たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart13
上海空港にヘリが墜落した!
滑走路に叩きつけられ炎上する機体。救護班が駆けつける中、火だるまの
パイロットが残骸から這いだしてきた。ハゲの日本人である。内ポケットから
巻紙を取り出すと、群がる野次馬に広げて見せた。こう書いてあった。
「SAYAKAよ、伊良部になれ」
群衆からどよめきが上がる。満足げに笑ったパイロットの巨体が崩れ落ち、息絶えた。
ターミナルのトイレから一部始終を見ていた愚地独歩が、排尿を終えてタクシーに
乗り込む。運転手にヤムチャ邸の住所を告げた。
パイロットの身元は未だに不明。SAYAKAにメッセージは届かなかった。
ヤムチャは不在だった。下男のプーアルに言付けを頼み、その場を後にした。
猫が人語を解するというふざけた展開に、やる気ゲージが限りなく0に近づいた
独歩であったが、そうも言っていられない。ヤムチャ招聘の策を練るべく
商店街の茶房のドアをくぐった。
フロアの中央で鹿が踊っていた。鹿の着ぐるみ姿の男である。客席から投げられる
鹿せんべいに飛びついて、たまに混ざっている気円斬で口をザックリ切っては
哄笑を浴びている。屈辱に泣きはらしたその顔に、独歩は見覚えがある。
バッグからノートパソコンを取り出し、集英社のホームページでヤムチャの顔を
確認する。間違いない、目の前の鹿男がヤムチャだ!
やがて現れた店長らしき男が、割れた窓ガラスと生焼けのフランスパンを指さして
ヤムチャを激しく怒鳴りつける。額をこすりつけて土下座するヤムチャ。鹿の
着ぐるみを脱ぎ捨て、逃げるように店を後にした。
独歩のショックは計り知れない。中国くんだりまでスカウトにきた男があれか!
でも旅費だって馬鹿にならないし手ぶらじゃ帰れないし、何か一つくらいは
取り柄があるかもしれない。お裁縫とか早寝早起きとか・・・。
そのヤムチャが、やにわに茶房に舞い戻ってきた。随行したプーアルがヤムチャを
焚き付ける。このハゲがお前の長髪を狙っている!殺せ!
怒りに眼を血走らせたヤムチャの狼牙風風拳がうなりを上げた!
攻撃をかわそうともしない独歩。ふところの契約書をヤムチャに突き付け
契約金額を赤丸で囲んだ。
反転したヤムチャの拳がプーアルを葬った。土下座で独歩に忠誠を誓うヤムチャ。
ドッポリア第一の戦士ヤムチャ、ここに誕生。