803 :
774:
で、ではちょっと年齢変えて内戦終結直後と言うことで……
SSなんて書いたことないんでお見苦しい点はご容赦を!
--------------------------------------------------------------------
きれいに整理された執務室、その机の前に男は座っていた。
元PCIA長官ドラコルル。クーデター派の中心人物で旧政府派に最も
恐れられた男。そして今は戦争犯罪人として軟禁されている男。
何の仕事もなく、何の連絡も来ない執務室で全てが終わったことを
実感しながら、彼は机の上の一枚の写真をぼんやり眺めていた。
そこにはひとりの女性が映っていた。
「君の言うとおりだったよ」自嘲するように呟く。
26年前、ピリカの経済が混迷期にあった時代、ドラコルルはスラムに
生まれた。街の治安は麻薬汚染によって最悪。凶悪犯罪は毎日のように
繰り広げられていた。しかしその中にあって、彼は幼い頃から不思議なほど
純粋な正義感を抱いていた。彼はいわゆるガキ大将だった。決して弱い者
いじめを許さず、友達がいじめられると例え相手が大人でも仕返しに
向かった。そんな彼に同年配の少年達も付いていった。14才の頃には
少年達を中心とする自警団を作りスラム街の治安回復に一定の効果を上げ、
その経験を買われて17才で警察署に入り、僅か8年で中央警察庁長官に就任。
これがピリカの国民なら誰でも知っている長官の経歴である。
クーデターを起こす前、彼は国民的英雄だった。ピリカの治安と経済が
ここまで改善されたのはドラコルルとパピの二人のおかげだという者も
少なくなかった。そして今、彼を裏切り者と呼ぶ者もいれば、将軍に
唆されたのだとかばう者もいる。まだ裁判も始まっていないのに
助命嘆願がパピの元に届いているという知らせに長官は苦笑した。
「だが、全て終わったのだ」
長官が呟いてしばらくすると、ドアをノックする音がした。
「入れ」
ゆっくりとドアが開くと、そこに立っていたのはパピだった。
つづく
---------------------------------------------------------------------
あぁ!やっぱとまんねえ!
804 :
774:03/06/19 21:43 ID:???
うお。書いてる間にレスが沢山…753さんもやってみる?(w
805 :
753:03/06/19 22:33 ID:???
>>803 止めなくていいです。続き激しく見たいです。
774さんみたいなリアルな描写は書けないけど私もいずれ書きますw
いっそあまりのクサさに背中がむずがゆくなるようなやつを(w
806 :
774:03/06/19 22:42 ID:???
はーい。考えながら書いてるため時間かかりますんで、
またーり進行しちゃって下さい
807 :
774:03/06/19 23:03 ID:???
パピはドラコルルが警察長官に任命される数ヶ月前、大統領に就任した。
ドラコルルは当時パピがピリカ再生を可能にするかもしれないと期待していた。
パピが政界、軍部、重工業の癒着を絶ち、不要な軍事費を大規模に縮小したことを
評価していたからだ。ドラコルルはすぐに情報機関設置を大統領に進言した。
しかしパピの反応は冷たかった。
「長官、君は内部向けの文章で「容疑者に対しての捜査は人権問題を優先すべき
ではない」と発言しているね。僕としても君の力は高く評価している、けれど
君の意識には相当問題があるし拷問や違法捜査疑惑も多い。現状ではとても
情報機関は設置できないよ」
それが答えだった。長官は必死に情報機関の必要性を訴えた。秩序は力で
勝ち取る物だと。しかし大統領は頑なだった。
一ヶ月後、不正献金を追求され解任間近と言われるギルモア将軍が長官を
訪ねてきた。彼がPCIA設置と自分の長官就任を条件にクーデター参画を
持ちかけたとき、彼は飛び上がって喜びたくなった。自分が事実上軍の主力を
握るのだ、そしてクーデターが終了すれば、自分の前にいるのは自分より
才能も人望も無い男ただひとり。この男を倒して自分が元首となれば、
PCIAを中心とした強力な警察国家が誕生する。まさしくこの星に秩序が
うち立てられる。彼の心に迷いはなかった。
続く
808 :
774:03/06/19 23:20 ID:???
部屋に入ってきたパピを、ドラコルルはしばらく何も言わず眺めていた。
「ひとりなのか?」ドラコルルの問いにパピは答える。
「ああ、部下は部屋の外で待機させてある」
「不用心だな。まだ私は拳銃を取り上げられてはいないのに」
「君が無駄なことをしないということはよく知っているよ」
そういうとパピは部屋の脇にあるソファに腰を下ろした。
「お前はどうなんだ。用もなく来たわけでもあるまい」
沈黙が続いた。ドラコルルが何か言おうと口を開くと、パピが沈黙を破った。
「君はスミカという女性をしっているか?」
その言葉を聞いてドラコルルは凍り付いた。
「何故お前があの人の名前を知っている!?」無意識のうちに大声を上げている
自分にドラコルルは驚いた。そして彼の胸にとてつもなく恐ろしい予感が
漂い始めた。それはある種のイメージではあったが、それが何であるかはまるで
脳が拒否しているかのように思い浮かばなかった。そのイメージがもの凄い
速さで頭の中を駆けめぐる。鼓動が速くなるのを感じた。
「僕の母の名だよ」
最も恐れていた答えが、パピの口からとびだした。
----------------------------------------------------------------------
ごめん!もうちょっと!もうちょっとで終わるから!
