今年5月に「量刑制度を考える超党派の会」が発足された際に参加した議員がこれらの実情を理解しておらず、欺瞞に満ちた発言を繰り返していたことをここに追従させていただきます。
会の発足時のたたき台で「囚人は一生を「生きる屍(しかばね)」として刑務所で送ることになり、死刑より残虐な刑になるとの批判が出る。
ただし、「仮釈放」に代わって、病気の場合やきわめて高齢な場合など、一定の条件で「恩赦」を設ける方法もある。」などといったことが話し合われたようです。
これは、明らかに現在無期懲役があるため仮釈放という言葉を使わず、恩赦を出すという言い方をした言葉遊びに過ぎません。
また、病気や高齢を理由に恩赦を出せば、当然仮出所後の生活は安定とは程遠いものとなることは明白です。
受刑者のことなど一切考えないこの発言は明らかに人権侵害とわざるを得ません。
またこの会において議員らの発言で現在の刑罰制度の実情に対する理解の浅はかさが見受けられます。
「何が何でも一生刑務所というのが憲法違反になるのは理解できる。仮釈放を認めるにしても、やはり20年は入っているような制度にしなくてはいけないのでは」
「出所を許すには30年くらいは刑務所にいなくては。25〜30年後には恩赦もあり得る、という例外が盛り込めるのであれば、終身刑の導入もいい」
といった意見が出されました。
しかし、1997年から無期懲役の平均収容年数が20年を超え、2007年には30年を超えたことをを知っていればこのような発言がなされることはないのではないでしょうか。
また、現在の刑法において、有期刑の上限が20年から30年に引き上げられており、30年の量刑を受けたも者も無期懲役と同等の10年で仮釈放が認められるようになっています。
有期刑と無期刑の量刑の比重を考慮し、また今までの実際収容年数を知っていれば、議員たちの発言がいかに浅慮であるかがうかがい知れます。
そして、この会の会長である加藤紘一議員はオフィシャルサイトにおいて裁判員制度批判とそれに追従する形での蛇足としてこの会に参加をしたことを自ら明らかにしています。
(加藤紘一オフィシャルサイト
http://www.katokoichi.org/videomsg/2008/080503_2.html)
このサイトにおいて、加藤紘一議員はまだ運用されていないにもかかわらず裁判員の先入観や量刑決定の公平性に対する疑問、また客観性に対する疑問などを列挙し、この裁判員制度が正常に運用されないことを前提にした発言がなされています。
そして、正常に運用されないことを前提として「死刑廃止を推進する議員連盟」や「量刑制度を考える超党派の会」に参加したと述べています。
これは明らかに妥協をすることを前提とした発言であり、司法に対する軽視及び侮蔑と言わざるを得ないのではないでしょうか。
また、加藤紘一議員は「量刑制度を考える超党派の会」の場において以下のような発言をしています。
「(出席議員の)意見を聞いたところでは、仮釈放のない100%の終身刑よりは、(恩赦など)何らかの例外を設ける方向で一致していると思う。党派による思いの違いはあまりないし、国会の委員会審議はスムーズに進むのではないか」
この発言は果たして現在の刑罰制度を理解した考え方なのか疑問を持たざるを得ない。
有期刑の最長年数である30年と無期懲役の仮釈放が認められる年数が10年と同一であることを鑑みて、無期懲役の仮釈放が認められる年数を15年、または20年に延長する方がより妥当ではないだろうか。
何より恩赦などという不確定な言葉遊びで仮釈放基準を設けることによる各受刑者の仮釈放における公平性が本当に保たれるのか甚だ疑問があると言わざるを得ない。