【隠れ家】m-factカフェ 9杯目【フリコス】

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34C.N.:名無したん

 吾輩がこの家へ住み込んだ当時は、主人以外のものにははなはだ不人望であ
った。どこへ行っても跳《は》ね付けられて相手にしてくれ手がなかった。い
かに珍重されなかったかは、今日《こんにち》に至るまで名前さえつけてくれ
ないのでも分る。吾輩は仕方がないから、出来得る限り吾輩を入れてくれた主
人の傍《そば》にいる事をつとめた。朝主人が新聞を読むときは必ず彼の膝《
ひざ》の上に乗る。彼が昼寝をするときは必ずその背中《せなか》に乗る。こ
れはあながち主人が好きという訳ではないが別に構い手がなかったからやむを
得んのである。その後いろいろ経験の上、朝は飯櫃《めしびつ》の上、夜は炬
燵《こたつ》の上、天気のよい昼は椽側《えんがわ》へ寝る事とした。しかし
一番心持の好いのは夜《よ》に入《い》ってここのうちの小供の寝床へもぐり
込んでいっしょにねる事である。この小供というのは五つと三つで夜になると
二人が一つ床へ入《はい》って一間《ひとま》へ寝る。吾輩はいつでも彼等の
中間に己《おの》れを容《い》るべき余地を見出《みいだ》してどうにか、こ
うにか割り込むのであるが、運悪く小供の一人が眼を醒《さ》ますが最後大変
な事になる。小供は――ことに小さい方が質《たち》がわるい――猫が来た猫
が来たといって夜中でも何でも大きな声で泣き出すのである。すると例の神経
胃弱性の主人は必《かなら》ず眼をさまして次の部屋から飛び出してくる。現
にせんだってなどは物指《ものさし》で尻ぺたをひどく叩《たた》かれた。
 吾輩は人間と同居して彼等を観察すればするほど、彼等は我儘《わがまま》
なものだと断言せざるを得ないようになった。ことに吾輩が時々|同衾《どう
きん》する小供のごときに至っては言語同断《ごんごどうだん》である。自分
の勝手な時は人を逆さにしたり、頭へ袋をかぶせたり、抛《ほう》り出したり、
へっつい[#「へっつい」に傍点]の中へ押し込んだりする。しかも吾輩の方
で少しでも手出しをしようものなら家内《かない》総がかりで追い廻して迫害
を加える。この間もちょっと畳で爪を磨《と》いだら細君が非常に怒《おこ》