実際の魔術に関して記載されているものは一冊もなかったはずだ。
それが今、ここにこうして置かれている。
「この本は一般的でない魔術体系について記されているようなのですが、中でも興味深いのがここ…」
そう言って夕映がめくったページの見出しには、こう書かれていた。
「禁呪…?」
「そう、禁呪についての解説です。
この本に書いてあった事なのですが、魔術の中には魔法協会によって禁忌とされた術がいくつかあって、
それらに手を出した者は協会によってその身を追われる事となるのだそうです。
ネクロマンシー(死霊生成の術)、リーンカーネイション(転生の術)、ブレインウォッシュ(洗脳の術)等々…」
何かに取り憑かれたかのように熱っぽく語り出す夕映の姿に、
のどかは次第に不気味なものを感じ始めていた。
「あ、あの、夕…」
「のどか、この一節を声に出して読んでみてくれませんか?」
突然話を振られ、のどかは戸惑いつつも夕映に示された一節を読み上げた。
「え、えーと…"我はここに契約の完了を宣言する"?…えっ!?」
途端、のどかと夕映が座っていた椅子の真下が光り、部屋の中を青白く照らし始める。
「きゃっ!な、なに…」
ここに至ってようやく事態の異常さを認識したのどかが慌てて席を立とうとするが、
まるで尻が椅子にくっついてしまったかのように離れてくれない。
それどころか、気がつけば身動きすらままならなくなっている。
「!なんでっ!?どうなってるの!??」
混乱に陥った彼女に夕映が話しかけてくる。
「そして、マジックドレイン(魔力吸収の術)…対象者の生命力を魔力に変え、
一時的に自分のものとする魔術です。」
「夕映っ、一体どういう事なの!?夕映っ!」
いかにお人好しな彼女でも、ここまでくればさすがに夕映の仕業であると気づく。
「前もって準備は済ませてありました。
対象者の宣言をもって、この魔術儀式は完成を迎えたのです。」
一片の表情も変えず、夕映は淡々とそう語った。
「か、完成って…」
「人間の生命力とは莫大なエネルギーの固まりです。
ましてや一人の人間の生命力を全て魔力に変換し、吸収する事ができたとしたら…
未熟な魔法使いでも相当な力を手に入れる事ができる訳です。
所詮は借り受けたものですから、その分を使い切ってしまえば元に戻ってしまいますけれど。」
「生命力を…全て…?
じゃあ、生命力を奪われた方の人間は…」
おそるおそるのどかは訪ねる。
「当然、死ぬですね。それが禁呪たる所以です。」
何の感情も込められていない声で、夕映はそう答えた。
「い、いやあぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!!!!」
更なるパニックへと陥ったのどかに、夕映が口を再び開く。
「そうそう、こんな話があるです。これもその本に記されていた事なのですが…
この術は発動から数日かけて対象者の生命力を魔力変換可能な不安定な状態へと変化させ、
最後に対象者の儀式の場での宣言を以て実際の魔力変換を開始するのですが…。
生命力が不安定な状態にある際、時折その一部が対象者の体から一時的に離脱する事があるのだそうです。
なんでもその時、その離脱した力は対象者と全く同じ姿・形をとるのだとか…」
のどかにはその話を聞いて思い当たるフシがあった。
「!じゃぁ、あのドッペルゲンガーって…」
「そういう事です。その現象が起きたという事は、つまりは魔力変換への準備が出来たという事。
準備にかかる日数には個人差があるそうですから、本当はもっと確実なだけの時間が経過してから
儀式を完成させるつもりでしたが…おかげでいい目安になりましたです。」
なんという事だろうか。
真面目に相談に乗ってくれたばかりか、自分を安心させようと図書館島探索にまで付き合ってくれた。
そう思っていた彼女がその実、事の原因であったとは…彼女に感謝しきりであった自分はまるで道化ではないか。
「ぅ…ぁぁ………」
夕映、どうして…?
そう問いかけようと開いた口からは弱々しいうめき声しか漏れてこない。
体に全く力が入らない…どうやら、生命力の変換とやらが大分進んできたようだ。
「ふふ…感じるです、魔力が流れ込んでくるのを。」
正反対に、夕映の表情と口調には精気がみなぎっていた。
「のどか、不思議そうな顔をしているですね。こう思っているのでしょう?
"何で、どうしてこんな事するの"って。」
夕映の台詞に、のどかは力なく頷く。
「…力が要るです。あの女から、ネギ先生をお守りするだけの力が…」
のどかは知らない事だが、夕映には占術において天性とも言える才能があった。
独学で学んだものとはとても思えない程に正確な占いの結果の数々…。
まだ未熟ゆえに占いの対象を自分でコントロールする事は出来なかったが、
そんな彼女の予知の中には一つ、恐ろしい結果が含まれていた。
"ある女によって自分の知るネギ先生が失われる"…しかも、その女はあろう事か彼の教え子であった。
まだまだ魔法使いとしては未熟以前である自分がこんな事を言ったところで、到底信じて貰えるとは思えない。
そう悩んでいた時、彼女にとって救いの手となりうる占いの結果がでた。
"図書館島の隠し部屋に行けば、力を手に入れるための方法を知る事ができる"
占い通りに隠し部屋を見つけた彼女は、そこでこの本と出会う事になる。
「のどか、これは喜ばしい事なのです。あなたはその命をもってしてネギ先生を守る事ができるのですよ。それに…」
そう呟きながら夕映はのどかに近づき、すっかり冷たくなったその頬をなでる。
もはや彼女の命が尽きるのは時間の問題だろう。
「私、前からずぅっと邪魔だなって思っていたです…のどかの事。」
吐き捨てるように言い切った。
びくんっとのどかの体が震え、その目が悲しげに歪む。
「ネギ先生は多分、あなたの事を憎からず思っているです。
それにあなただって気づいていたんでしょう!?私の気持ち…。
それなのにあなたときたら、目の前でネギ先生といちゃいちゃ見せつけてくれちゃって…!!!」
そう。のどかは知っていたのだ…夕映の気持ちを。
だが夕映は自分を影ながら応援してくれているようだったし、ネギ先生と仲良くなる事でその気持ちに
答えているつもりだったのだ。
しかし、おそらく彼女は…友情とネギ先生へと惹かれていく気持ちとの狭間で押しつぶされてしまったのだろう。
それが彼女をこんなにも歪めてしまったのだ…そう思うと、やりきれない悲しさが襲ってくる。
夕映―そう声に出そうとしても、もううめき声すら出てこない。
「何ですか、その目は…私を責めているですか!?
…まぁ、いいです。どうせもう死んでしまうんですから。」
そう、こんな女の事なんてどうでもいい。
私はネギ先生をこの先待ちかまえる数々の困難から、そしてあの女から守らなければならないのだから。
それと同時に、当然他の雌犬どもの手からもネギ先生をお守りしなくては。
「…」
悲しそうな顔に涙を浮かばせ、口をかすかに動かし…そして、のどかは事絶えた。
それと同時に夕映に流れ込んできていた魔力が安定する。
儀式の完了であった。
「これで雌犬がまずは一匹、片づいたです…。」
夕映の顔にはただただ、冷たい笑みだけが浮かんでいた。
―かわいそうな、夕映―
のどかの最後の呟きが夕映に届く事はなかった…。
仕事を終えて寮の自室に戻ってきた僕は、コタツ台の上に書き置きが残されているのを見つけた。
明日菜さんは部活動でまだ帰ってきておらず、いつもは先に帰ってきているはずの木乃香さんの姿も見あたらない。
「?…なんだろう。」
書き置きにはこう記されていた。
"ネギ君、今日はおり入って話しがあるんよ。寮の裏の林の奥に夜8時に来てくれへん?待っとるえ。 木乃香"
…来るべき時がきたと、そう思った。
ここ最近の木乃香さんの様子を思えば、用というのはやはり告白とかそういった類のものだろう。
僕ぐらいの年の男の子にとっては告白なんてのは一大イベント、いやがおうにも緊張してくる。
それに…僕は木乃香さんの告白を断るつもりでいる。
申し訳ないが、やはり恋愛の対象として彼女を見る事は出来ないというのが本音だ。
一体なんと言って断れば良いのか、泣かれてしまったらどうしようか…そんな考えが頭の中を埋め尽くしてパンク寸前になる。
こんな時、僕はいつもウェールズから届いたお姉ちゃんの手紙を読み直す事にしている。
不思議と気持ちが落ち着くからだ。
「…うん、もう大丈夫。」
読み返した手紙をいつもの引き出しにしまい…と、さっきの書き置きの事を思い出した。
「念のため、明日菜さんに見られない内に捨てておこう。」
木乃香さんの事だ、きっと「この事アスナには黙っといてな?」なんて言うだろうから。
書き置きはクチャクチャに丸めてゴミ箱の中へ。
これで大丈夫、後は明日菜さんが帰ってくる前に部屋を出ておこう…
用が済んだ後は仕事で遅くなったとでも言い訳すれば良いだろう。
時刻は夕方6時半、待ち合わせにはまだ早い。
お気に入りのカフェでなるべく当たり障りの無い断り方を考えながら、残りの時間を潰すとしよう。
こうして僕は手短に準備を済ませ、部屋を後にした。
薄暗い闇の中、木乃香は林の奥の広場に一人立っていた。
ネギ君との待ち合わせ時間までまだ大分あるが、今の内からここに立って心を落ち着けておきたかった。
この場所を選んだのには理由がある…そう、せっちゃんとの"約束"の場、そこだからだ。
(せっちゃん、待ってて…ウチ、幸せになるから。)
そう、彼女が言ったから。
私は"健全な女性としての幸せ"を掴んでみせるのだ。
そうすればせっちゃんはもっともっと私を好きになってくれるハズ…。
でも、もしも。
ネギ君が私の告白を受け入れてくれなかったら…どうしよう、どうしてくれよう?
その時は、きっと…。
「うふふっ」
木乃香の顔に妖しい笑みが浮かび上がる。
と、
パキッ
誰かが小枝を踏む音が辺りに響き渡った。
「…誰?」
ネギ君だろうか?
まだ時間には早いが、私と同じように早めに待ち合わせ場所に向かおうとしてくれたのかも知れない。
「…お嬢様」
その声の主は…
「せっちゃん!?」
そう、彼女であった。
「お嬢様が林の中に入って行くのを見かけまして、心配で追って参りました。
申し訳ございません、後を付けるような真似をしてしまいました…
ですが、こんな時間にこんな場所で、一体いかがなされたのですか?」
元々木乃香の身を守るのは自身の役目、ましてや最近の木乃香はネギ先生への態度をみても分かるように何処かおかしいのだ、
それがこんな人気の無い林の中へ一人入って行ったとなれば、心配で後を付けてくるのも無理のない話だ。
「そ、そうなんや…えーっと」
さて弱った、これからネギ君へ告白するのだと正直に話す訳にもいかない。
俯いてどう言い訳するべきか考えようとしたその瞬間、
ブァンッ!
という破裂音とともに、俯いたままの自分の視界に何かが転がり落ちてきた。
「…?」
初め、潰れた巨大なトマトかと思った。
だが良く見るとそれが人間の頭部に極めて近い形をしている事に気づく。
それに、ピューッピューッという、この何かが吹き出るかのような音は…。
俯いていた顔を上げる。
すると先ほどまで刹那が立っていた場所には首の無い人間の胴体があり、
それが首元の辺りから盛大な血しぶきを上げていた。
何で、こんな所にこんなものがあるんだろう?
一瞬そう考える。
それに、せっちゃんは何処へ行ってしまったのだろう?
そこまで考えて…ようやく、脳が現実を受け入れた。
この首の無い胴体は…そして、足下に転がった潰れた何かは…。
「せ、せっちゃ、ん…?」
まるでその声に答えるかのように直立したままの刹那の胴体が揺らぎ…そして、
地面に突っ伏すように倒れた。
気がつけば自分の体は彼女の首から吹き出た血で真っ赤に染まっている。
「あ、あ…………………………………………………………っっっ!!!!!!!!」
声にならない絶叫が広場に響き渡る。
と同時に、
「…見つけたです。」
もう一つ、別の誰かの声が響いた。
こちらに向かって歩み出てきたその声の主は、意外な人物であった。
「夕…映?」
「こんばんはです、このかさん。こんな所で何をしているのかは知りませんが…。」
場違いな挨拶と共にこちらを見据えた夕映には、明らかに普段とは違う―何か、圧倒的な圧力感があった。
「ビックリしたです、話には聞いていましたがとんでもない魔力量ですね。
儀式のおかげで基礎魔力が向上して魔力感知がかなりの範囲でできるようになったですが、
初めこの魔力の固まりと存在感は何事かと思いましたです。
で、来てみたらあなたがいた訳です。」
儀式?魔力感知?
何の事かは分からないが、存在感云々で言うならば今目の前に立っている夕映こそが、
よほど尋常でないものを放っているように思える。
「ついでに刹那さんがおられましたので、これは丁度良いと思いまして。
彼女、ネギ先生のパートナーの座を狙う浅ましい雌犬どもの内の一匹ですから。
こうして始末させて頂きましたです。」
?彼女は一体何を言っているのだろうか?
