Fender Stratocaster Part56 【ストラト総合】

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110ドレミファ名無シド
刑務官が階下で揺れ動く死刑囚の体を押さえ、医師が聴診器で心臓の停止を待つ。十四分後に死亡が確認された。
が、生き返らないよう、さらに五分間はつるしておく決まりだ。遺体を清めて納棺し、遺族に死刑の執行を告げると、
兄弟が遺骨を引き取った。

死刑囚は死んで初めて刑が完結する。だから労役のある刑務所ではなく、拘置所の独居房で執行まで自由に過ごす。
「逃がさず、殺さず、狂わさず、が死刑囚の処遇のモットーだ」と坂本さん。殺すために心身ともに元気に
生かしておくという不条理を処遇担当の刑務官は抱えている。

「刑が確定した死刑囚の多くは、一度は自暴自棄になる。これを親子のように一緒に泣き笑いして信頼関係を築き、
償いの気持ちを持たせられるのは刑務官しかいない。心から反省して『お世話になりました』と言って死んでいってほしい」

それが、死刑囚の処遇にかかわる刑務官にとってせめてもの救いだ。更生を願い気を使って接してきた同じ刑務官が、
今度は手にかける「後味の悪さといったらない」と。

ある死刑囚は「びくびくしながら『今日は生き延びた』と確信が持てる、
午前十時の室内体操の音楽を待つんです」と坂本さんに言ったという。今も百人余の死刑囚がいる東京、
名古屋、大阪など全国七つの拘置所でそんな葛藤(かっとう)が渦巻いている。

「死刑判決を下すというのは、死の宣告者になるということ。三、四日の審理で『あなたは死になさい』と言えるのか。
裁判員には死刑囚が首をくくられて死んでいく様子を伝えるべきだ。刑場くらいは見せるべきだ」と坂本さんは訴える。
(おわり)