【立てば芍薬】雪代巴が美しすぎる..【坐れば牡丹】
ちゃぷ・・・・・チュルッ・・・・・。
ピチュ・・・ぷっ・・・・。
「う・・・ぁぁ・・・・・」
「・・・ンッ・・・ふ・・・・ぁ」
室内には、篭るような湿った音だけが微かに響いていた。
わずかに湿り気を含んだ空気に、肌から滲み出す汗が溶け出す・・・。
くぐもったような女性の声に重なるように、若い男のうめきが漏れ出る。
若い男、いや、まだ少年といって良い年齢の緋村剣心は、夢現(ゆめうつつ)といった視線を中空に漂わせていた。
わずかに開かれた口元からは、時折快楽によるうめきを発している。
全身が融けて行きそうだ・・・。
身体の中心部に端を発する甘美な感触は、脊椎を駆け上り、脳髄を麻痺させる。
時に、ぴくんびくんと震えながら、剣心はかつてない愉楽に身を委ねていた。
「・・・ふ・・ぁ・・・んふ・・ン・・」
「・・ぅ・・あぁぁ・・・は・・っ!」
本来、快楽とは無縁の彼には、この刺激は恐ろしいほどに甘美である。
それでも彼が、されるが侭に身を任せているのは、その相手が妻と決めた女性であるからに他ならない。
下腹の辺りを全て包み込まれるような痺れに、剣心は導かれるように視線を下げた。
ゆらぁ・・・ゆら・・・。
立ちすくむ剣心の視線の先には、彼が全てを委ねている女性の漆黒の長い髪が、ゆらゆらと揺れている。
着物のはだけた、透けるように白い剥き出しの肩に漆黒の髪が踊る光景は、
この世のものとは思えぬほど美しく、嬌艶であった。
ジュ・・・ぷっ・・・チュ・・・。
ちゅるっ・・・ピチュ。
その黒髪を辿ると、白梅の中の紅梅のごとき艶やかさの紅い唇が濡れている。
紅も引いていないのに、仄かな赤みを持ったその唇が、夫となった男性の強張りの上を這っていた。
小さな口を健気に押し開き、男の勃起を迎え入れている。
その、艶めかしく濡れた唇の隙間から、時折淫猥な音を漏らして。
その女性、やはりまだ少女と呼んで良い年齢の緋村巴は、
ちゅぷ・・・
と、ゆっくり自らの口の中から強張りを吐き出すと、今度は小さく開いた口から、
真紅の舌を出して、夫のものに這わせ始める。
「ぅあ・・・・と・・・もえ」
「ンッ・・・ちゅる・・・ピチュ・・・はぁ・・」
楚々とした巴の口が、男の勃起を咥えているというだけで、剣心は目眩にも似た快感を覚える。
その薄い唇から覗く、紅色の愛らしい舌が自らの勃起を弄っている様は、なんとも非現実的だった。
しかし、彼女からもたらされる刺激は、確実に彼を一つの高みへと導いて行く。
滴る唾液をたっぷりと塗した巴の舌が、強張りの形をなぞるように下から上へと絡み付く。
同時に、なまめかしいほどに白い指が、その下にある陰嚢をやわやわと撫でさする。
たまらず、剣心は喉を仰け反らせ、巴の黒髪に手を置いた。
「うあぁ・・・っっ!」
「・・・っはぁ・・・」
頂までなぞり上げた舌を離して、巴は余った手で強張りを扱き出す。
「・・・愛しい・・・」
「・・・・・・巴」
剣心の、からからの喉から出ずる声が震えている。
巴はうっとりとした表情を見せると、陰嚢の中にある二つの塊をこりこりとこすり合わせていた。
自らの唾液で濡れ光る陰茎に指をかけ、撫でるように、締め付けるように扱き上げる。
潤んだ紅い色の瞳が自分を見上げるのを、剣心は呆然と見下ろしていた。
視線が絡み合う。
剣心の藍色の瞳。巴の紅色の瞳。
それはどちらも情欲に溺れた色ではなく、互いを愛おしむ光だけが宿っている。
強張りに手をかけたままの妻に、剣心は身をかがめてその愛らしい唇に口付けた。
身じろぎもせず、その接吻を受け止める巴。
感極まった表情。
触れるだけの口付けが、なぜこれ程愛しい。
唇と共に互いの顔が離れて行くまで、その視線は愛する者の瞳に釘付けだった。
「・・・感じて・・・くださいませ」