…いや、今彼女は最後に聞き捨てならない事を言った。
「じゃ、じゃぁこれは…せっちゃんを、殺したのは…」
「だからさっきから言っているではないですか。私が始末したのだと。」
夕映は平然とそう言ってのけた。
「あ…あんたが…せっちゃんを…!?」
「あぁ、そう言えばあなたも契約カード持ちの雌犬の一匹でしたか。
まぁ、そんなの関係無しに仕留めるつもりでしたが。
最近のあなたの行動は目にあまるです、物陰でこそこそネギ先生に淫らな行為をせまって…
気づかれていないとでも思っていましたか?」
「ゆ、許さん…」
「ネギ先生はこれから私と共に数々の困難を乗り越えていかなければならないのです。
ネギ先生に害をなすあなたのような存在は、私が始末します。」
ドンッ!
という音と共に、夕映が禍々しいまでの魔力を解き放つ。
「絶対に許さんえーーーっ!!!!!!!!」
ゴゥンッ!
同時に、木乃香も激しい怒りにまかせてその強大な魔力を解放した。
明日菜が部活を終えて寮に戻った時、寮入り口の時計の針は既に夜7時30分を回っていた。
「あーあ、部活長引いちゃったな〜…ネギ、木乃香、いないのー?」
…返事がない。
パチンと部屋の電気をつける。
ジジッ…
独特の音と共に数度の点滅を繰り返した後、蛍光灯の光が無人の部屋を照らし出した。
「ネギはまだ仕事かぁ…にしても、木乃香までいないってのは珍しいわね。何処か寄り道してるのかしら?」
などと呟きながら部屋を見回していると、とあるものに目がいった。
ネギの机の一番上の引き出しが…空いている?
「珍しいわね、あいつがあそこを開けっ放しにするだなんて…。」
いつもは念入りに鍵までかけているというのに。
…ふと、好奇心が沸き起こった。
いけない事だと知りつつも引き出しの中を覗き、今朝ウェールズから届いたばかりの手紙を手に取る。
「あのホログラム、一体どうなってるのか興味深いのよね…触ろうとしたらスルッてすり抜けちゃうのかしら?」
物珍しいものを見るとすぐに触りたがるのは子供の頃からの癖だ。
私もネギの変な習慣の事言えないな、と苦笑しながら手紙を開く…と、そこに例の魔法のホログラム像が浮かび上がった。
「どれどれ…」
明日菜がホログラム像に手を触れた途端…バチンッという音共にホログラムがかき消え、
そこには新たに無機質な数字の並びが姿を現していた。
「!…え、ど、どうしちゃたの!?ひょっとして壊しちゃった???」
実際には手紙に施されていた立体像生成の魔術――魔法使い同士が手紙でやりとりする場合の標準的なスタイルだ――が
明日菜の魔法無効化能力によって解呪されただけなのだが、明日菜にはそれを知る由もない。
「?この数字、どんどん減っていってる…。」
よくよく見るとその数字の並びはどうやら時間を表しているようで、
一番右の数字が一秒毎に減っている事から考えると、どうもこれは残りの秒数をカウントしているものらしい。
その数字の並びから離れた左上の隅にも「2」という数字が書かれている。
「…」
これ以上いじるのは止めた方がいいと頭の中で警鐘が鳴っている…が、
この残り時間を表しているらしい数字が一体なんであるのか気になるというのも事実だ。
おそるおそる数字に触れてみる…と再びバチンッという音と共に、
今度は数字の並びが全桁「0」を示してそのまま静止してしまった。
左上の数字だけは「2」のままだ。
…?
「な、なんだったのかしら…。」
ガタンッ
「ひっ!」
突然の物音に思わず飛び上がった。
「何、なんなの…!?」
音は、どうも玄関の方から聞こえてきたようだ。
「…ポスト?」
どうやらポストの中に何かが入っているらしい。
だがおかしい、配達人らしき気配は一切感じられなかったのだが…。
不気味なものを感じながらも、ポストの中のものを取り出した。
すると…。
「な、なによ…一体どうなってるのよ!?
何でもうネギのお姉さんからの新しい手紙が来てるのよっ!!!」
そこに入っていたのは"一ヶ月後"の消印が押された、ネカネ・スプリングフィールドからのウェールズよりの手紙であった。
ここに来て明日菜の感じていた不気味さは、得体の知れない恐怖へとその姿を変える。
たまたま一日違いで手紙が二通送られていただけならば、消印が一ヶ月先になっているなどという事は起こり得ない。
そう、これは紛れもなく"一ヶ月後"にここに届くはずだった手紙なのだ。
薄暗い玄関から居間へと戻り、震える手で新たに届いた手紙の封を破る。
正体が分からぬからこそ殊更に恐ろしい。
ならば知らずに恐れ続けるよりも、それがいったい何であるのかを最後まで確かめた方がまだいいのではないか…。
そんな心理が働いたのか、恐怖を感じながらも明日菜は手紙の確認を止めようとはしなかった。
しかして開かれた手紙に浮かび上がったホログラム像に手を触れると、
バチンッ
やはりそこにあった立体像はかき消え、先ほどと同じく数字の並びが姿を現した。
だが、今度は左上隅の数字が「1」に減っている点が先程とは異なっている。
これが意味するものは一体…?
もう止めた方がいい、今ならまだ引き返せる…そんな心の声も今の明日菜を止めるには至らず、
彼女はその手を再び数字の上に重ねる。
バチンッ
ガタンッ
やはり数字が「0」になった後に、一瞬の間をおいて玄関のポストから物音がした。
確認するまでもない、またネカネからの新しい手紙が入っているのだろう。
「うぅ…」
ポストに目線を向けながらも思わず後ずさった彼女は、足をゴミ箱にぶつけて倒してしまった。
ガシャッという音とともに中のゴミ屑が床一面に散らばる。
「あぁ、もう…」
混乱した頭で散らかったゴミ屑を前に目線を泳がせていると、その中の一つに目が止まった。
「乃香…木乃香?」
くしゃくしゃに丸められた紙に書かれた文字が気になり、拾い上げて元通りに伸ばして読んでみる。
「木乃香がネギを呼び出してたんだ…だから二人ともいなかったのね。」
わざわざ裏の林の奥にまで呼び出すとは一体何の用なのだろうか…ふと気にはなったが、
今はそれどころではなかった。
相変わらず混乱した頭のままゴミ屑を全て拾って丁寧にゴミ箱に戻し――あるいは一種の現実逃避
だったのかも知れないが――そして、ポストの中の手紙をおそるおそる取り出す。
頭の片隅に左上隅の数字の事が引っかかっていた。
残りの秒数を表していた数字と同じように、あれも何らかの残りを示しているのだとしたら?
手紙を開く事で1減ったのだと考えると、手紙の残り枚数の事を指し示しているのではないだろうか?
だとすれば、この手紙が最後の手紙だという事になる。
この手紙を開いた事で一体何が起こるのか…頭の中の警鐘はますます激しく鳴り響き、
震えは手ばかりか体全体にまで及んでいた。
背中は嫌な汗でべっとりだ。
だがここまで来たのだ…最後まで確認しなくては気が済まない、
それにいざ蓋を開けてみればその中身はどうって事ないのかも知れない…そう、そうに決まってる。
汗ばんだ手で手紙の封を破く。
そしてネギに手紙を覗いた事を謝って…それでお終い、そのはずだ。
―その程度で済みそうな事であるのならば、何故これ程までに強い恐怖感を覚えなければならないのか。
明日菜はその事について深く考えるのを止めて、思い切って手紙を開いた。
グォァァァァァァッ!!!!!
明日菜が最後の手紙を開くと同時にそこから強烈な白い光が溢れ出し、明日菜の全身を包み込む。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!!!!」
自分の口から漏れ出る絶叫を聞いたのを最後に、明日菜の意識はぷっつりと途絶えた…。
「夜8時…10分前。よし、時間通り。」
僕は現在時刻を確認すると、寮の裏にある林の入り口に足を踏み入れた。
この林は実際には森と言っても遜色無いほどの規模があり、
通常林の奥と言えば入り口から10分ほど歩いた所に広がっている広場の事を指す。
休日昼間にはたまに森林浴に訪れる人達もいるそうだが、こんな平日の夜中に足を踏み入れる人はまずいないだろう。
カフェで時間を潰している間に考えた断り文句を頭の中で反芻させながら歩いていると、
5分も経たない内に開けた場所に出た。
「あれ、広場までってこんなに近かったっけ…?」
だが良く見れば何かがおかしい。
広場というよりは辺り一面まるで巨大な台風が通った後のようで、所々に折れた木々が転がっている。
その規模からすると、丁度広場のあった辺りを中心に広範囲に渡って荒れ地が広がったかのようだった。
「え…なに、これ…」
あまりの事に呆然としていると、荒れ地の一角に人影が見える事に気がついた。
ここからでは良くは分からないが…木乃香さんだろうか?
この荒れ地がいつできたものか分からない以上、だんだんと彼女の事が心配になってきて…
僕は慌ててその人影へと向かって走り出していた。
「木乃香さーん!大丈夫ですか!?」
向こうも僕に気づいたらしい。
「この広場、一体何があったんで………アレ?」
近づいてみると、どうやらその人影は木乃香さんとは別人だったようだ。
「…ネギ先生、こんばんはです。」
「ゆ、夕映さん?どうしてここに…!??」
ぞくぅっ!
夕映さんの顔が分かるくらい近づいた途端、強烈な悪寒が僕の背中を走り抜けた。
この禍々しいオーラはいったい…!?
「ああ、もう気づいたですか。
びっくりさせないように抑えてはいたのですが…さすがはネギ先生です。」
夕映さんが嬉しそうな顔で言う。
「夕映さん、これは一体…?」
どういう事なんですか?と続けようとしたその時、夕映さんの足下に誰かが横たわっているのに気づく。
上半身と下半身が綺麗に切断され、眠るかのように目を瞑ってはいるが
既に息絶えているのが明らかな程に青白い顔をしているその人物は…。
「うわぁぁぁっっっ!!!こ、木乃香さんがっ!!?」
死んでる…僕と待ち合わせをしていたはずの彼女が、死んでいるっ!?
突然の事態に思わず腰を抜かしかけた僕に、夕映さんが淡々と語りかけてきた。
「さすが東洋一の魔力量を誇ると言うだけあって、彼女の魔法は極めて強力だったです。
魔法使いとしてはまだまだ未熟な分、ただ単に魔力の固まりをぶつけてくるだけではありましたが、
それはこちらも同じ事ですから…ですが、さすがに禁呪で得られた魔力を上回る程のものではなかったようです。」
なんだ…彼女は一体、なにを言っている…?
「人一人の生命力というものは思ったよりも強大なのですね。
何はともあれ、ネギ先生に害をなさんとする者を始末できたという事は大変にすばらしい事です。」
つまりは彼女が木乃香さんを殺したのだと、そういう事なのだろうか?
そんな馬鹿な!
…だが、彼女の体から溢れ出るこのオーラがそれを証明しているのではないか?
僕は知らず知らずの内に後ずさりをする。
「ネギ先生、共に支え合い、これから先待ち受ける困難を乗り越えていきましょう!
微力ながら私もお手伝いするです…ネギ先生、どこへ行かれるのです?」
「あぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
気づけば僕は悲鳴を上げながら荒れ地の入り口へと向かって駆け出していた。
木乃香さんの死体から、夕映さんの放つ禍々しいオーラから、そしてこの悪夢から逃げ出したかったのだ。
「ネギ先生、どうして逃げるです?
大丈夫ですよ、先生に卑しくまとわりついていたこの雌犬はもう死んでいます、もう安心していいのです。」
そう言いながら、夕映さんは僕の後をゆっくりと追いかけてくる。
何があったのかは分からない。
ただ一つ確かなのは、今の夕映さんはもう僕の知っている夕映さんではないという事だ。
パニックになりながら林の中に駆け込もうとしたその時、林の奥から一つの人影が姿を現した。
「ネギっ!」
「あ、明日菜さん!?」
どうして明日菜さんがここに!?
ごみ箱に捨てた書き置きに気づいてしまったのだろうか?
思わず立ち止まった僕の元に明日菜さんが走り寄ってくる。
その時、彼女の登場に気づいたらしい夕映さんの叫ぶ声が聞こえた。
「…!ネギ先生、その女から離れるです!!!」
マズイ!
理由は分からないが今の彼女は極めて危険だ、明日菜さんに対してだって何をしでかすか分からない。
と同時に禍々しいオーラが僕の後方で一気にふくれあがり、そのまま明日菜さんへと向かって一直線に飛んでいく。
しまった、間に合わない!!!
最悪の事態を想像して思わず目をつぶった僕の耳に、明日菜さんの声が響く。
「きゃっ!…"リフレクション"!!!」
!!???
え、今…!?