神キタ―――――!!
も、燃える。続きを、早く続きをハァハァ
810 :
753:03/06/20 00:00 ID:???
スミカさんか・・・その名前、私も使っていいですか。
長官の元恋人(=パピの母)の名前、どうしようかと思ってたとこなのでw
811 :
774:03/06/20 00:01 ID:???
暫く放心していたドラコルルが、ようやく口を開いた。しかしうまく言葉に
ならない。パピは落ち着いていた。「裁判の資料にまとめられた君の経歴に
目を通した。君は16才頃、隣町の市長の家に出入りしているね。母はそこの娘だった。
その後家出して僕をひとりで産んだんだ。」 「僕が四歳のときに死んだことは…」
ドラコルルはただ黙っていた。パピの話が何を意味するかは、彼にとって明らかだった。
「長官、聞かせてくれないか…母の話を。少しでも」
ドラコルルは顔を伏せたまま暫く押し黙っていたが、やがてゆっくりと話し始めた。
「そうだ、私の自警団がまともな組織にできあがった頃だったな…
近道しようとスラムを車で素通りしようとした男がいたんだ。
運悪く車はエンストしすぐに不良達に取り囲まれた。
私はそのときひとりだったが、まぁ既に奴らは私が自警団の隊長だと
知っていたからな。追い払うのは簡単だった。なのにその男はどうしても私を
家に招きたがった。私が自分の素性を明かさなければ特に問題にはならない
だろうと思ってついていった。腹も減っていたしな。
彼は市長で…そこでスミカに出会った。あのときは19才の。美しい人だった
…食事の席で私が、この星をいつかは平和にしたいと言ったら、皆笑った。
でも彼女だけは笑わずに、「貴方は警察官になるべきよ」と言ってくれた…
そうしたいけど自分は教育も受けていないから無理だろうと私が言うと彼女は
家庭教師になると言い出した。市長は渋い顔をしていたが、恩返しをしたいという
彼女に押し切られてね、それからだ、私が彼女の家に通い始めたのは…」
この人の文、場面のイメージがすごく浮かぶよね。
今明かされる衝撃の事実!
いやほんと、読んでるうちに本当の設定に思えてくる
814 :
774:03/06/20 00:25 ID:???
ドラコルルは続ける「彼女のおかげで、私はすぐに基礎的な学習をマスターしていった。
元々この星の試験というのはおよそ実践的な物が重視だから、義務教育しか受けていない
私でも、彼女のおかげで試験の勉強には充分だった。彼女は教師になりたかったらしく
教え方も上手かったしね…。二人で勉強しながら、夢や理想を語り合った。自然と私たちは
愛し合うようになったんだ。夜私が彼女の部屋に何度か忍び込んだ。
けれど、彼女は私にもっと優しさを持てといつも言っていたよ。私の考えは本当の平和を
産まないと…その後私が警察官試験に合格し、彼女の家に向かうと彼女はいなかった。
市長に「お前がたぶらかしたのか」って詰め寄られたが…何も知らなかった。」
長い沈黙が流れる。ドラコルルは自分の気持ちが少し軽くなっていることを感じた。
パピが話し始めた。
「近所の子供にいじめられて、一度だけ、父親について母に聞いたことがあった。
母は言ってたよ。母がを身籠もったとき、私の父親は夢を叶えることができるところ
だった。けれど、市長の親が結婚を許すはずがない。かといって駆け落ちして
彼の夢を壊すことは決してしたくなっかった。って」
パピは立ち上がってドアの前まで歩いて言った。
「ありがとう、長官。おかげで母のことを知ることができたよ
…君は、これから裁判を受けねばならない。判決は決められないけど、
僕はこれからの世界に君の力が必要だと思っている。・・・・そうだろう?」
ドラコルルは黙っていた。
「父さん」
そう言ってパピは出ていった。ドアの音が、部屋に響いた。
----------------------------------------------------------------------
あと1話です
こんな時間に774さんのSS読んでひたってます。
パピは既に事実を知った上で来てるのか・・・冷静ですね。
それとは対照的な長官の衝撃ぶりに萌え。
あああ泣ける・・・父さんか・・・
どうなるんだ最終話!
818 :
774:03/06/20 00:41 ID:???
30分程経って、ひとりの兵士が執務室のドアを叩いた。
長官に促され部屋に入って見ると、彼が白い正装の軍服を着て
開いた窓から外を眺めていた。その瞬間、兵士は全てを悟り、体が震えた。
兵士はできるだけ冷静を装った声で、10日後、裁判所へ出頭するよう
命令が下ったことを伝えた。常に冷静であれと、彼に教えられてきたからだ。
「そうか、ありがとう」
それだけいうと、彼は再び窓の外に意識をやった。兵士は何か言いたかった。
しかし震える声で、長官、と呟く以外何も言えなかった。目に涙が溜まった。
またひとりになった部屋で彼は机に白い封筒をしまった。
彼の心には何も悔いはなかった。何年ぶりだろうか、こんなに清々しい気持ちは。
自分の悲願は達成されるのだ、ピリカに秩序が戻るのだ。もはやファシストはいない。
軍人もいない。自分が考えていたよりもずっと理想的に、平和的に秩序が訪れようと
している。そしてその悲願を息子が継いでくれるのだ。この喜び。風がカーテンを押した。
数分後、屋敷に銃声が響いた。ドアの外にいた兵士は、涙を止めることが出来なかった。