「せっちゃん!」
「お嬢様・・・ご無事で」
刹那の胸には深々と刀が突き刺さり、抱き起こす木乃香の袖は見る見るうちに赤く染まっていった。
「もう私はお嬢様をお護りすることができません・・・お許しください」
「何言うてるの!こんな傷、大したことないて!」
木乃香の手が光り、刹那の傷を包み込む。
しかし、あふれ出す血が止まることはなかった。
「お嬢様・・・」
「お嬢様なんて言わんといて!」
刹那はすこし恥ずかしそうに微笑んだ。
「このちゃん・・・刹那は昔の誓いを守りました」
「・・・うん」
「これからは、自分で自分の身をお護りください」
「いやや」
木乃香は色を失った唇をふるわせた。
「うち一人じゃいやや。せっちゃんと一緒じゃないといやや。うちを一人にせんといて」
刹那はもう一度、かすかに微笑んだようだった。
その微笑が消えると、刹那はもう表情を取り戻すことはなかった。
「せっちゃん・・・返事してや、せっちゃん、どうして黙っとるん!?」
見かねた明日菜が、木乃香の肩に手を置いてなだめた。
「このか、刹那はもう・・・」
明日菜は言葉を飲み込んだ。
いつも闊達な木乃香の瞳に、見慣れない光が浮かんでいた。
「嘘や、アスナ。嘘つかんといて。せっちゃんが、うちを置いて先に死ぬわけないんや」