慌てて目を開けた僕の前には信じられない光景が広がっていた。
明日菜さんの前に反射障壁が生じて夕映さんの魔法を反射し、それはそのまま夕映さんへと向かって飛んでいく。
明日菜さんが…魔法を使った!?しかも相当に高度なはずの反射魔法を…。
「きゃぁぁぁっっっっ!!!!!」
自らの放った魔力にその身を焼かれ、夕映さんが悶え苦しむ。
魔力を慌てて防御に回しある程度は防いでいたようだが、どのみちあれでは致命傷間違いないだろう。
「あ〜ビックリした。その魔力量…あなた、禁呪を使ったわね?
さすがに無効化仕切れない程の威力だったけれど…でも単純な魔法で助かったわ、
幾ら威力があってもはね返しちゃえばいいんだから。
反射障壁を全然警戒していないあたり、あなた魔法使いとしては下の方ね。」
まるで別人としか思えない語りぶりの明日菜さんを前に、僕は唖然とするばかりだった。
…油断していたです。
何が起こったのかはよく分からないですが、とにかくあの女は私の放った魔法をどうにかしてはね返したようです。
まさかここにあの女がいきなり現れるだなんて…計算違いもいいところです。
あの占いの結果…"ある女によって自分の知るネギ先生が失われる"…ある女―神楽坂明日菜、
私自身の介入を以てしてもこの結果を変える事は出来なかったようです。
先生…ネギ先生…私はなんとしてでも、あの女から先生をお守りしたかった…。
急速に体温が失われていく…ネギを守りきれなかった事を悔やみながら、夕映の意識は永遠の闇の底へと沈んでいった。
「全く何なのかしら…まぁいいわ。久しぶりね、ネギ♥」
「…」
立て続けに起こる異常事態に半ば思考する事を放棄した僕の脳でも、はっきりと感じられる違和感。
それに…今、"久しぶり"と言った?
久しぶりも何も、僕と明日菜さんは今日も部屋や教室で顔を合わせていたばかりではないか。
「ふふっ、やっぱりいきなりじゃ分からないかな…?」
そう言って手を頬に当てる仕草、そして普段は寝る時にしかほどかないはずのストレートなロングヘアは、
僕の脳裏にとある女性を連想させた。
そうだ、この仕草と雰囲気は…まるでネカネお姉ちゃんの生き写しではないか!?
そう思った瞬間、自然と口が動いていた。
「お…姉、ちゃん…?」
「あはっ、当たり!さすが私のネギね!!!」
明日菜さんはそう言って心底嬉しそうな微笑みを浮かべる。
明日菜さんが…ネカネお姉ちゃん?
確かに明日菜さんが何処かお姉ちゃんに似ているな、と漠然と感じた事はあったが…所詮は赤の他人だ。
イコールで結ばれる事などありえない。
未だ事態が飲み込めずにいる僕に、微笑みを浮かべたままの明日菜さんが口を開く。
「どうせまたすぐに忘れさせちゃうんだけれど…せっかくだから教えてあげるわね。
可愛いネギが困っているんだもの。」
そうしてクスクス笑う彼女の口から語られた話の数々は、とても想像すらできなかったものばかりで…
僕は口を挟む事すらできずに、ただ呆然とそれを聞いていた。
「私ね、どうして姉弟って結婚できないのかな?って、ずっと悩んでいたの。
私達は実の姉弟ではないけれど、たとえ戸籍上の姉弟であっても結婚できないのは同じ事。
私はネギの事をこんなにも愛していて、それはネギだって同じ事のはずなのに…ね、そうよねぇ?ネギ。
…ふふっ、聞くまでもない事だったわね。
そんなある日に、おじいちゃんが日本の友人である近衛近右衛門さんと電話でお話している所を立ち聞きしちゃったのね。
最初は盗み聞きするつもりなんて無かったから、すぐにその場を去ろうとしたのよ。
でも、聞こえてきた会話の内容に釘付けになっちゃって…。
…何だったと思う?
おじいちゃんたらね、近衛さんの所で預かっているアスナとかいう娘をネギの許嫁に考えている、ですって!
おまけにネギの試験会場を近衛さんの運営する学園に指定して、その娘とネギを同室にさせようだなんて言いだしたのよ!
本当、信じられないわっ!!!
このままじゃネギと結婚できないどころか、ネギが何処の誰とも分からない女と結婚させられちゃう…!
あんなに焦ったのは私の人生でも初めての事だったわ。
でね、一晩ずぅっと頭を悩ませて…そして閃いたの。
私がネギの姉である以上結婚できないというのならば、私が私以外の誰かになってしまえばいいんだって。
そしてその誰かがアスナとかいう娘であれば、万事上手くいく…いいえ、むしろおじいちゃん達が後押ししてくれるわ。
…ねぇ、ネギ、"リーンカーネイション"っていう魔術、知ってる?
魔法協会に禁忌とされているこの術はね、執行者の魂を対象者の体に移し変えて事実上の転生を可能としてくれるの。
勿論、対象者の魂は術が完了した時点で消滅してしまいますけれどね。
でもね、この術を使って転生した者は魂と肉体がそれぞれ別物であるという矛盾のせいで、
その魔力が特殊な波動を持つようになってしまうの。
だから見る人間が見ればすぐに禁呪の使用がバレてしまって、協会にその身を追われる事になってしまうの…普通はね。
でもおじいちゃん達の話では、何でもそのアスナとかいう娘は100年に一度生まれるかどうかの
アンチマジック・チャイルドだって言うじゃない!?
魔法無効化能力というのは外から自身の体に向かってくる魔力だけでなく、中から外に向かう魔力も当然無効化できるのよ。
だからこの体の魂が私と入れ替わっても、魔力自体が体から外へ向かう前に無効化されてしまうから…
禁呪の使用を悟られずに済むの。
魔法を行使する際は無効化を解除する必要性があるから、その時魔法協会に所属する正式な魔法使い達がその場に
いないかどうか気をつける必要はあるのだけれども。
おまけにアスナとやらは自身の能力について全く知らされていないそうだから、
魔法から自身を守ろうと言う明確な意志がない限りは、せいぜい微弱な魔法を無意識の内に無効化するくらい…
転生の術をかける分には問題ないわ。
これはきっと神様の思し召しよ…私がこのアスナとやらの体に転生するべきだと、そう仰っていたんだわ!!!
だから、私は"リーンカーネイション"の儀式を実行したの…あなたが魔法学校を卒業した、その日の夜にね。」
卒業式の日の夜…その言葉に、僕はここ数日見続けていたあの夢の事を思い出した。
「転生の儀式って…じゃぁ、僕が夢の中であの日の夜に見たお姉ちゃんの死体は、まさか…」
それを聞いたお姉ちゃんがビックリするような目で僕を見つめる。
「へぇ、さすがはネギね。もう術が解けかかってるんだ。
…私ね、不安だったの。
ルビーの短剣で自分の胸を刺せば術は発動し、私の魂は手紙の中に封じられてあなたの住む部屋のポストに届き、
最後の一通の開封を以て転生は完了する…手紙は数通に分ける必要があったけれど、
時期を空けて一通ずつ送られるように仕掛ければ変に思われる事もない。
月の魔力が最適なものとなるのはちょうどあの卒業式の日の夜、
その時を逃せば次の周期が巡ってくるまで数年は待たなくてはならないから…
なんとしてでもあの日に術を発動させる必要性があったの。
でも正義感の強いネギは私が禁呪を使用する事に反対するでしょうし、
それにもし黙って儀式を実行したとしてもネギがウェールズを立つ前に私の遺体を見つけて騒がれてしまったら…
だから、ネギの記憶をちょっといじらせてもらったの。」
ああ、そう言えば…。
お姉ちゃんがゆくゆくは魔法を用いた心理療法師になりたい、と語っていた事を僕は思い出していた。
「もし私の死体を見つけてしまっても、すぐにその事を忘れてしまうように…
そしてネギは私に見送られてウェールズを旅だったのだと、そう思いこむようにね。
魔術が発動すれば時間と共に私の遺体は消滅するから、今頃ウェールズでは私は行方不明扱いになっているはずね。
魔法使いとなるための試験の最中は試験への影響を考慮して、
身内の不幸やトラブルは試験終了まで一切伝えられない事になっているのだけれども。」
僕は本当に知らなかったんだ。
確かに昔からちょっと過保護な所があるかなとは思っていたけれど、
それでもそれは姉としての優しさからくるものなのだと、そう思ってたんだ。
まさか、お姉ちゃんがそんな事を…僕の事を弟以前に一人の男性として捉えていて、本気で結婚をも考えていただなんて。
「そして最後には、この肉体―神楽坂明日菜があなたの姉、ネカネ・スプリングフィールドでもあるのだという事に
何の疑問も抱かないように…あなたの記憶を、そう作り替えてあげる。」
お姉ちゃんも、木乃香さんも、夕映さんも、みんな皆おかしくなってしまった。
そしてその狂気に巻き込まれ…明日菜さんの魂はもう、この世に存在しない。
…お姉ちゃんの手に淡いオレンジの光が灯り、僕の頭へと近づいてくる。
何だかもう、色々おかしな事が立て続けに起こりすぎて疲れてしまった。
それに、胸にぽっかりと大きな穴が空いてしまったかのようなこの感覚…
明日菜さんのあの快活な笑顔がもう二度と見られないのだと思うと悲しくて、
悲しすぎて、もう涙すら出てこない。
「いらないモノは全て忘れて…ゆっくりお休み、ネギ。」
魔力を宿したお姉ちゃんの…かつては明日菜さんのものであった手が、僕の額に触れた。
ああ、そうか…僕はやっぱり、明日菜さんの事を、本当に心の底から………
チュン、チュン、チュン…。
「ネギ…ネギ…」
窓から射すまばゆい光の中、僕の体を揺さぶりながら呼ぶ声が聞こえる。
「んっ…、ふぁぁ…おはよう…。」
「ふふっ、おはよう…ネギ。」
チュッ
寝起きの挨拶代わりのキスから、そのまま舌を絡めてのディープキスへ。
お姉ちゃんが僕を起こしながらの口づけは、もはや日課となっている。
「ほら、もうそろそろ起きなくちゃいけない時間よ。
ネギ先生は今日は学校で何を教えてくれるのかしら?」
クスクス笑いながら、お姉ちゃんは台所へ向かって朝食の準備を始める。
僕のお姉ちゃん―ネカネ・スプリングフィールドは、僕の教え子・神楽坂明日菜でもある。
当然の事ではあるが、二人きりの時以外はあくまで"神楽坂明日菜さん"として接しなくてはならない。
そう、それが当たり前なのだ。
何はともあれ、まずは着替えを済ませなければ。
洋服ダンスの中からスーツを取り出そうとして…ふと、タンスの隅に
鈴のついたリボンのようなものが転がっているのに気がついた。
?
お姉ちゃんはいつもストレートのロングヘアで、髪を留めたり縛ったりはしないはずだ。
なんでこんなものがタンスの中にあるのだろう?
捨ててしまおうか、それとも念のためお姉ちゃんに訪ねてみるべきか…不思議に思いながら手に取った瞬間、
甘酸っぱいような、それでいて何処かもの悲しいような感覚に突如襲われた。
…何の見覚えもないもののハズなのに、何故?
やはりお姉ちゃんに聞いてみるべきだろうか、と考えたがどこかそれをためらう気持ちがあって…
気がつけば、僕は鈴付きのリボンを手に自分の机の前に立っていた。
………。
自分でもなんでそんな事をしたのかよく分からない。
僕はそのリボンを机の一番上の空っぽの引き出しの中にしまいこみ、大事に大事に鍵をかけた。
――あー、あんたって本当に大切なものはいつもそこにしまうのよね〜――
どこか遠い記憶の影で、誰かのそんなからかう声が聞こえたような気がした。
切ない物語GJでした!
また刹那のせいで木乃香が狂った
せっちゃんはロクでもないな
うあー…どいつもこいつも狂ってやがる。
良い感じにどいつもこいつも救われない作品でGJでした。こういうの大好きです。
ていうかここってSSスレなの?
ネギま系アンチスレはAA、SS、改変コピペ、何でもあり
生き死にを上手く使う作品には敬意を。GJ
しかし何故にアンチスレに良いSSが投下されるかw
以前の天使木乃香とか結構キてるが面白いのがあったね。
天使様のラジオはキチガイ系なのに萌えたなw
あと木乃香が鏡の中の自分に命令されて殺すやつもかなり狂ってた
つかここって実質あそこの次スレ?w
保守
(`
'´  ̄ ヽ
|!|((从))〉
'(||" 3 "リ 刹那uzeeeeeeeeeeeee
イギリス軍は「敗れた敵でも、よく闘ったものには尊敬をささげる」国民は、
わがイギリス人と日本人のみの特性だといった。
騎士道と武士道ということなのだろうか。
生き死にを上手く使う作品には敬意を。
\
へ__ /;;;;;;;;;;;//;; ;;;;; ;;; \
/;;;;;;;;;\\|;;;;;;;;/ /;;; ;;;;;; ;;;; ;;; \
イ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ |;;;;;;/ ./;;; ;;;;;; ;;;; ;;;;;... へ;;; \
/ ∩ソ ;;).|;;./⌒/;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;; /;;; .ソ/ /;;;;;;;ヽ;;; ;; \
( |;|( 丿 .|/ |;;;;/|;;;;;;;;;;;;;;; //;;;//;/;;;;;;;;;;;;;;;;;\;;;;; ;; ;;; \
/ ̄¬| ̄ |;;/ .|;;;;;;;;;;;; //;;/;;;//;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;; ;;;;; ;; \
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せっちゃん、ウチと一緒に死んで
保守
82 :
マロン名無しさん :2005/05/12(木) 18:29:20 ID:??? BE:404698289-
このサイトって刹那好きじゃないの?
