【また非の】ネギま!キャラ萌え統一スレ37敗目【完敗か】

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358帽子屋 ◆bbCKdAATow
その朝、不安な眠りから覚めた綾瀬夕映は、自分がベッドの上で布団をはだけ、寝汗に塗れているのを発見した。
不安な眠りには不穏な目覚めしか続かない。
新たな一日の始まりには全く相応しくないそれに、彼女は無言の抗議をする。
寝なおしてしまえればいいのだが、不愉快な覚醒の症状は後戻り出来ないところまで進行してしまったようである。
やむなく夕映は時計を見やった。

 05:46.23、24、25…

秒刻みのデジタル表示が気に障るが、無論時計に害意はない。
そいつが告げているのは、起き出すにはちょっとばかり早いというシンプルな事実。
布団の中でじっとしていると、いつの間にか考え事をしてしまうのが彼女の常だった。
テーマは何でもいい。
哲学、宗教、神学、歴史、政治、経済、社会、友人関係、昨日読んだ本、電車のダイヤ、パックジュースの短すぎるストロー…
それが、今は怖い。
出来ることなら何も考えたくはない、そう思った夕映は枕元にある、昨晩眠る前に読んでいた一冊の文庫を手に取った。
栞を抜き取り読み始めるが、内容が全く頭に入って来ない。
それに気づいて再び、すでに読んだはずの所を、今度はしっかりと意味を追って読もうとする。
するのだが、いつの間にか、再び、やはり字面を追っているだけの自分に気付き…それを何度か繰り返し、とうとう彼女は読むのを諦めた。
結局のところ、このかわいそうな小説は昨晩から全く読み進められていないのだった。
夕映にとって、こんなことは初めてだった。
それは確かに、これまでだって悩んだり迷ったりしたことはあったが、本に没入できないほど…彼女の基準からすれば、それは信じ難い事だった…では、決

してなかった。
再度、時計に目をやる。
6時37分。
少し早いが、彼女は起き出すことに決めた。
359帽子屋 ◆bbCKdAATow :04/04/10 15:31 ID:???
時間潰しになってくれた本に心からの感謝を捧げつつ、出来るだけ静かにベッドから抜け出し、カーテンと窓を開ける。
青い空に千切れ千切れの雲が漂い、斜め下から陽光を受けて金色に輝いている。
いい季節だ。流れ込む外気には肌を刺す冷たさも、眩暈のする熱さも、まとわりつく湿気も無い。
「清冽」という、美しくも曖昧な言葉の用例として辞書に載せておけないのが悔やまれるような空気。
胸を締め付けるのでも引き裂くのでもなく、ただそこに蟠っている形の定まらない不安。
不安の形が定まらないことへの苛立ち、そしてやはり、不安。
胸にわだかまるその不安を浄化しようとでもいう様に、素晴らしい朝の空気を一杯に吸い込む。
時は、4月27日。
彼女たちは昨夜、修学旅行から帰ったばかりだった。
疲労を溜め込んだ生徒達にとって、今日が日曜日であるのは何よりの救いである。
二人のルームメイト、宮崎のどかと早乙女ハルナ(順不同)は今も深い眠りの中にあり、起き出す気配もない。
夕映だって、やはり同じように疲れていたし、同じように眠りたかった。
にもかかわらず、彼女が目覚めたのは、ひとえにあの夢の所為に他ならない。
少女の平穏な眠りをかき乱し、その…平穏に帰すべき…現実に翳を落とす夢。
昨晩と同じ夢。そしてその続きの夢。
「あの続き」の夢。
360帽子屋 ◆bbCKdAATow :04/04/10 15:32 ID:???
(私は…ネギ先生を…愛、しているのでしょうか…)
それは別に構わない。
自分よりものどかの方がずっと強くネギを思っていることも、
自分がネギに寄せる想いよりも、のどかへの友情の方がずっと強いこともどちらも疑う余地は無いように思えた。
だから、自分がたとえ先生に淡い恋心を抱いているにしても、とるべき行動は明白で、それを選ぶのに迷いはしなかった。
(それなのに、なんで)
夜毎、あんな夢を見るのだろう。
夜毎どころか、一晩に何度も同じシーンのリプレイを見ているのだろう。
リプレイに留まらず、演じられなかったクライマックスに近づいているのは何故なのだろう。
したことも無い、口づけの感触を。
肌をつたう、他の誰かの指先を。
考えたことも無い、肌が触れ合う喜びを。
そして、見たことも無い…
(…って!私は何を思い出しているのですか!)
ふうと小さくため息をつく。
その頬が赤く染まっている。
361帽子屋 ◆bbCKdAATow :04/04/10 15:32 ID:???
(それにしたって、あまりに真剣味に欠けるのではないでしょうか…)
自分は内心ではのどかを、今も無防備な寝顔を見せているこの親友を、裏切っている。
それだけでも心苦しいのに、このままでは内心で済まなくなってしまいそうだ。
そして、もうひとつ。
本来、自分が夜な夜な夢にまで引きずるべき懸案事項があるとすれば、それはこの一連の夢のもとになっている出来事ではなく、
その次の夜に起こった、自分の常識による理解を超えた諸現象の方ではないのだろうか、とも夕映は思う。
あの修学旅行3日目の夜、これまで彼女が立脚してきた世界のルールは音を立てて崩れ去った。
そこには彼女の知る世界の法則を完全に無視した世界があり、そちら側の住人がクラスメイトに何人もいて、
そして今や自分ものどかも、その…魔法的世界とでも言いますか、それに無自覚ではいられないのである。
それは色恋の一時の気の迷いなどとは違い、この先自分が生きていく限り、そして自分が真理という物に…あ。
(パンツ、濡れてる…?)
はあーっ、とわざとらしくもある大きな溜息。
真っ赤になっているのが鏡を見なくても分かる。
おねしょでは無い。小学5年までおねしょをしていた夕映には分かる。
そして、おねしょでは無いという事は…?
(どうしてこうも真剣味に欠ける展開に…)
考えてもしょうがない。
考えることはいつでも出来るが、今はまずパンツを履き替えるべきである。
替えのパンツを持って、シャワー室に消える夕映だった。