【奈良麻生】スクールランブルで801しちゃおうスレ【梅津菅】
人が出てきた。
俺は敵に後ろを見せ、一目散に駆け出した。
「お兄さん!」
聞き覚えのある声に俺は立ち止まり、踵を返した。
そこには見覚えのある彼の姿があった。
「奈良きゅん。」
「もう、お兄さん、奈良きゅんって言うのはやめてください、、、恥ずかしいですから。」
「ごめんよ、奈良きゅん。」
どんな時でも彼はいつもの笑顔で、いつものように迎えてくれる。
先ほどまでの事が嘘だったかのように、一気に緊張感が解れた。
「今晩は、お兄さん」
「ああ、、、いやすまない、夜分遅くに。」
「どうしたんですか、お兄さん、こんな時間に。」
「ずっとご無沙汰だったんで、ちょっと顔を見に。」
「そうですか、、、どうぞ、入って下さい。」
「人がいるんじゃないの? 俺が入ったらマズイだろうし。」
「大丈夫ですよ、今日はみんな出かけてますから。」
「そうか、それじゃちょっとだけ。」
奈良は玄関の横にゴミ袋を置くと、中へ入って行った。
ちょっとだけと言いつつ、少しでも長く奈良と一緒にいたい。
ずっと会えなかった分、余計に。
イスに腰を下ろし、コップに注がれたお茶を頂く。
「本当に久しぶりですね、お兄さん。今までどうしてたんですか。」
「あはは、色々と大変でね。」
「だいぶんお疲れのようですけど。」
「いやいや、奈良きゅんの顔を見た途端、疲れも吹き飛んだよ。」
「僕の顔で元気になれるんだったら、いつでも見に来てください。」
「・・・奈良きゅん。」
俺みたいな人間にでも、そんな言葉を投げかけてくれる。
嘘でもその言葉が俺にとっては嬉しいものだった。
「あっ、気が利かなくてすいません。お兄さん、ビールの方がよかったですか。」
「ううん、いいよ、俺、お茶好きだから。」
「遠慮せずに飲んでください、持ってきますから。」
「申し訳ない、気を使わせてしまって。」
奈良は台所の方へ向かった。
「すいません、缶ビールしか置いてなくて。」
「いいよ、そのまま飲むからさ。」
「僕がお注ぎします、、、、」
「あぁ、駄目駄目!! プルタブの指切ったら危ないから俺がやるよ!!」
「えっ、大丈夫ですよ、、、、そんなに心配してくれなくても、お兄さん。」
トクトクトクトク
「ありがと、、、ホント、急に会いに来てビールまでご馳走になって、お酌までして貰って
、、、」
「僕はお兄さんだからですよ、お兄さん以外の人だったらこんな事しません。」
「いやー、そこまで言って貰えると感激だよ。」
注がれたビール思わず一気飲みをしてしまった。
「、、、酔った。」
「・・・」
久し振りのアルコールは気分の良さと相俟ってすぐに回った。
テレビをつけて見ると、スポーツニュースが流れている。
「奈良きゅん、スポーツはするのかい?」
「え、僕ですか。」
「うん、野球とかサッカーとか。」
「僕、水泳を除いて、スポーツとかは苦手なんで、、、」
「いかんなー、ボール二つとバット一本持ってるんだから、野球くらいは・・・」
「今度、お兄さんが来るまでに用意しておきます。」
「・・・・・」
「・・・・・」
一瞬、変な間が生まれたのは気のせいだろう。
「・・・すまない」(何を言ってるんだ、俺は。)
「えっ、どうかしたんですか、お兄さん」(お兄さん、何で謝るんだろう。)
噛み合わない会話、この感覚も久し振りだ。
奈良をまじまじと見つめる。
「、、、どうしたんですか、お兄さん。」
「黒い髪」
「輝いた目」
「透き通るような白い肌」
「いやはや、たまらんね。」
「お兄さん、何だか変ですよ。」
「酔ってるからかな、、、」
「奈良きゅんは色が白いから、、、スポーツはしなくてもいい、うん。」
「紫外線は肌の大敵だからな、、、」
「プールなんて以ての外だ、塩素で髪が痛んだら、大変だ、、、」
ブツブツと呟く俺を見つめる奈良は半分呆れているようで、それでいて優しい顔で、、、
「ごめん、奈良きゅん。」
「どうして謝るんですか、お兄さん。」
頭をテーブルに擦り付けて謝る俺に困惑の表情を浮かべる奈良。
この困った顔も好きだ。
「ずっとさ、、、逢いに来れなかったのに、、、一方的にさ、、、」
「そんな、お兄さん、今日、僕に会いに来てくれたじゃないですか!」
「・・・・・・」
「僕はお兄さんにもう会えないかと思っていたくらいなんです。」
「・・・・・ん。」
「会えただけで嬉しいんですよ。」
「・・・・・ごめん。」
「また謝ってる。。。」
「・・・・・・・・」
「寝ちゃった。。。」
俺はまどろみの中に飲み込まれていった。
パッと目を開けると、目の前がぼやけている。
時計の方向へ目を向けると、三時。
午前と午後の区別は窓の外を見れば分かる。
まだ真っ暗だ。
顔を天井の方へ向けると、奈良の顔が目の前にある。
どうやらソファまで運んでくれて、膝枕をしてくれたようだ。
「重かっただろうに、、、」
俺は頭を起こすと、ソファへ座り、奈良の頭を自分の膝へ乗っける。
静かな寝息を立てて寝ている奈良。
「なかなか会えないのに、寝ちまうとは駄目だな、俺。」
暦の上では秋なのに、熱帯夜は続いている。
奈良の肌には少し汗が滲んでいる。
「・・・ちょっとだけなら。」
俺は口を首に近づけ、首筋に齧り付く。
「んっ、、、、」
ピクリと反応する奈良。
パッと目を見開き、俺と視線が合った。
「ごめん、起こしちゃったか。」
「おにいさん、、、?」
半分寝惚けている様で、反応が鈍い。
「ああ、、、奈良きゅん、在宅中でも塩分を摂取しておかないと熱中症に、、、」
こんな状況で熱中症対策を言っている自分はいかがなものか。
「、、、よかった。」
ポツリと呟く奈良。
「ん?」
「僕が起きたら、お兄さん、もう居なくなっちゃってるんじゃないかって、、、少し心配だったんです。」
「・・・・・・」
「また、ずっと逢えなくなるのかと思ったら、、、僕、、、」
目尻にうっすらと涙が見えた。
その表情を見た時、俺は自分がどれだけ奈良に寂しい思いをさせて来たのかを痛切に感じた。
ギュッと上半身を抱きしめる。
「ごめん、本当にごめん。俺、迷惑ばかりかけてる。」
「一年以上も放っておいて、こんな事言うのは男として最低かも知れないが、、、」
奈良の瞳を見つめる。
「俺、奈良きゅんが好きだからさ。。。」
「お兄さん。」
ソファの上でずっと奈良を抱きしめていた。
そして、夜が明けるまで語り明かした。