刹那のグロ好きです
朝、わたくしの肛門からウンコを一さじ、すっと吸ってお嬢さまが、
「あ」
と幽(かす)かな叫び声をお挙げになった。
「とうもろこし?」
ウンコに何か、イヤなものでも入っていたのかしら、と思った。
「いいえ」
お嬢さまは、何事も無かったように、またひらりと一さじ、ウンコをお口に流し込み・・・
86 :
勝手に続き:2005/05/14(土) 06:21:36 ID:???
そして、こう仰った。
「せっちゃん…どういう事や?」
「は…と、言われますと?」
まったく分からなかった。
わたくしのウンコは、今日も程よい堅さで、お嬢さまのお好みに相違無いはず。
何が問題なのかしら。
「せっちゃんのウンコ、ネギ君の精液の味が、しよる」
若干のいらだちを含んだ声で、咎めるように仰った。
!
そう、わたくしは昨晩ネギ先生と秘密の逢瀬を交わし、口にてネギ先生へと奉仕をし、
その熱く滴る精液を残さず飲み込んだのだ。
まさかその事に、お嬢様がお気づきになられるとは。
しかし、わたくしは、とある事にも気がついてしまった。
「お嬢様…ネギ先生の精液の味がお判りになられるとは、一体どういう事なのですか」
「あ…」
今度は、お嬢様が黙りこくってしまわれた。
わたくしとお嬢様の間に、気まずい沈黙が流れる。
あろう事か、互いに同じ男性を相手に浮気をしていたというのだから、
その気まずさたるや、推し量る術もございません。
「…せや」
「はい?」
気まずい空気を振っ切るように、お嬢様が明るい声をお上げになった。
「半分こや」
「半分…こ?」
なるほど、そういう事か。
「そうであれば、丸く収まります」
得心がいったとばかりのわたくしの言葉に、お嬢様は満足そうに微笑まれた。
「あの…お話って、何でしょう」
すっかり萎縮したご様子の、ネギ先生。
わたくし達に呼び出されたとあれば、二股がばれたのだとの予想も、容易についた事でしょう。
「先生、何も先生を責めようという訳ではないのです」
「えっ?」
先生の緊張の糸が、かすかに緩んだように見て取れた。
「せや、ウチら半分こにする事に決めたえ。…オンッ」
ぶわっ
お嬢様の詠唱と同時に、その魔力が先生の体を縛り付けた。
「うわっ…な、なんなんです?」
いきなりの事で、先生も慌てふためいておられるようだ。
「だから、半分こにするのですよ。」
わたくしはそう言って、夕凪を鞘から抜くと、先生を縦に一閃まっぷたつに切り分けた。
バシャッ
先生の臓物、脳、血、骨が、半身の断面から覗き見え、あるいはこぼれ、床へと散らばった。
「あ〜…」
お嬢様が気の抜けた声をお上げになった。
「死んでしまわれました」
「せやな」
死んでしまったのでは、仕方がございません。
「もしもし、じいちゃん?ちょっと頼まれてくれへんか」
お嬢様のお電話で呼び出された近衛家の側近達が、たちどころの内に部屋に
散らばったモノを片づけ、後始末をし、かくして部屋には元の静けさが戻った。
何かとややこしい事後処理も、近衛家の方で手回しをしてくれるのだという。
「やっぱり、せっちゃんが一番やな。浮気はアカン」
「わたくしも、そう思います」
お嬢様とわたくしは、互いに顔を見つめ合い、仲よく笑い合った。
88 :
マロン名無しさん:2005/05/14(土) 12:00:16 ID:??? BE:56208252-
はっぴエンドですね!
高濃度の電波が観測されました
90 :
マロン名無しさん:2005/05/14(土) 12:36:05 ID:??? BE:157383247-
うちがせっちゃん殺したんや・・・
せっちゃん・・・うちと前みたいにして!って頼んでも
いつも「それは・・・」
せっちゃん?
どんだけうち傷つけてるか分かる?
最初はいじめから始めたよ・・・
せっちゃん心つよいんやなー
いじめてもいじめても、せっちゃんいつもどうりやった・・・
その姿がむかついて、いじめをひどくしていってやった・・・
それなのにせっちゃん?
どうしてそんな目で見つめるの?
「お嬢様?信じてます」とでもいいたそうな目!
せっちゃん分からんの?
全部せっちゃんが悪いねんで・・・
もう我慢できんくなったうちは、とうとう殺しちゃった・・・
ははっとうとうやっちゃったよ・・・
殺すきなかってんけど、やりすぎたなー
せっちゃん、殺される瞬間なんていったと思う?
「このちゃん、愛してました・・・」
「えっ?・・・うそやん?うち・・・」
言われた時には遅かった・・・
もう死んでしまってた・・・
やっとその時、うちもせっちゃん愛してたって気付いてん・・・
愛してたがゆえ、その態度が気にくわんかったんやろーな・・・
うちは泣いた、かなり泣いた・・・
体の水分なくなるやないかなって言うぐらい・・・
91 :
マロン名無しさん:2005/05/14(土) 12:37:26 ID:??? BE:134899564-
その日からうちはせっちゃん生き返らす為、魔法を習った。
もちろん人間を生き返らすなんて無理やった・・・
なんかの時の為、せっちゃんの体はきちんと、保存している。
保存するのは簡単だった。
うちは、やってはいけない魔法も何回もやった・・・
それでも、失敗作ばっかや・・・
やっとちょっとだけせっちゃんに、近づいた時があった。
何の生き物か分からないけど・・・言葉は言えてた。
「この・・ちゃ・・ん・・・・・な・・んで?・・・」
うちはその時ドンだけ泣いたやろ・・・
周りから見れば、うちはおかしかったんやろーな・・・
だって自分で殺しといて、生きかえらそーとしてんねんもん・・・
近衛家でせっちゃんのことをもみ消ししたけど、明日菜たちの態度は変わってた。
でもうちはそんなことより、せっちゃん生き返らすのが一番大事やったから
92 :
マロン名無しさん:2005/05/14(土) 12:38:03 ID:??? BE:202349849-
やっと分かってん・・・生きかえらし方、
そのためには自分の命とせっちゃんの体が必要やった・・・
うちは、迷わずやる事にした。
その前にせっちゃんに手紙を書いた・・・
「私はどうしたの・・・・?」
刹那は生き返った、だが自分はお嬢様に殺されたはずと思いだし、状況が判断できてなかった。
そのとき刹那は手紙が目に入った。
「えっ・・・なんで・・・うちのために・・・・そんなぁ・・・うわぁーーーー」
手紙に書いてあったことは、殺した理由、それでやっと愛してたと気付いた事、なぜ今木乃香が居ない事。
刹那は泣き叫んだ。
いや狂ってしまったのかもしれない。
「お嬢様ーーーーーーー!!」
「なんやせっちゃん?」
「え?」
お嬢様の・・・声?
「せっちゃん ごめんな・・・うち死んでしまったけど、さよちゃんみたいになっただけやわー
だから、いっしょにいて・・・?」
「おっお嬢様・・・もちろんです・・・」
普通にいいお話ですな。
あれーおかしいな…w つうかこれじゃ木乃香uzeeeeeeeeな感じがする
ネギまスレuzeeeeeee
nodoka uzeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!!!!
糞スレuzeeeeeeeeee
ご愛顧ありがとうございました
このスレはここまで です。。
thank you 2ch and...good bye 2ch world!!
99 :
マロン名無しさん:2005/05/17(火) 17:27:31 ID:zO9bF2Vm
刹那嫌いって結構多いんだな。俺だけじゃなくて安心した。
ネギまuzeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
刹那が木乃香に刺されたり首が吹っ飛んだりウンコたべさせたり虐められたりする姿に萌えるファンスレです。
_γ
,.'´ `ヽ
i ||ハハハ||
ヽ| § ゚ x゚§ノ 〜♪
へノ /
Ф ノ
。゚ >
-━━-
保守
ご愛顧ありがとうございました
このスレはここまで です。。
thank you 2ch and...good bye 2ch world!!
保守
保守
保守
test
保守
WE HAVE A GOOD TIME!! THANK FOR YOU
このスレをご愛顧いただき
ありがとう ございました
保守
木乃香が刹那を虐める話は苦手です・・・
木乃香好きなんで・・・
せつこので刹那が報われない話を誰か書いてください!!
虫のいい話だなオイ( ´,_ゝ`)
保守
このスレッドのご愛顧 ありがとう ございました
thank for you ........we have good time
保守
せつこので刹那が報われない話を誰か書いてください!!
119 :
aaaaaaaa:2005/06/12(日) 16:53:04 ID:fMflE+j8
せつこので刹那が報われない話を誰か書いてください!!
必死すぎてむかつく
あれみたい。あの…何だっけ冬ソナじゃなくて純愛の…片山恭一のやつ!何だっけーゴミみたいな小説なんだけどさぁ…。
122 :
マロン名無しさん:2005/06/15(水) 00:35:41 ID:kJ1AnXl8
あれだよ!あの……「助けてください!」ってやつあるじゃん。何だっけなぁ……うぇっ考えただけでキモチワルッ!
124 :
マロン名無しさん:2005/06/15(水) 12:21:55 ID:NGf9OqPX
世界の中心で愛を叫ぶか?
保守
水をやろう、この種に
この種はとてもお水を欲しがっているのだから
水をやろう、この種に
この種にはお水が必要なのだから
「私ね、最近ガーデニングに凝ってるんだ♪」
「え〜…」
「む〜っ、何よぅその言い方は」
「だって…まき絵はガーデニングってキャラでもないでしょ?」
「言ったな〜!ゆーなぁー」
「キャハハハハ!ちょ、ちょっとくすぐるの止めてー!!!」
「なんや楽しそうやな〜、ガーデニングならウチも最近始めたばかりやわ〜。」
「…あ、え、えーっと…このかちゃんもやってるの!?いいよね〜ガーデニングって!」
「…あ〜、近衛さんならピッタリかもね…誰かさんと違って…」
「こちょこちょ…」
「ギャハハ!!ゴメ、ごめっ、許してまき絵ー!!!」
「あははは…でもな、なかなか芽が出てこんのや…なんでやろ?」
「へ〜種まきからやってるの?本格的だね〜。
あたしは苗を買っちゃうからその辺りの事はちょっと分かんないや…ゴメンね〜」
「あ、えぇよえぇよ、気にせんで。
…でも、何で上手くいかんのやろ…」
光を当てよう、この芽の先に
この芽はとても光を欲しがっているのだから
光を当てよう、この芽の先に
この芽には光が必要なのだから
刹那さんが行方不明になってから、今日で二週間が経った。
しかし人間は案外に慣れる生き物らしく、一人抜けた事でバランスの崩れてしまった教室の空気も
今ではそれが当たり前のようにすら感じられて…薄情な自分をどこか責め立てるような思いに
かられる事もしばしばだ。
彼女の元気な姿をもう一度見たい…早く彼女が見つかってくれればいい…まるでそれが
薄情な自分なりの罪滅ぼしだと言わんばかりに、日ごと日の終わりに彼女のその身を想い案じる毎日。
そんな放課後、夕日を眺めながらぼんやりと思いを馳せていた僕の耳に、
教室に残っておしゃべりを続けていた幾人かの生徒達の声が流れ込んでくる。
「…でな、芽がようやく出てきよったん」
「やったじゃん、おめでと〜!」
「ところで、近衛さんが育ててるお花ってどんなの?」
「あぁ…花が咲いてな、種が出来たら…せっちゃんが帰ってくるんや」
「あ…」
「…そうだね、早く帰ってくるといいよね…」
刹那さん失踪直後から、皆はまるで腫れ物を扱うかのような態度で木乃香さんに接してきたのだが…。
触れてはいけない物に触れてしまった、その感覚。
それが、まき絵さんと裕奈さんの息を呑む音を通して僕にまで伝わってくる。
…木乃香さんなりのおまじないなのだろう、種が出来る頃にはきっと刹那さんが帰ってきてくれるはず…
そう信じているのだ。
そう言えばここ最近、夕方に一時間ほど部屋を空けるのが木乃香さんの日課となっていた。
部屋に様々な占いグッズのように大がかりな趣味の道具を置く事は、僕たちの迷惑になるからやりたくない…
と、以前にそう彼女が話していた事を僕はふと思い出していた。
きっと学園長にお願いして何処かに部屋でも貸してもらっていて、
ガーデニングも他の趣味と一緒にそこでやっているのだろう。
多分、薄情な自分と違って…木乃香さんは刹那さんのいない教室の空気に慣れてしまうだなんて事は決してなくて、
だからこそそんなおまじないにすがるしかなかったのだ。
僕が感じたこのやりきれない思い、これと同じものに、きっとまき絵さんも裕奈さんも苛まれているのだろう。
肥をあげよう、このお花に
このお花はとても肥を欲しがっているのだから
肥をあげよう、このお花に
このお花には肥が必要なのだから
「なぁなぁまき絵、木乃香さんて最近ヤバイんとちゃう…?」
「ヤバイって…何が?」
「あんな、花が咲いて種が出来たら桜咲さんに会えるとかなんとか…」
「あぁ〜それね、きっとおまじないなんだと思う…だから、亜子もあまり悪く言わないであげ…」
「イヤイヤイヤ!ウチも最初はそんなんかと思っとったんやけどな、なんかよく話を聞いとると
出来た種を蒔いて育てればそれが桜咲さんになるとか、けったいな事ばかり言いよって…。」
「…えーっと………それ…ホント?」
「こんな事でウソ言わんよ!