巴は吐息と共にそう言うと、わずかに微笑み、そして両掌を陰茎と陰嚢に絡めたまま、
その先端をゆっくりと貪った。
優美な唇に吸い込まれた強張りは、その口内で清浄な唾液に洗われる。
そして、柔らかくしっとりとした舌が、意志を持っているかのように絡み付いてきた。
「・・っふ・・・・う・・・」
「はっ・・はっ・・・ぅ・・・ぅぁ」
二人の呼吸が同時に荒くなる。
剣心は無論、巴もはだけた肩から覗く肌は桜色に上気していた。
愛している。
愛されている。
そのことを思うだけで、二人の身体は火照る。
愛したい。
愛されたい。
そう望むだけで、二人の中心部は熱く潤むのだった。
剣心の呼吸が早くなるに合わせて、巴は咥えた口を上下させ始める。
ぬかるんだ舌が張り詰めた強張りを締め付け、なぞり、しゃぶり、剣心の身体と心を高みへと導いて行く。
柔らかい感触の陰嚢をくすぐるように弄ぶと、剣心の吐息はさらに早くなった。
「はぁっ・・・はぁっ、はぁっ・・・巴・・・巴・・・」
「ん・・・んぶっ・・・んむ・・・もっ・・・」
情感が高まるにつれて、剣心のしなやかな指が、巴の頭を愛撫する。
髪を梳き、頬を撫で、耳朶をくすぐる。
そのあまりにも優しい愛撫に、巴は強張りを咥えたまま、くすぐったそうに首をすくめた。
「巴・・・巴・・・。愛している・・・」
剣心の熱の篭った呼びかけに、巴は勃起を含んだまま、幾度も頷く。
そして、いよいよ剣心が限界の様子を見せはじめると、ゆっくりと唇から陰茎を抜き去った。
「・・・あぁ。・・・はい、愛しております・・・あなた」
潤んだ瞳が剣心を見上げる。
剣心は、きつく抱き締めてしまいそうになる衝動を必死に堪えた。
再びついばむような接吻。
先端からとめどもなくあふれ出る粘液を全体に塗り込めながら、巴は誘(いざな)う。
「出してくださいな。・・・口に、くださいませ・・・あなたの精を」
「・・・・巴・・・・」
剣心の返事が終わる前に、巴は強張りを咥え込んだ。
強烈な快楽が、剣心の脳髄を麻痺させた。
愛しい者の清らかな口内に注ぎ込む。
その背徳感を想像しただけで達しそうになる。
しかし、巴が望むなら・・・。
無論剣心に否とする必要はなかった。
先ほどまでより、更にゆっくりと丹念になる巴の口愛。
揺れる漆黒の髪を見下ろしながら、剣心はただ呼びかけ続けた。
その名を呼ぶことで、愛する妻を愛撫するかのように。
・・・・巴!
「・・・・はっ・・・!!!」
「ん!・・・む・・・んん・・・んんん・・・んも・・・ぅ」
ドクドクと、自分の分身が脈打っている。
まるで身体から切り離されたように痺れている。
自分の意志とは無関係に、巴の口内に熱い精を注ぎ込んでいる。
後から後から・・・とめどなく。
巴は眉一つ顰めず、送り込まれた精をその舌と口内で受け止める。
とろとろと・・・
とろとろと・・・
注ぎ込まれるものを、確かめるように受け止めてゆく。
やがて、その雪のように白く細い喉が、こくりと動いた。
にちゅ・・・・
「!ん・・・ん・・・ふぁ・・・」
「・・・・ん・・・む・・・・」
こくり、と巴が喉を鳴らした直後、剣心はその濡れ光る唇に口付けた。
口内には、未だ彼の放った精が残っており、それが為、巴は驚いた。
愛しい・・・。
自分の放った精を、ためらいもなく、幸せそうな顔で飲み下す巴を見て、剣心は堪らず接吻していた。
自分の精など構わない。
それどころか、自分の舌で巴の口内を清めるかのように、その柔らかい舌と絡め、吸い、口腔を掃き清めた。
その夫の想いを感じ取った巴は為されるが侭に任せ、舌を吸われては恍惚の表情を浮かべている。
ぽぉ、っと朱の差した頬が何とも愛くるしい。
この男性(ひと)しかいない。
巴の瞳はそう語っていた。
互いの睫毛が触れ合うくらいの距離で見詰め合いながら、ふたりの心は融け合って行った。