ストーリーを教えてもらうスレ Part9

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467マロン名無しさん
『夕凪の街 桜の国』やります。
作者のこうの史代は広島県出身。
自身は被爆者でも被爆2世でもないけれど、
避けて通る事は出来ない問題であるとこの作品を描いた、との事。

初刷 2004年10月20日
双葉社より800円+税で発売中。
468夕凪の街 桜の国:05/01/23 04:28:41 ID:???
大まかなあらすじ

『夕凪の街』と『桜の国』の二部構成。

『夕凪の街』は、原爆投下より10年後の広島が舞台。
父を亡くし、遠く茨城に弟を養子に出し、母と二人暮らす平野皆実(みなみ)を軸に描かれる、被爆の悲しみ。

『桜の国』は現代が舞台。
皆実の弟・石川旭が広島に戻り、被爆した女性と結婚。
一男一女に恵まれるが、被爆2世という事が、彼等の恋愛に暗い陰を落とし…という話。
469夕凪の街(1):05/01/23 05:23:49 ID:???
原爆投下から10年後、昭和30年の広島。
建設会社の事務員・平野皆実は貧しいバラック小屋で母と二人暮らし。
茨城に養子に出した弟に母を会わせる為、交通費を捻出しようと
娘らしいお洒落もせず、節約生活を送っている。
同じ会社の営業・打越といい雰囲気であるが、なかなか素直になれない。
ある日の会社帰り。
女物の洋装店を覗く打越を見掛けた皆実は
「好きな人にあげるんじゃが、見立ててくれ」と言われ、
「ふられてつっ返されても、これで泣きゃええが」と、レースのハンカチを選ぶ。
店を出て、打越から「返さんでくれ」と、
そのハンカチを渡された皆実は、照れながらも受取る。
河原を歩きながら、皆実は打越に体をもたせかけ、キスを交す。
瞬間、彼女の脳裏には10年前に目の前の川が焼死体で埋まっていた光景が広がり、
「ごめんなさい」と打越を振り払って走り出す。

10年前の8月6日。
皆実は原爆で父と妹を亡くした。
救護所で丸く膨れた母を見つけ、姉の霞とも落ち合った。
あまりの惨状に感覚は麻痺し、死体を平気でまたいで歩くようになった。
腐臭に苛つき、橋の上から姉と一緒に川に溢れる死体に石を投げつけた。
やがて姉も、被爆症で紫のシミだらけになって死んでいった。
自分は、幸せになってはいけない人間なのだ…
そんな想いが、皆実を頑なにさせていた。

翌朝。
会社で打越と挨拶を交した皆実は、彼に
「うちは、この世におってもええんじゃ、と教えて下さい」と
10年前の体験を話して聞かせる。
打越は理解を見せ、「生きとってくれて、ありがとうな」と、優しく皆実の手を握る。
470夕凪の街(2):05/01/23 05:50:49 ID:???
その翌日から皆実は疲れからか、体がだるくなり、寝込んでしまう。
見舞いに来た打越は帰り際、『月がとっても青いから』と鼻唄を歌う。
それを見送りながら、皆実も続きを歌う。
♪月がとっても青いから 遠回りして帰ろう
もう今日限り逢えぬとも 想い出は捨てずに
君と誓った並木道 二人きりで さぁ帰ろう♪
夕凪の、幸せな風景。
翌朝には皆実の足腰は立たなくなり、夜遅く、真っ黒な血を吐いた。
被爆症が今になって発症したのだった。
友達や会社の同僚が見舞いに訪れるが、皆実の症状は急激に進み、目も見えなくなった。
(皆実モノローグ)
黙って手を握る人がいた。知っている手だった。

痛い。喉をまた生ぬるいかたまりが通ってくる。
もう、ただの血ではなくて、内臓の破片だと思う。
髪も抜けとるのかも知れんが、触って確かめる気力もない。
明日にしよう…明日…

嬉しい?
十年経ったけど、原爆を落とした人は、私を見て
「やった!また一人殺せた」と、ちゃんと思うてくれとる?
ひどいなぁ。
てっきり私は、死なずにすんだ人かと思ってたのに。

ああ、風…
夕凪が終わったんかねぇ…

そして、いつかの河原に座り込む打越の横を、剥がれた
『原水爆禁止世界大会』のポスターが風にあそばれてゆく。
皆実の手には、打越に貰ったハンカチが、力無く握られていた。
(終わり)
471マロン名無しさん:05/01/23 10:39:50 ID:???
お、重い
472マロン名無しさん:05/01/23 10:51:25 ID:???
やたら新聞とかでも評判になってたから気になってたけど、やっぱ原爆物だけあって重いねぇ。
473マロン名無しさん:05/01/23 18:33:19 ID:???
>471-472
漫画が柔らかい絵柄なだけに、悲壮感更に倍、みたいな…
モノローグの場面は背景無しの白いコマに延々と書かれていて、心に迫ります。
後半の『桜の国』は少し希望のある感じです。
夜に書きます。