桜咲さんがいなくなった事が相当堪えとるんかも…どないしよ、ネギ先生に相談した方がええんかなぁ…」
「う〜ん…」
キィッ…バタンッ
「…よし」
夕方6時半、いつも通りの時間に木乃香さんが部屋を出るのを確認し…僕は彼女の尾行を開始する。
(見た目は普段通りの木乃香さんだったけれど…)
亜子さん達の話はにわかには信じがたいもので、けれどももしその話が本当だとしたら…
彼女をそのまま放っておくだなんて事はできるはずもなかった。
だが事が事なだけに彼女を刺激するのはまずいと考えた僕は、
ひとまず彼女がガーデニングに勤しんでいる様子を影からこっそり窺う事とした。
寮を出たのち校舎と反対の方向に向かった彼女は、細かい路地裏を幾つもくぐり抜け…やがて、
周囲を木の柵で覆われた小さなプレハブ小屋の前へと辿り着く。
ここが木乃香さんが使っている"趣味用の物置場"なのだろうか?
などと電柱の影で考えている間に、彼女は小屋の中へと入っていってしまった。
………。
周囲には家らしき家が一つも無く、どこかうら寂しい雰囲気すら漂わせている。
こんな所で"ガーデニング"?
別にガーデニングなんて何処でもできる、けれども何かが引っかかっていた。
足音を立てないよう、慎重に慎重に小屋へと近づいていく。
まるで臆病神に取り憑かれたような気分だ…遠くからは蛙の合唱が鳴り響いて――この辺りには
田んぼがあるのかも知れない――、そこに虫の鳴き声が入り交じる。
大丈夫、大きな音さえ立てなければ気付かれっこない…。
そろりそろりと小屋の裏手へ回り、身をかがめながら中から明かりの漏れ出している窓の側へとにじり寄る。
足下は小石だらけで、うっかり蹴り飛ばしてしまわないよう細心の注意を払わなければならなかった。
…声が、聞こえる。
どうやら木乃香さんの独り言らしい。
「…っちゃん、もうすぐやなぁ…もうすぐ、種ができるえ。
そしたら、ウチがちゃんとせっちゃんの事育て直したる…せやから、安心してぇな…?」
…亜子さん達の言っていた事は、やはり本当だったのだろうか?
彼女に気付かれないようそうっと身を起こし、窓の脇からこっそり中の様子を窺った。
!!!!!!!!!!
何だ、何なんだこれは…!?
怪しげな水晶や仮面、偶像などの占い道具が無造作に置かれた殺風景な部屋の中央に据え置かれた、
人一人分は軽く飲み込んでしまいそうな程に大きな鉢植え。
その中に、奇妙な物が埋まっていた。
それが何であるのか理解するのにしばしの時間を要し、そして…気が付いた。
(せ、せせっ、刹那さんっ!!!?)
あの髪型は間違いない、鉢植えの中に埋まっているのは…刹那さんだ!
それに気付くと同時、目の前の奇妙な光景はおぞましく、そしておどろおどろしいものへと姿を変える。
赤茶色にどろどろと溶けた肉からは馬糞に生えるような不気味なキノコが無数に生え、
あるいはカビに覆われ、あるいは得体の知れない虫がその表面を這いずり回り…とても正視に耐えうる物ではなかった。
「ひぃぃっ…!!!」
無意識の内に僕は情けない悲鳴をあげ………そして――木乃香さんが、僕が覗いていた窓へと振り向いた。
「そこにいるのは…だあれ?」
無表情のままに窓枠へ駆け寄り、乱暴に窓を開け放つ。
「わぁぁぁぁぁぁっ!」
僕は恐怖のあまりその場にへたり込んでしまった。
「…なんや、ネギ君やないか。
どないしたん?」
「あ、あぁぁ………」
声が、出てこない。
喉が恐怖で完全にすくみあがってしまっている。
「あー、"アレ"か…びっくりしたやろ?
驚かれるやろから誰にも見せんでおこう思っとったんやけど…今な、せっちゃんの種を育てとるんよ。」
「た、ね…?」
ようやくの思いで僕は声を絞り出す。
「そ、種や。
…せっちゃんな、一度はウチの事"このちゃん"て呼ぶようになってくれてたんに、
最近はまた"お嬢様"としか呼んでくれへんようになってしもて…。
酷いやんかそんなの…なぁ、ネギ君もそう思うやろ?」
…違う。
以前に刹那さんが僕に漏らした事があった。
これから先の戦いはますます激しいものになるであろうし、だからこそ自分はお嬢様が
魔法使いとして一人前になるまでは完全に護衛役に徹する必要があるのだ、と…。
だから…刹那さんが木乃香さんの事を再びお嬢様と呼ぶようになってしまったのは、
木乃香さんの身を案じるが故のものであったはずなのだ。
「それでウチ、どないしたらええんやろって悩んで悩んで…気付いたんよ。
ならウチの事をちゃんと"このちゃん"って呼んでくれるように…せっちゃんを一から育て直してしもたらええやないかって…。」
「育て…直す…?」
「せや。
せっちゃんを植えてな、芽が出て花が咲いて種が出来て…。
そいでその種を植えたら…せっちゃんが新しく育つんや。」
一瞬、そういう術式なのだろうか?とも考えたが、巨大な鉢植えの中からは何の魔力も感じられはしなかった。
これは魔法でも何でもないのだ。
そう、つまりコレは――腐り落ちた肉から芽に見立てられたカビが、花に見立てられたキノコが生え狂った刹那さんの死体は――、
木乃香さんの狂気の産物に過ぎないのだ。
怖い。
今は目の前の彼女が、ただただ怖い。
「うぁぁぁ…」
じり、じり、じり。
腰が抜けてしまったのか体を起こす事も出来ず、しかしそれでも僕は這うようにしてこの場を逃れようとする。
「…ネギ君、何処に行くん?」
木乃香さんが…ヒョイッと窓枠を飛び越えて、僕のいる砂利だらけの屋外へと降り立った。
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ…」
思わず悲鳴をあげる僕に、木乃香さんは柔らかな笑みを浮かべて近づいてくる。
「…どうして逃げるん?」
「来ないで…来ないでくだっ…!」
僕が絶叫しかけたその瞬間、木乃香さんの顔から一切の表情が失われ…それは、
僕の脳裏に不気味な能面のイメージを思い起こさせた。
「ネギ君なら、話しても大丈夫かも知れんと思っとったのに…」
彼女はそのまま僕のそばへと腰を下ろし、そして、その能面のような顔を僕の目の前に近づけて…。
「う、あぁ、ぁぁぁ…」
呻く僕へと、キスをした。
!!!
彼女の舌が僕の口中を這いずり回り…と、何か異物感が感じられたかと思った瞬間、
彼女はその異物を僕の喉の奥へと無理矢理に押し込んできた…!
「むぐっ!むごぉーっ!!!」
ゴキュッ
抵抗むなしく僕はその異物を飲み下してしまい…そして、木乃香さんは僕の口から唇を引きはがす。
「ごほっ、げほっ!い、今何を…!?」
途端、強烈な目眩と痺れが僕を襲い、僕はそのまま地面へと突っ伏してしまった。
「あ…あれ…?」
変だ。
猛烈な眠気とだるさが、急激に僕へと襲いかかる。
「ネギ君が飲んだカプセルに入っとるやつな、せっちゃんが商売道具いうて育ててたんやけど…要は毒草や。
それも、即効性かつ致死性の強烈な奴や。」
毒…!?
嫌だ、そんな…僕はまだ死にたくなんか…!
必死の思いで治癒呪文を唱えようにも、もはや舌すら麻痺してどうにもならなかった。
「大丈夫やネギ君、ウチがそんな酷い事するはずないやろ?
…ネギ君もちゃんと育て直してあげるから、安心してぇな?」
そんな木乃香さんの言葉も何処か遠く…薄れゆく意識の中で、僕はふと変わり果てた刹那さんの姿を思う。
何でこんな事になってしまったのだろう?
刹那さんはただ木乃香さんの事を守ってあげたかっただけだと言うのに。
…なんだ、死の直前になってまで刹那さんの事を想ってるだなんて…。
僕も、そんなに薄情って訳でもなかったんじゃないのかな………。
あぁ…心臓の鼓動が、とてもゆっくりで…まるで時が止まりゆくかのように、緩やかに静止していき…。
そして僕は…種になるのだ。
水をやろう、この種に
この種はとてもお水を欲しがっているのだから
水をやろう、この種に
この種にはお水が必要なのだから
このかたんコヮッ… GJ!! GJ!! 続き早くキボン!!!
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いままで2chのご利用 感謝します
136 :
マロン名無しさん:2005/06/27(月) 00:01:21 ID:bZ+/dKM+
なんで、みんなの書く木乃香は恐いの((゜△゜;))
>>136 なんとなく狂気が似合いそうなキャラだからではないかな?
いつも笑顔な木乃香だが、人間いつも笑ってばかりではいられない。
怒ることもあれば悲しむこともある。笑顔の裏で表現されない感情がたまって
爆発することもありえないことじゃない。
まして刹那に心を許したのに、刹那の思いはどうあれ
「お嬢様」と再び距離を取られれば、この展開も不自然じゃない。
狂った木乃香は美しいから
白痴美って昨日源氏物語(若菜だけど)の授業でやった。要は
>>138。しかもこのかは大和撫子キャラだし似合うんじゃねーの?
140 :
マロン名無しさん:2005/06/27(月) 20:15:12 ID:zCdPGPtR
普段の木乃香が好きや(゜」゜;)
141じゃないけど。トンクス
あと、すみません。
エロ系SSじゃないと基本的には保存されないのですか?
エロじゃないとスレ違いだからなぁ。
エロパロスレに投下された以上は臨機応変に保存してるみたいだけど、
エロ以外が確実に保存されるという保証はないんじゃない?
146 :
141:2005/07/02(土) 20:58:04 ID:???
>>142 あり
頑張ってこちらスネークの1は読み終わった
けど>>44みたいなのが読みたい・・・
猟奇(?)ネタが流行らないと自分で保存するしかないかも。
148 :
141:2005/07/02(土) 23:33:14 ID:???
猟奇ネタって言うかエロじゃないネタが読みたい・・・
こちらスネーク2読破 目が痛い
>>148 座薬長編はボリュームも多いしおすすめ。
エロもほとんど無い代わりにグロ多め。
>>149 激しくつまんねーよ。ネギまのパロじゃねぇし。なんであんなのに寄生されてんの?
座薬って・・・スカトロは要らないです
ってかここはこういう会話OK?
何でもありだからだいじょぶ
荒れそうな話題だけは控えてくれ
>>151 何か勘違いしてね?
「座薬」はコテハン名で小説の内容じゃない。
155 :
こぴぺ1:2005/07/04(月) 15:22:13 ID:???
あらすじコピペ。
*― ―)亜子長編PART4「京都事変」これまでのあらすじ。
亜子たんがネギ=スプリングフィールドに告白した夜に事件は始まった。
吸血鬼の真祖、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル一派が起こしたサイバーテロにより麻帆良学園都市の結界システムは停止。
吸血鬼たちの叛乱により、極東アジア最強の魔法使い近衛木乃香の魔力が目覚め、ダーク化し失踪。
エヴァに誘拐された亜子は吸血鬼にされてしまうが隙をついて反撃し、エヴァの真祖の魔力を奪い人間ではなくなり、名もエヴァに変える。
一方、木乃香はカモを使ってクラスメイトたちを従者にし、せっちゃんラブの世界構築と邪魔な関東魔法協会への攻撃準備を進めていた。
亜子たんはエヴァや茶々丸、明日菜やネギ、楓や千雨と謀らずも共闘しながら、木乃香の従者、のどか、ハルナ、美砂、円、桜子を倒す。
そしてネギとの仮契約でエヴァの魔力を覚醒させ、麻帆良学園都市をメテオで爆撃する木乃香の化身を辛くも撃破した。
危機は去ったかに見えたが、新たな危機はすぐそこまで迫っていた。
日本魔法使いの最高権威、近衛家は木乃香の罪を亜子たんになすりつけ若狭湾の孤島に投獄。
巨大財閥にして関西呪術協会理事、近衛家分家の三条家は、近衛家を倒してその座につく野望に燃えていた。
三条家は天才コンビのチャオと聡美を関西に拉致し、殲滅魔法で九州、四国、中国地方の協会の支部を爆破し、京都に戒厳令を発令。
さらに、式神を寄生させた<苗床>120万人を極秘裏に関西から関東に送り込む「東進作戦」を開始。
156 :
こぴぺ2:2005/07/04(月) 15:24:01 ID:???
