>>538の続き
ほどなくしてアクが出て来るので、丁寧にピンポイントでお玉ですくい取る(第1回脂抜き)。
一番初めに出る脂は特に臭みが強いので、撹拌したり鍋内の1ケ所に集めたりせず、
静かに手早く抜くこと(重要)。また脂は盛り付け槽にも仕切り板の隙間から
流れ込んでくるので、これも忘れずにしっかり抜く。
見える脂をすべて抜いたら、静かに撹拌する(肉の赤みがすべてなくなるようにほぐす。
肉が固まっている箇所がなくなるように。タレの温度を均一にする意味合いもある)。
また脂が浮いて来るので、お玉で取る(第2回脂抜き)。この時点では特にタレとの分離が
はっきりしないので、タレを少々巻き添えにしてでもしっかり抜くように。
肉の赤みがなくなり、脂もしっかり抜いたらタマネギを投入(タマネギはすでに切れている。
肉1貫に対して1キロの割合)。
投入したらすぐ沈め(お玉で押しつける)、上に肉をかぶせて浮いてこないようにする
(タマネギに脂分を吸わせないため。先にタレを吸収させて脂分の入る余地をなくす)。
また脂が浮いてくるので、お玉で取る(第3回脂抜き)。
タマネギの切り口がタレ色に染まったら、全体を撹拌。盛り付け用のお玉で
8の字を描くように撹拌し、タマネギが全体に均等に散らばるように。
また脂が浮いてくるので、お玉で取る(第4回脂抜き、しつこいようだが)。
タレの温度が上がってきたら(沸騰させてはいけない)、新しくタレを投入(肉1貫につき
2600cc。主にタマネギから出た水分がタレ味を薄くしているのを元に戻すため)。
当然温度はガクっと下がるため、この時の温度の見極めは重要。
タレを投入したら煮肉槽全体を撹拌し、味を均一にする。
また沸騰直前の温度になるまで待ち(くどいようだが沸騰させてはいけない)、
脂を抜く(第5回脂抜き)。抜いたら仕切り板を元の位置に戻し、煮肉槽と盛り付け槽の
肉を全部合わせて撹拌し、火を止める(保温状態に戻る)。
肉投入からここまでの標準時間は5分(煮肉量により若干増えることはあるが、
実際のところ10分もかけていては追い付かない)。
さらに続く↓
>>539の続き
煮肉が終わったらタレを少量小皿に取り、味をチェックする。味のチェック基準は
標準の味より濃かったり(タレ投入多すぎ)、薄かったり(タレ投入少なすぎ)、
辛かったり(水分蒸発しすぎ)、酸っぱかったり(タレを沸騰させたためにワインの成分が飛んで
酸味が残る)、苦かったり(タレを焦げ付かせり、低温煮肉でも起こる)、
脂っぽかったり(低温で煮肉したため肉汁と脂が混ざり、脂抜きが充分出来なくなった)、
またこれらが複合的に起こることもある。
すべて正しく滞りなく煮肉すれば、これらの味の変化は起こらないということになってるが、
これがなかなか難しい……。
また、煮肉をくり返す内にタレが濁ってくるので、400食に1度を目安にタレ濾し
(ナイロン製の濾し布にタレを取り、不純物を濾す。多い時は何キロもカスが出る)を実施。
タレ味が大きく狂った時(特に脂っぽい時)もタレ濾しをしなければならない。
煮肉後にも少しずつ脂が出てくるので、盛り付け前にも脂抜きをすること。
抜いた脂は鍋の横に据え付けの脂分離槽に入れる。抜いた脂とタレが分離したらバルブを開き、
下層に沈んでいるタレをボールで受け、肉鍋に戻す。分離槽にタレを放置すると腐敗するので、
なるべく早く戻すこと。脂は脂缶と呼ばれるバケツみたいなポリ容器に集め、
配送の時に工場に送る(石鹸の原料になるそうな)。
いやー、余すところなく文章にしてみたらスゴい分量になっちゃったわ。
我ながらよくこんなことやってたなあ。当然肉を煮ている間にもお客は来るから、
当時は考えてるヒマもなかったけど。