【本スレの】ネギま! キャラ萌え統一スレ36勝目【50%超】

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957ムスタファ ◆r1rop.2W76
日が傾き、体育館の床に黒い線が走る。
空気を入れ替える為に取り付けられた窓は、この時間帯になるとその存在を主張し出す。
丁度“田”の字のような直線で構成された陰。
それぞれ黒で囲まれた桝目から伸びる光の筋は舞台となり、その上で塵が舞う。
その“田”の字の中心に少女が立った。
少女の足元から伸びる漆黒の分身は、まるで裸体を映し出しているかのようにまとまった線で構成されている。
レオタードを纏った少女、佐々木まき絵はただ呆然と立ち尽くしていた。
何か思い悩むような表情を顔に浮かべ、時折何かを振り払うかのように頭をふるふると振るわせる。
他に誰もいない体育館。
一人では広すぎる空間の中に、少女は立ち尽くしていた。
958ムスタファ ◆r1rop.2W76 :04/04/08 14:31 ID:???
目の前が真っ暗になる。
よくこんな言葉を聴くけど、実際にそんな状態になることはないと思ってた。
だからいつも楽しくその場をやりすごしてた。
特に何も考えず、へらへらにこにこ笑ってれば悩むこともないし、毎日が楽しい。
それが本当の楽しさなのか、そんなことは関係ない。
自分が楽しいと思い込めば、それが事実になるのだ。
周りから軽い奴と思われても別に構わない。それが私なんだから。
しかし、今、たしかに目の前は真っ暗になった。

もちろんこれは比喩だ。しかし比喩だからこそ、心の問題だからこそ現実の真っ暗よりも重くのしかかる。
まず第一にテストの成績。
これは頑張ればなんとかなるのだろうけど、とにかく勉強が嫌いだ。
勉強を続けることは苦痛にほかならず、しかしそれを続けなければならない現実はひどく精神に負担を強いる。
一時期ネギ君と勉強した。必死に勉強した。 その結果成績は格段に良くなり、過程もネギ君と一緒だったから楽しかった。
しかし、いつまでもネギ君ばっかりを頼りにしいていてはいけない。
そう遠くない未来、具体的には10数ヶ月後には私も高校生だ。
多分そのときにネギ君はいなくなっているだろう。
ではその時どうするか。 そのビジョンが浮かんでこない自分に失望していた。
959ムスタファ ◆r1rop.2W76 :04/04/08 14:31 ID:???
そして第二に新体操のこと。 
これは弟の為にはじめた。
小さいころ、リボンをくるくる回して遊んでいる私をみた弟がとても喜んだ。そのことに気をよくした私は、なんとも安易に新体操をはじめた。
励みがあるとはいいことだ。私はみるみる上達した。発表会や記録会のたびに弟はやってきて、私の上達を心から喜んでくれた。
半分、いや、10分の9は喜ぶ弟の顔を見たいがためにやっていた。 
だが、ここに弟の姿はない。
親のすすめで女子校に入学し、女子寮に入り、私の生活から弟が消えた。
励みの存在の消失。 私が新体操をやり続ける理由がなくなった。
顧問の先生が引き止めるので続けているが、やる気が起きない、むしろやめたい。
しかしやめようと思うと、思考は決まっていつも同じところにやってくる。
真っ暗闇。  私から新体操を取ったら何が残るんだろうか。
勉強ができるわけでも、特別信望が厚いわけでもない。ただの役立たず。無性に悲しくなる。
そういうときは決まって四角い影の真中に立ってみる。
その時だけは自分が輝いているような気がして、
その時だけは自分が世界の中心にいるような気がして、少し気が晴れる。
960ムスタファ ◆r1rop.2W76 :04/04/08 14:32 ID:???
今日は気まぐれで窓の外を見上げてみた。
空でも見てやるか、ちっぽけな私を笑ってくれ、そうふて腐れながら眺めてみた。
もう夕刻に近い。キャロットジュースをぶちまけたような空合いに思わず息をついた。
カラスが何か叫びながら流れていく。 けたたましい鳴き声に混じって焼き芋の宣伝も聞こえてくる。
――そういえばおなかへったな…
今日は帰ることにしよう。 そう思い目をそらそうとしたとき、視界の隅に、空の中に、黒い粒を発見した。
それはとても高い所を飛んでいるようで何物か識別できない。しかも相変わらず広広とした中空をするすると横移動しているように見える。
――あの高さでちゃんと移動してるようにみえるってことは、すっごくはやいスピードってことだよね… 
いや、そんなことはどうでもいい、頭をふるふるさせ、まずは何か食べ物を得ようと考える・・・・ が、気になる。
あの粒はどんどん大きくなってる気がする。 そして進行スピードも。
少しして、だいぶみえるようになってきた。目をこらしてみた。見えた。 ネギ君だ。
ネギ君が何か細い棒のようなものにまたがって飛行している。
まず自分の目を疑った。自分を疑うことに慣れているのでごく自然とその思考が生まれた。
体育館内を睥睨する。特に以上はない。もういちど空を見上げた。今度はより鮮明にその姿をとらえられた。
――間違いない。ネギ君だ。
彼を捕らえた眼球はその動きに合わせて上へ下へ、左へ右へとせわしなく動く。
そして彼の影が世界樹と呼ばれる木の元へと消えるのを見届けた。
――最近私の心は、弟を失ったことによってポッカリと開いた穴に、ネギ君を求めている。
そう自覚していたので、私はネギ君の消えたもとへとむかうことにした。 弟の穴埋めのために。