関西、関東双方が混乱状態になる中、木乃香は亜子投獄を知って行動を起こし、鳴滝姉妹が三条家の術者の犠牲になる。
楓と千雨は近衛家の陰謀を暴くために関西の有志たちと合流し、ネギと明日菜は亜子を救出すべく関西の理事と接触を試みることに。
イギリス、フランスの魔法協会と同盟関係にある関東魔法協会は事態を楽観視。
一方、雪広財閥の令嬢、雪広あやかは都合により三条グループ総本山に赴くが、そこで三条家に拉致されてしまう。
あやかを攫うよう命令を下したのは、三条家のバックに付いていた魔法使い<玉創りの巫女>だった。
車持皇子を見捨てた月の眷族(かぐや姫)を恨む彼女は、千年と数百年ぶりに復活し、三条家の同盟者として力を貸していた。
またチャオと聡美は三条家の幹部たちと仲良く(?)なりパーティを催し、雪広財閥の戦闘メイド部隊240人が三条総本山を強襲。
メイド部隊VS三条家幹部の乱闘、人食いアメーバや攻撃レーザ衛星、魔法少女ビブリオンの殺人トラップに次々と倒れていくメイドたち。
静かに混乱する三条総本山、国際会館では関東強硬派による集会が行われ、関西と関東は危機的状況に。
極秘裏に「東進作戦」が進むなか、関西総本山ではせっちゃんがヒッキー化した木乃香の世話に追われていた。
*― ―) そして投獄された亜子たんの運命はいかに?
↑
ちなみにこれが座薬。
氏ね。どうでもいいんだよカスが。スレ違いだって分からないのか?
>>157 自治厨は逝ってね。言動からして荒れる原因になるから。
151 :マロン名無しさん :2005/07/04(月) 01:41:35 ID:???
座薬って・・・スカトロは要らないです
ってかここはこういう会話OK?
152 :マロン名無しさん :2005/07/04(月) 07:59:22 ID:???
何でもありだからだいじょぶ
153 :マロン名無しさん :2005/07/04(月) 08:16:08 ID:???
荒れそうな話題だけは控えてくれ
だから一々反応すんなって言ってんだよボケ。スレ違いだと理解しろ池沼。
>>158 自治厨は逝ってね。言動からして荒れる原因になるから。
座薬に過剰反応な奴がいるが、赤アンチスレにいたエロゲ屋信者か?
ホントどうでもいいな。よその板のゴタゴタを持ち込まないでくれるか?
今アニメでプレイボールやってるけど、キャプテンのリメイク?
懐かしいな。
漫画サロンだったか。誤爆スマソ。
日本のアニメ産業も壊滅だな。
刹那は無事だろうが。
ホームレス・刹那
169 :
151:2005/07/05(火) 23:58:14 ID:???
座薬読み終わった
エロはいらない気がするけどストーリは面白かった
文字量1M以上あった・・・目が痛い
結局漏れが消えるべきなのか?
因みに座薬の中の刹那は結構ウザかった
ここに書く意味が分からん。頭悪いのか?向こうに書いてやれば奴の励みにもなるし向こうに行けよ。
おしい!
お前が黙ってろ屑。スルーも出来ないのか?ッテソレハオレダーwwwwwwwwwwwwwww
>>173 なんでわざわざ自虐ツッコミ入れてるの?
171だが、言い方が悪かった。謝る。
>>151。スレ違いだし、数字コテ化は回避の方向でな。
カチャ
;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン <<自分
\/| y |)
(゚д゚ ) サァ
>>169-179 ゴト /| y |) ツギハアナタタチノ バンデスヨ
/ ̄;y=ー ̄ ̄/||
/_____/. ||
|| || ||
|| ||
>>176 179まで死ぬのかよ!!
しゃーねーな。
;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
\/| y |) ←
>>177
スレ違いだと何度言ったら分かるのかね?
;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
\/| y |) ←
>>178
;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
\/| y |) ←
>>179 晒しage
刹那はDQN
とか言うスレじゃないの?
厨房氏ね
空気よめ
保守
ぽしゅ
保守
刹那
uzeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
――御母様、何故笑ってらっしゃるのです――
――それはね、刹那。母様はとても幸せだからよ――
お嬢様は何より美しく、そしてお優しかった。
お屋敷の人達から言外に疎まれていた私に、鞠のように柔らかな笑顔で微笑みかけてくださった時の事は、
今でもハッキリと覚えている。
その時の私は言わば迷い子。
両親を亡くし、引き取り手の無かった私は、とある神鳴流剣士の元へと身を預けられ、
そのすぐ後に近衛のお屋敷へと連れてこられたのだ。
母は繭の様に優しく、父は大岩のように逞しい人だった。
父母の最後は杳として思い出せない。
私はただ、腑をまき散らし、目を焼き潰され、喉元を切り裂かれた両親の死体を前に、
血塗れの床に座して、その光景を見るともなしにぼぅっと眺めていたらしかった。
父が畑仕事に来ないのを訝しんだ或る村人がそれを見つけ、そして私に尋ねたらしい。
――一体全体、何があったのかね――
化け物が殺した。と私は答えたそうだ。
――化け物……烏族、かね――
私の母は烏族だった。
私の父を愛し、普段は人の姿を取り、そうして村の外れで二人、
私が生まれてからは家族三人、ひっそり息を潜めるように暮らしていた。
村の人達もその事を知っていたし、私達に対する態度はどこか余所余所しいものではあった。
しかしお互いに最低限の交流はあったし、村を追い出そうともしなかった所を見るに、
彼等はむしろ寛容ですらあったのだろう。
……烏族のしきたりか何かを破った末に、殺されでもしたのだろうか。
村人がまずそう考えたのも無理からぬ事だ。
しかし私は、違う。見た事もない化け物だ。と答えたらしかった。
今では全く覚えにない事だが……ともかく、こうして私は天涯孤独の身となった。
――哀れな事よなぁ。村長の家で一晩眠りこけた後には、すっかりその時の事を忘れてしまっていたらしい――
――無理もない。半妖とは言え幼子、ショックが大きすぎたのだろう――
――まさかとは思うが、よもやあの子供が両親を――
――これ、滅多な事を言うな。あの娘の普段はお主も知っておろう、そんな事のできるような子ではない――
――しかしどうする。父親は烏族と結ばれた事で、親族から縁を切られているそうだが――
――母親に至っては何処から来たのかも分からぬ。そもそも、烏族に預けるという訳にも――
――かといって此処にはあの子を引き取ろうという者もおらん。後は国に押しつける、か?――
――まぁ待て。私の知り合いに神鳴流の者がおる。妖の類においては彼等が適任、まずは話だけでもしてみようと思うが――
そうして、あれよという間に話は進み、一週間を待たずして私は近衛のお屋敷にその身を置く事となった。
右も左も分からぬばかりか、帰る家さえ無くした迷い子。
そんな私が屋敷へ来て、初めて他人から向けられた笑顔。
その真黒な瞳の中に映る私の顔は、きっと戸惑いと驚きの感情で強ばってしまっていたに違いない。
笑顔がこんなにも人の心をかき乱すものだったとは、私は全く知らなかった。
「なぁなぁ……もし良かったら、ウチとお友達になってくれへん?」
だからだろうか。
その言葉も何だか夢物語じみていて、私の思惟はいよいよ千々に乱れる。
誰にも心など許すものかと頑なになっていた私は、その内面の檻をいとも容易くこじ開けられてしまった。
その日、私とお嬢様は、お互いに生まれて初めてのお友達となった。
――正気ですか。烏族の血が入った半妖を、お嬢様のお側に置いたままにするだなどと――
――あの娘は刹那をいたく気に入っている。なにより、生まれて初めて出来た友人なのだ――
――烏族は人外の化け物。時には人を化かして此を喰らったという伝説もあります――
――伝説は所詮伝説。記録によればここ数百年、烏族が人を襲った試しは一度も無いそうではないか――
ある日の事だ。
私とお嬢様は二人、お屋敷の側の小道を当てもなく散歩していた。
桜の舞う季節だった。
芳潤な香りが満目に漂い、その中を瑞々しい花々が舞うようにして震え、ひらり落ちる。
昼下がりの小道は静粛かつ柔和な空気に満ちていて、私達は時にとりとめもない話を語らい、
時に顔を見合わせ微笑み合った。
そこへ、一匹の気性の荒い子犬が現れた。
黒い毛並みに凛々しい顔付きはいかにも野良と見え、オンオン吠えながら私達二人を威嚇してかかる。
しかし、神鳴流剣術の基礎を学んでいた私は、其れを以てして見事子犬を追い払った。
子犬の姿が消えるやいなや、お嬢様ははっしと私にしがみついた。
柔らかい温もりが背中を伝い、野良犬との対峙で緊張に強ばった私の体をほぐしていく。
「せっちゃん、ウチ、怖かったぁ……」
泣きすするお嬢様を抱き留め、私はその耳の側へ口を付けて、
「もう大丈夫や。何があろうと、このちゃんはウチが守りますえ」と、そう囁いた。
顔を上げたお嬢様の瞳には涙が湛えられていて、それがすっと一筋……頬へ流れ落ちたと思ったら、
お嬢様は濡れたそのお顔に満面の笑みを浮かべられた。
それを見て、私は再びその心を激しくかき乱された。
――幼子ながら、身を挺して野良犬からお嬢様を庇ったというではないか――
――いやいやしかし、アレは仮にも半妖。伝説によれば、烏族は人を化かすのが得意であったとか――
――やれやれ、ヤツの心配性にも困ったものだ――
――いや全く。あの子は年のわりに礼儀も正しく、剣の腕も立つ。なかなかどうして見所がある――
その一件以来、お屋敷の人達が私へ向ける目は次第に変わり始めていた。
そんな折り、私は"詠春様より重大な話がある"との言伝を受け、
それまで近づく事を禁じられていた離れの個室へ一人訪れる運びとなった。
建物に入った途端、お屋敷よりも一層強い木の香りが私を包み込んだ。
時折お香のような匂いがかすかに私の鼻をつき、厳粛な雰囲気がますますもって盛り立てられる。
正座して緊張に身を固くする私を出迎えた詠春様は、開口一番こう言った。
「もうじき、木乃香を関東魔法教会のお膝元である真帆良へと……引っ越させるつもりだ」
!!!
微動だにしない程押し固められていたはずの私の体が、ビクリと震えた。
「刹那よ、お前はあの娘に良く接してくれた。おかげであの娘は以前よりも感情豊かになった。
これならば真帆良に引っ越してからも上手くやっていけるだろう……私から礼を言う、本当に有り難う。
心から感謝している」
「……いえ、私などには勿体ないお言葉……」
言葉と裏腹に、私は心中おだやかではなかった。
お嬢様と、離ればなれになる……?
関東魔法教会の地ともなれば、そうそう会いに行く事も出来なくなるのではないか……???
