たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart13

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308ドッポリア繁盛記(2)
上海空港にヘリが墜落した!
滑走路に叩きつけられ炎上する機体。救護班が駆けつける中、火だるまの
パイロットが残骸から這いだしてきた。ハゲの日本人である。内ポケットから
巻紙を取り出すと、群がる野次馬に広げて見せた。こう書いてあった。
「SAYAKAよ、伊良部になれ」
群衆からどよめきが上がる。満足げに笑ったパイロットの巨体が崩れ落ち、息絶えた。
ターミナルのトイレから一部始終を見ていた愚地独歩が、排尿を終えてタクシーに
乗り込む。運転手にヤムチャ邸の住所を告げた。
パイロットの身元は未だに不明。SAYAKAにメッセージは届かなかった。

ヤムチャは不在だった。下男のプーアルに言付けを頼み、その場を後にした。
猫が人語を解するというふざけた展開に、やる気ゲージが限りなく0に近づいた
独歩であったが、そうも言っていられない。ヤムチャ招聘の策を練るべく
商店街の茶房のドアをくぐった。
フロアの中央で鹿が踊っていた。鹿の着ぐるみ姿の男である。客席から投げられる
鹿せんべいに飛びついて、たまに混ざっている気円斬で口をザックリ切っては
哄笑を浴びている。屈辱に泣きはらしたその顔に、独歩は見覚えがある。
バッグからノートパソコンを取り出し、集英社のホームページでヤムチャの顔を
確認する。間違いない、目の前の鹿男がヤムチャだ!
やがて現れた店長らしき男が、割れた窓ガラスと生焼けのフランスパンを指さして
ヤムチャを激しく怒鳴りつける。額をこすりつけて土下座するヤムチャ。鹿の
着ぐるみを脱ぎ捨て、逃げるように店を後にした。
独歩のショックは計り知れない。中国くんだりまでスカウトにきた男があれか!
でも旅費だって馬鹿にならないし手ぶらじゃ帰れないし、何か一つくらいは
取り柄があるかもしれない。お裁縫とか早寝早起きとか・・・。
そのヤムチャが、やにわに茶房に舞い戻ってきた。随行したプーアルがヤムチャを
焚き付ける。このハゲがお前の長髪を狙っている!殺せ!
怒りに眼を血走らせたヤムチャの狼牙風風拳がうなりを上げた!
攻撃をかわそうともしない独歩。ふところの契約書をヤムチャに突き付け
契約金額を赤丸で囲んだ。
反転したヤムチャの拳がプーアルを葬った。土下座で独歩に忠誠を誓うヤムチャ。
ドッポリア第一の戦士ヤムチャ、ここに誕生。