ともすれば文句の一つも口を突いて出そうな私に、続く詠春様の言葉が耳の中へと無為に入り込んできた。
「刹那よ……どうだろう、一つ木乃香の護衛となってみる気はないか?」
「……え?」
あまりに無為過ぎたものだから、其れの意味する所が直ぐには理解出来ない。
「なに、難しく考える必要は無い。
要は木乃香の回りに常にその身を置き、時に曲者からあの娘を守ってくれさえすればいい。
だがそのためにはより一層の修行が必要であろうし、護衛としての心構えも要求される……
まぁ、そう固く構える事もないがね。
今から修行に打ち込めば、お前ならば中学に上がる頃にもあの娘の護衛を任せられるようになるだろう。
どうだろう。この話、引き受けては貰えないだろうかね?」
「……は、はいっ、喜んで!!!」
その日から、私は一心不乱に修行へ明け暮れる事となった。
断面に魅入られた。
固く覆われた其れを真二つに切り裂いた、その先に広がる断面の何と素晴らしい事か。
頑なに隠されていた内面よりこぼれ出す、儚くも美しい腑の何と眩い事か。
修行は剣術に始まり、柔術、暗器術、果ては陰陽術にまで及んだ。
私はそのいずれをも、『この年の子供とはとても思えぬ早さ』とやらで身に付けていった。
中でも取り分け飲み込みが早かったのは剣術だ。
実戦に重きを置く神鳴流剣術では、獣の類を相手にした修行も多々行われた。
命の遣り取りをしうる以上、相手の命を実際奪う行為にも慣れる必要性があるのだろう。
これが意外と躓く門下生も多いそうなのだが、私の場合は何の躊躇いも無かった。
まるで息を吸うようにして、次々と狙いの獣達を切り伏せて行く。
そうして、私が修行の締めくくりとして羆の群れを斬った時の事だ。
「刹那よ。命あるものを斬る時、お前は何を考える。何を思う」
「……なにも、考えてはおりませぬ。ただただ、無心です」
羆達を切り伏せた後、剣術の師範から向けられた質問へ、私は淡々と答えた。
獣を斬るにも、人を斬るにも、一切の雑念を要としない。
ただただ神鳴流剣士としての任務さえ全うできれば良い……
一刻も早くお嬢様の護衛として認められねばと躍起になっていた私にとって、
それ意外に相手を斬る理由など有りもしなかった。
「そうか……では、刹那よ。お前は何故笑っている。
何故にその口を歪めながら相手を切り伏せる」
「私が……笑っている?何を仰って……」
そう言って左の手を顔に当てて、初めて気がついた。
私の顔は確かに歪んでいた。
口元は斜めにつり上がり、目尻はさも愉快そうに垂れ下がっている。
「……神鳴流には、一般に戦闘狂と呼ばれるような人種も多い。
なに、任務さえ確実にこなせるのであれば何の問題も無い。
その点お前は心配要らぬよ、その腕前は私が保証しよう」
師範はそう嗤って、元来た獣道を足早に引き返して行く。
試験はもう終わっていた……本来ならば数刻かかってもおかしくない試験を、私はものの数分でこなしてみせたのだ。
「私はただ、無心で……」
本当だろうか?
……例えばそれは、獣を真二つに切り裂いた時の、指先から伝染する痺れたような疼き。
あるいは、ただひたすらに斬り、そして断面をさらけ出す事のみを無意識の自我として追い求めた。
斬るのみならず、その断面をも何より執拗に求めた。
何故?
……あぁ、そうか。
私は無意識の内に見惚れていたのだ。
相手を切り捨てた末にさらけ出される、その断面の美しさに。
かつて神鳴流一の戦闘狂と呼ばれた師範が、先行く足をピタリと止め、こちらを飄然と振り返った。
「ただ斬る事にのみ喜びを見いだす……お前は逸材だよ。紛れもない、な」
違うのです、師範。
私は、わたしは……。
断面に恋い焦がれた。
薄く覆われた其れを真二つに切り裂いた、その先に広がる断面の何と愛しい事か。
薄く隠されていた内面より溢れ出す、朱く温かい蜜の何と甘い事か。
――御父様、何故笑ってらっしゃるのです――
――それはね、刹那。父様もきっと幸せだからよ――
「ん……」
窓枠にかけられたカーテンの隙間から零れる淡い光に、私はうっすら眼を覚ました。
学園の寮室に備えられたクーラーがごぅごぅいう幽かな音と、目覚まし時計のカチカチ鳴る音、
それと同室の者達の静かな寝息の他には、何も聞こえない。
手元の時計を見れば、時刻はまだ朝の4時を回ったばかり。
まるで鳥のように目覚めの早い事だと苦笑した。
それに答えるように、寮の近くで烏が一匹、カァと鳴いた。
――なにか、怖い夢を見ていた気がする――
目覚めのシャワーを浴びながら、ぼんやりと考える。
何処か懐かしいような、何故だか怖ろしいような……そんな夢の漠然とした感覚だけが手元に残って、
しかし其の中身が思い出せない。
霧がかったままの頭をぶんと振り、代わりに、そういえば今日は七夕だったという事を思い出した。
私がお嬢様の護衛に抜擢されてから早三年目、従者という立場と数年の月日が生んだお嬢様との距離も、
ここ最近は急速に近づきつつある。
勿論これはネギ先生や明日菜さん達のおかげでもあるだろう。
目前をちらつく二人の顔に感謝の念を抱くと共に、胸の中が暖かくなった。
そうしてお嬢様の笑顔を思い浮かべる。
京都のお屋敷にいた頃と同じ、鞠のように柔らかな笑顔……二人うち解けてからは自然、
そんなお顔を再びお見せくださるようになっていた。
もぞり。
足の付け根をやや斜交いに、何かが這い上がる錯覚に襲われた。
それはさながら喜楽の熱源、どこか闇然とした粘り気を感じる。
……何だ、これは。
情欲の念にも似ながらどうにも異質だ。
相反する感情を綯い交ぜにしたような不気味な衝動に、私はおそれ、戸惑った。
と思うとたちまちの内に霧散し、後にはゆらり立ち尽くす、いつもの私だけが残る。
「……妙な夢を見たせいだろうか」
そうぼやいて、未だ鮮明さを取り戻せない鈍間な頭を振り振り、浴室を出た。
時刻は5時前、シャワーに思ったより長く時間を取られていたようだ。
「なぁなぁ知っとる?まほら学園寮に纏わる七夕の伝説やって」
「なに亜子、ま〜た麻帆スポ?」
「何々、面白そうじゃん!どういうお話?」
「あんな、七夕の夜に寮の部屋で想い人と二人きりで交わると、お互い一生のパートナーになれるんやって」
「うひぃ〜、交わるって……随分過激な伝説だよね」
「ゆーながまたむっつりスケベしてるよー。
交わるって言っても別にキスだけとか、ただ抱きしめ合うだけとかでも良いじゃんねー」
「このっ、むっつり言うなぁっ!!!」
「あははは……」
何でもお祭り毎に仕立て上げるまほら学園生達にとって、七夕もやはり例外ではないようだ。
各教室前の廊下にはご丁寧に簡易な七夕の木が立てかけられ、生徒達それぞれの想いを託した短冊が吊されている。
七夕にちなんだ夜通しのイベント等も開催され、外泊も申請さえすれば容易に認められた。
ここまで融通のきく学園は、日本全国探しても此処くらいのものでは無いだろうか。
「なぁせっちゃん、ちょっとの間でええから……ウチと一緒に歩かれへん?」
帰宅前のHRが終わると同時、お嬢様が足早に私の席へと歩み寄り、不安げな口調でそう言った。
ふっと花のような香りがした。
「何処であろうとお供いたしますよ……このちゃん」
私に断られはしまいか心配なのだろう、だから私は殊更に優しい口調で、懐かしい呼び方でそう答えた。
ふっくらと笑みに綻びるお嬢様のお顔は、百合のつぼみの咲き開く様を思わせた。
いかにも儚げでどうにも目を離す事ができない。
美しき花が萎まぬ様に守りきるは、護衛の使命だ。
私とお嬢様は共に連れ立って、学園を遠く離れた小川のほとりを当て処もなく歩いていた。
時折思い出したように鳴くセミの声が、どこかうら寂しさを思わせた。
「せっちゃん……学園寮に纏わる七夕の伝説って、知っとる?」
とりとめもない話に織り交ぜ、さりげない風を装って、お嬢様がそう切り出した。
「えぇ、今日の昼に亜子さん達が話しているのを拾い聞きしましたから、大体どのようなものであるかは理解しています」
「そか……」
ちょろちょろと流れる小川の音が、まるで私達の会話を盗み聞きしているかのように思えた。
気にもならなかったはずのセミの声がいやに喧しい。
悪意無きいたずら心が、物珍しげにこちらを窺っている。
お嬢様の言わんとしている事が、その想いが分かるからこそ、他の誰にも聞かせたくはなかった。
そう、今は世界にお嬢様と私……その二人きりでいい。
「せっちゃん……もし嫌やなかったら、やけど……」
のそり西へと沈む朱塗りの太陽を遮り、黒い烏が一匹、カァと鳴いた。
「今夜、ウチの部屋に一緒に……居てくれへん?
ネギ君と明日菜は外泊で、夜の内はおらんから……」
そう言い切って、私の目をじっと見据える。
「お嬢様、先刻も言いましたでしょう……いつ何処であろうと、お供致します」
そうだ、木乃香お嬢様は……この人は私だけのものだ。
何処へでもついて行くし、何処までも離しはしない。
お嬢様と常に共に在るは、私だけだ。
私は寮の自室で一人、制服のままベッドに仰向けになって寝転んでいた。
ルームメイトは七夕絡みのイベントへ出かけており、夜遅くになるまでは戻って来ない予定らしい。
体中が、風邪でも引いたかと思うくらい熱かった。
クーラーは存分に効かせてあるはずだが一向に火照りが収まらない。
喉が渇く。
視界がぼぅっとする。
よもや本当に何かの病ではないかとすら思う。
頭の中にはお嬢様の顔、顔、顔、顔、顔ばかりが浮かんで、私の思考は無限の循環に囚われる。
お嬢様――お嬢様を、手放したくはない。
お嬢様と常に共に在りたい、一つになりたい。
他の誰にも触れさせはしない、誰の目にも届かぬ所へ囲ってしまいたい。
そうだ、そして――
お嬢様への思いに耽る時間は日々あれど、これ程までに強く想った事は今まで無かった。
恋の病か。病とはよく言ったものだ。
手先までもが震え出して、いよいよ病人の様相を呈してきた。
――七夕の夜に寮の部屋で想い人と二人きりで交わると、お互い一生のパートナーになれるんやって――
昼間の話題がふいに思い起こされた。
今夜お嬢様の部屋で、二人交わる……それは私にとって何より相応しい舞台のように思われた。
そうだ、そうしよう――
お嬢様に指定された時刻は夜中の九時、今からあと十分弱と言った所だ。
片膝を立てて部屋の壁のデジタル時計に見入り、そのまますっと立ち上がると、
私は制服から私服へと着替えをすませ、床に置いたままになっている夕凪をひょいと拾い上げた。
私の手に握られただけで、只の器物に過ぎなかった刀が途端、生きているように見えた。
付喪の精霊でも宿っただろうか……鞘に収めたまま、軽く振ってみる。
何て事はない。いつも通りの夕凪だった。
一つ隣の部屋からは賑やかな音楽が漏れ聞こえてくる。
七夕にかこつけて友人同士集まり、どんちゃん騒ぎでも繰り広げているのだろう。
『Why won't you wake me up from this? All I need is a prince to kiss...』
この声は桜子さんだろうか。
英語の授業ではいつも舌を噛んでいるというのに、歌となると妙に発音が上手かった。
……そろそろ頃合いだろう。
自室を出て、廊下づたいにお嬢様の部屋の前へ往くと、中の明かりが点いていない事に気が付いた。
コンコンと二度扉を叩いて、声をかける。
「お嬢様、刹那です。いらっしゃいますか?」
「……ええよせっちゃん、入ってきて。鍵は開いとるから……」
言葉の通り、私がノブを捻れば何の抵抗もなく扉が開いた。
中へ足を踏み入れ、後ろ手に扉とその鍵を閉め、そうっと靴を脱いで部屋へと上がる。
照明が点いてないとはいえ真っ暗闇という訳ではなく、ダイニングのテーブルの上には蝋燭が立てかけられ、
その幽かな光が部屋の中を放射状に照らし出していた。
アロマキャンドルというヤツだろうか、ほのかに百合の香りがした。
……ぱさり。
音のした方へと目を向ければ、ベッドの上でお嬢様が掛け毛布を捲って半身を起こしていた。
――お嬢様は何も身に付けてはいなかった。
蝋燭の淡い光に、その素肌をすっかりと晒しきっている。
形の良い乳房が張りよく震えるのが見えた。
「せっちゃん……こっちに来て」
私はこくりと肯き、ゆっくりベッドへと歩み寄る。
左方の壁には窓枠があり、そこから覗く風景はすっかり真っ暗になっていた。
星明かりの一つも見えない曇り空。
これでは織り姫と彦星は相見える事かなうまい。
漆黒の闇にその身を溶かし、時節外れの烏が一匹、カァと鳴いた。
「このちゃん……」
「……せっちゃん」
近づく私の声に、お嬢様は体をこちらへ向け、ゆっくりと目を閉じる。
……あと三歩、二歩、一歩……。
―――。
しゅっ、と空を切り裂く音がした。
「え……」
目を限界にまで見開いて、お嬢様が自分の腹を凝視した。
丁度ヘソの上をなぞるようにして、一本の朱い線が真一文字に引かれている。
と思うと、パカッと音でもたてそうな程に見事な大口が開き、血と腸と腑とが次々に零れだした。
「あっ!がっ……!!!」
奥歯をぎりぎり噛み締めてお嬢様が前のめりになる。
そこへ、再び夕凪を振るった。
じゅっ!
首が飛んだ。
飛んで部屋の床にぶち当たり、そのままころころ転げてテーブルの足の辺りで止まる。
こちらに向いたそのお顔には、この上ない驚愕の色が浮かんでいた。
私は鮮やかな朱の色を次々噴き出すお嬢様の体へ向き直り、三度夕凪を構え、
腹の裂け目をなぞるようにして、一閃の元に刀身を薙ぎ払った。
お嬢様の上半身と下半身が綺麗に分かたれ、そこには何よりも美しい断面が……
幽玄なその姿を包み隠さずもせずにさらけ出される。
――美しい――
がらん、と夕凪が床に落ちる音がした。
誘われるようにして伸びた両手が、その美しい切口の中へ吸い込まれていく。
――私だけのものだ――
湯気の立ちそうな程に温かな感触と共に、腑がにちゃにちゃと私の手に絡みついた。
興奮が収まらなかった。
鼻からは熱い息が漏れる。
額に汗がにじみ出す。
頭の芯が芯でなくなり、膝下がガクガクと震えた。
――今一つに――
ずるっと引き出されたのは大腸だろうか、消化物のようなものが詰まっている。
噎せ返るような血の匂いにこめかみの奥が焦げ付く思いがした。
途端、脳の奥底から引き摺り出すようにして、私の中に深く沈められていた記憶がその鎌首をもたげ始める。
あの日、私は畑仕事の手伝いの疲れから普段より早く布団に潜り、まどろむ間もなくすぅっと深い眠りの中へと落ちた。
……ふと、何か粘り気のある音を聞いたような気がして、パチリと目が覚めた。
虫の声の一つも聞こえない夜だった。
窓の外は漆黒の闇、月も星もその姿をすっかりと隠してしまっている。
音は居間の方から聞こえてくるようである。
私は母様に似て耳がいい。
父様や村の人達が聞き取れないような細かな音も、私の耳はこぼさず拾い上げた。
何だろう、その音がどうにも気になって寝付けないものだから、居間にいる誰か……父様か母様か
あるいは二人一緒か、その邪魔になってはいけないと思いつつも、其の正体を確かめずにいられなかった。
寝部屋を出て、ひたひたと廊下を歩き、居間の襖をそぅっと開けて中を覗く。
にちゃり。
粘着質な音が響いた。
父様と、いつも通り人の姿を取った母様が、二人揃って居間の囲炉裏の側に居た。
母様も私と同じく耳が良いので、居間へとやって来る私の足音に気付いていて、
襖から覗く私の顔を見るやいなや、にっこりと微笑みかけてくれた。
にちゃり。
その吊り上がった口から、ピンク色の小さな切れ端がぽとりと落ちた。
人の腑だった。
まるで行儀の悪い子供がケチャップで口の周りでも汚すかのように、赤い色の汚れで母様のお口の周りはベトベトだった。
母様の側には腹に大きな口を開けた父様が横たわっていて、時折ビクンッと大きく痙攣をする。
やや離れた床には、その刃を真っ赤に染め上げた包丁が転がっていた。
寝ぼけた頭に目の前の光景は夢の一節のようにも思え、私はぼんやりとした心持ちで母様へ問いかけた。
「御母様、何故笑ってらっしゃるのです」
すると母様はそのお綺麗な顔をくしゃっと歪ませ、こう答えた。
「それはね、刹那。母様はとても幸せだからよ」
父様の体がビクンッ!と一際大きく震えた。
そのお顔はすっかりと引きつってしまっていて、まだ意識があるのかどうかも分からなかった。
その引きつったお顔が、私にはまるで笑っているかのように見えた。
「御父様、何故笑ってらっしゃるのです」
私は父様へとそう問いかけた。
「それはね、刹那。父様もきっと幸せだからよ」
代わって、母様がくしゃり顔を歪ませ答えた。
「幸せ……?」
まだ夢でも見ているかの思いで、私はぼそりと呟く。
――夢の中だから、これで幸せなのだろうか。
腑をついばみ、滴る血のしずくを舌で舐めとって、母様が鈴を転がすような音色で仰った。
「ねぇ刹那、よくお聞きなさい。
烏族の女はね、相手を強く愛すれば愛するほど、関係で結ばれるだけでなく、
血の一滴から肉の一片に至るまで、其の全てと一つになりたいという欲求に駆られるようになるの。
あなたは烏族の血を引いているけれども、まだ若いから……此れを理解するのは難しいでしょう。
けれど、いつか其の時が来るやも知れません。
そうしたらね、刹那。決してそれを抑えようとはせずに、素直にその欲求に従いなさい。
それが烏族の女の幸せなのだから。
本来そう強い愛を抱く事のない私達種族が、それほどまでに相手を愛せたという事は……
私達一族の女にとって、何よりの誇りなのだから。
尤も、相手を愛しすぎればその欲求を抑えようという気さえ起きないでしょうけれども。
私みたいに何年も欲求を抑えて苦しみ続けるよりも、一思いにやってしまいなさい……だってね、刹那。
母様は今、とっても幸せなのよ。
里を捨ててまで添い遂げた人と、今こうして一つになろうとしている……これ以上の幸せが他にあるものですか」
にちゃり。
そう言って笑った母様の口から、再び肉片がこぼれ落ちた。
――誰だ。
これは母様じゃない。
烏族の姿を取った母様とも違う。
私はこんな化け物を知らなかった。
「それにほら、この父様のお腹の断面の、其の美しさを見てご覧なさい?
烏族とは得てして物の断面を好むもの。
あなたにもこの素晴らしさが分かる時がきっと……」
母様がこう言い終えようとしたその時、父様の体が突然に跳ねたと思ったら、
白目を剥いていた筈のその眼球が、ぐるりと回って囲炉裏の方を向いた。
そうしてその左手を何の躊躇もなく囲炉裏の中へ突っ込み、焼き切れを素手で掴み上げると、
焼けたその先を母様の右目へと一直線に押し付けた。
「いっぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
甲高い叫び声が私の耳をつんざく。
焼かれた目を押さえて転げ回る母様を脇に、父様は腹から臓物を零しながら半身を起こし、
のそりと這うようにして床をずっていった。
やがて離れの床に落ちていた血塗れの包丁を手に取ると、頭を床に擦りつけて悶える母様のそばまで這いずっていき、
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっ!!!」と絶叫を上げ、包丁の刃を母様の首へと突き刺した。
腑をぶちまけながらも、母様の首を包丁の刃でギチギチと切り開くその姿は、まるで異形の化け物を思わせた。
――誰だ。
これは父様じゃない。
私はこんな化け物を知らなかった。
二体の化け物が血と肉とをぶちまけながらに揉み合い、仕舞いに私はこの争いに巻き込まれて
命を落とすのではないかとさえ思えたが、足がどうにも竦んでしまってその場を離れる事が出来なかった。
やがて化け物は互いに動き回る事を止め、ビクンビクンとただ痙攣を繰り返すだけになり、
次第にその痙攣も小さくなっていって、いつしか居間で息をするものは私だけになっていた。
私は見知らぬ化け物の骸を前に、血ぬれの床に座して、ただぼぅっとその光景を眺め続けるばかりだった。
――けれど、いつか其の時が来るやも知れません――
かつて母様だった化け物の残したその言葉だけが、まるで不吉な予言のように私の心を雁字搦めにしていた。
そうして私はその出来事を心の奥の檻に押し込め、二度と浮かび上がってくる事のない様、
深い深い記憶の底へと埋もれさせていった。
ああ、そうだった――今ようやくにして思い出した。
お嬢様の腑をついばみ、滴る血のしずくを舌で舐めとりながら、私は想った。
かつて近衛のお屋敷で、最後まで私に警戒心をありありとぶつけてきた男の言葉が、
忌々しげにこちらを睨み付けるその顔と共に、ゆらり脳裏へ浮かび上がってくる。
――半妖め。私は騙されんぞ。伝説曰く、烏族は人を化かすのが得意であったと――
成る程、傍目にはそう見えるだろう。
ダイニングのテーブルの足の側には、その顔に驚愕の極みを張り付けたままのお嬢様の頭が、
こちらを真正面に見据えている。
――時には此を喰らいもしたそうではないか。忌々しい化け物め――
成る程、傍目にはそう見えるだろう。
くちゃくちゃとお嬢様の肉片を噛み締め、溢れ出る密の甘さに顔を綻ばせる……お嬢様の味がした。
――だが、違う。
これは偽りとも裏切りとも違う、紛れもない『愛』だ。
お嬢様の血の一滴、肉の一片が、今まさに私と……真に一つになろうとしている。
これが愛でなくてなんだと言うのか。
お嬢様の半身の断面に見とれ、その中に手を差し入れて、掻き出しては其れを啜る。
お嬢様の命と私の命が解け合うのが感じられた。
愛しいからこそ、慕うからこそ、より近づきたいと思う……身も心も一つになれればと。
そう、私はお嬢様に、お嬢様は私になるのだ……これ以上の幸福などあろうものか。
あぁ、お嬢様、御母様……私は、刹那は……幸せで御座います!!!
神キタァァァァァァァ!!!
GJ!! 烏族の宿命と哀しさがヒシヒシと伝わってきまつた。
こんなSSが読めて漏れも幸せですよ〜!
クォリティタカスwww
刹那(゚听)イラネ
l ::: | ,/ / `` 丶、 `ヽ
\ヽ l|l|l|l // l :: | /// // 、、 ヽ 、 、. ヽ
\ / l ::: | / / / ,/ / .i. 、ヽヽ, ヽ ヽ i l.l
二 い さ 桜 .二 .l | / ,イ ,l l ./ .i | ヽヽヽ i ヽ ll l l
― な え 咲 .― l | l./ | | | | ., , .|. ト ヽヽ| |、. l.| l|. | l
二 け 刹 二 .l ,、-_,ニニ| l./ | ,i| .| |. | | ,|. |ヽ. ヽ;'| ト、 l | .l|| |l.l
― れ 那 ― l´'" .:.::::::::.| l,' l l| | |. | |.i .iナ┼‐、-ヽ| |!.l i | .l|| |l l
二 ば 二 l .:.:.::::::::::.| ! l l|. l l|、l、 l l イュ,ュ、ヽ、 | |',', il l|! |l. !
― : ―: l .:.:.:.:::::::: | l| | l. l|ヽヽ|i l/|/.|‐'´:ト、'| .|'ミヽl l||l l|ト.|
二 !! 二 l .:.:.:.:::::::: | l l! .ト、! ヾヽl、 ./ / !、_:ノ ' | l ))ソl! イ|l l| ! |
// \ l_;,: -‐、‐'ト、. l! lN! ` `ヽ,/ | l彡イl'/' !l,-' `
// l|l|l|l ヽ\ i´ _,,....L:;_) l! l! 丶、 _ , | イ.|/'´
〉 ''"~´ _j,, ) l! l! r''´丶、  ̄ _,.-'"| /i'、
l 、-''"´_,,.::.〕 l l.l! ` ー‐''i"´ |// ' ン、
〕 、-''"´_,..、〉 ヽ.l` ,イ´i ,,.-|'/ / .ト、
i゙:';; ,ィ-'゙-─-、, ヾ ,,. -‐'/ / .ソ、´ l// l 丶、
l::';; /! _,.、- ゙! ,ィ''"´ヾ-'´ヽ'ri /,イ 入// l \
クオリティたけー
前に木乃香視点でもこういうのあったけど同じ人?
アンチスレはたまにこういうのが上がるから侮れない。
すっげえええええええええええええええ!!!
刹那uzeeeeeeee
刹那ヤヴァイ!
職人さん乙です!
ハイクオリティ。できることなら本でよみたかった。
こんなとこに書いてないで同人ででも売るといいよ
俺が思うにたぶん座薬。
いや、文体全然違うと思ふ・・・。
座薬じゃないだろ。
…ネ申…!!
マジで凄いな萌えスレなんかじゃこんなSS読めないからな
赤松なんて軽く超えとるよ
↑同意。原作なんか目じゃない。次回作に期待。
コテってことは文師なのか?
エロパロじゃないんだからコテハン=職人とは限らないだろう
でももしそうなら撲殺キッドのSSも読んでみたいな
非常に残念だが俺は職人じゃない。まぎらわしかったか。
記念カキコ
今度から名無しで来ればいいんジャマイカ。
保守
ほすあげ
保守
保守
229 :
マロン名無しさん:2005/09/14(水) 23:56:12 ID:/M7PfR6t
刹那が人気投票1位ってのはおかしい。恐らく刹那厨が多重投票を仕掛けたのだろう。
マイナーキャラの信者ほど過激で工作活動に熱心だからな。
もう刹那でなくていいよ
横乳(*´Д`)ハァハァ
UZEEEEEEEEEEEEEEEEEEE
保守
_
γ ´ ̄ソ.,'´ `ヽ
l ノリ√〈L(リリレll i
ヽd| ´ヮ八ヮ` l. |
.⊂)卯!ハi卯(⊃ |
.く/_l〉 〈l_ヽ> ┘
.し'ノ しヘ_)
終了でいいのか?
いいのかって何が。ストッパーさんですか
238 :
マロン名無しさん:2005/10/13(木) 22:38:50 ID:NuCBwiVT
てか、なんだこれぇーーー!!
オイこれなんだよぉ!!
どうした