過疎ってますね。SSの人ではないけれど、ちょっと第3話のSSを思い付いたんで
出だしだけ投下してみます。
「じゃあね。まゆみ、また明日〜」
「うん、バイバイ」
帰り道、いつものようにさよならを言い合う私たち。
あの待ち合わせ事件から数日。とりあえずまゆみは怒ってないみたいだし、
他の人達も私の正体に気づいてないみたいで一安心。部活も久しぶりにお
休みで、私は家でのんびりしようかなあ、なんて考えていた。
(たまにはお父さんに凝ったお料理でも作ってあげてもいいかな。デザートも
作って……)
ドン。
そんな風に思いながら歩いていたら、私は誰かにぶつかってしまった。
「いたた……。ご、ごめんね!大丈夫?」
「う……。大丈夫、です」
私がぶつかってしまったのは、小さな男の子だった。まだ、幼稚園の年中さん
くらいだろうか。
「本当にごめんね。私がぼーっとしてたから……」
「う……うわーん!!!!」
「へっ?」
私が謝ったら、その子はいきなり大声で泣き出した。どうしたらいいか分からなくて、
私も困ってしまう。
「そ、そんなに痛かった?ど、どうしよう、とりあえず病院……」
「う、ううん。ちがう……」
その子は泣きながら、私がぶつかったから泣いているわけじゃない、と言ってくれた。
「ぼくね……、迷子になっちゃったの……」
「ああ、そうだったの」
ピンク色のハンカチでその子の涙をふくと、目は真っ赤だけど、とっても可愛い子だと
いうことが分かった。その子は少し笑ったけど、まだ悲しそうな顔をしている。
「……よし、分かった!私が一緒にお母さんを探してあげるよ」
特に用事があるわけじゃないし、泣いている子を放っておけないし。私は自分の胸をグ
ーの手で軽く叩いた。
「ほんとに!?」
「もちろん。あ、そうだ。お名前を聞いてもいいかな?私は由絵だよ」
「ゆうすけ、です」
「ゆうすけくんね」
私はゆうすけくんの小さな手を握った。
私的設定ではゆうすけは涼介の弟です。
818 :
SSの人 ◆UdhVZXdw6g :2006/07/06(木) 21:33:42 ID:zVacMkyK
ありゃ、私がさぼっている間に別の人が。
迷子の男の子が涼介の弟というアイディアはいいです!
第3話も書こうと思っていたけど、816氏に任せてしまいましょうか。
>>816 イイ感じ!
このあとどうなるんかワクワクします
>>818 SSのひとキタ!!
思っていた3話は4話でプリーズ!!
かなり前にあらすじ投下した者です。
ひさしぶりに来たら、SS化してもらっててびっくりですよ。
過去ログ漁ってたらなんかまた盛りあがってきましたw
SSは書いたことないんで、文章量とか雰囲気(一人称が基本?)とか
よくわからんのですが、また思いついたらなにか書いてみます。
816です。SSの方の許可をいただけたので、僭越ですが投下いたします。やたら長くて
すいません。
「ゆうすけくんは何歳?」
「5さいです」
「そっか、じゃあ幼稚園の年中さんだね。お母さんとはどのへんではぐれちゃったの?」
「ききょう公園です。ちょうちょ追いかけてたら、みちにまよっちゃったの」
「お母さん、携帯電話とか持って無いの?」
「もってます。でも、僕、番号が書いてある紙なくしちゃって……」
「じゃあ、いっかい桔梗公園に戻ってみようか」
ゆうすけくんと手を繋いで、私は道を歩いていた。桔梗公園はここから少し離れた場所
にある大きな公園だ。普通の人なら歩いていくのはそんなに大変じゃないけど、ゆうすけ
くんくらいの小さい子にとっては結構な距離だろう。
「ゆえおねえちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。じゃ、ちょっと行ってみようか」
ゆうすけくんのゆっくりした歩調に合わせて、私たちはのんびりと桔梗公園に向かった。
「いないみたいだね……」
「はい……」
15分くらい歩いて、私たちは桔梗公園に着いた。でも、そこにはゆうすけくんのお母さん
らしき人は見当たらない。白いベンチにも、鎖が少し錆びているブランコにも、ちょっと高
めの滑り台にも。
「おかあさん……」
ゆうすけくんは俯いて寂しそうにつぶやいた。そんなゆうすけくんが可哀相で、私はそっと
ゆうすけくんの頭をなでる。
「そんな顔しないで、ゆうすけくん。もしかして、ゆうすけくんのお母さんも、ゆうすけくん
のこと探してるのかもよ?」
「あっ、そっか。そうかもしれない」
ゆうすけくんの顔がぱあっと明るくなって、私はほっと胸を撫で下ろす。
「あっ!」
そのとき、顔をあげたゆうすけくんが滑り台の上あたりを指差した。そっちに目をやると、
大きな赤い屋根が見えた。
「どうしたの?」
「あそこ、僕のようちえんです。こんな近くにあったんだ」
「へえ、そうなんだ。そうだ!それなら、幼稚園の先生に頼んで、お母さんの携帯電話にかけ
てもらえばいいんじゃない?」
「……!ようちえんのせんせいなら、しってるかもしれない!」
笑ったゆうすけくんのことはとっても可愛かった。でも、ちょっとつり気味の切れ長の目は、
どこかで見たような気がした。
「ゆえおねえちゃん?」
「ああ、ごめんごめん。じゃあ、行こうか!」
「はい」
こくりと頷いたゆうすけくんの手をもういっかい握って、私たちは幼稚園に向かった。
「あそこ、僕のようちえんです。こんな近くにあったんだ」
「へえ、そうなんだ。そうだ!それなら、幼稚園の先生に頼んで、お母さんの携帯電話にかけ
てもらえばいいんじゃない?」
「……!ようちえんのせんせいなら、しってるかもしれない!」
笑ったゆうすけくんのことはとっても可愛かった。でも、ちょっとつり気味の切れ長の目は、
どこかで見たような気がした。
「ゆえおねえちゃん?」
「ああ、ごめんごめん。じゃあ、行こうか!」
「はい」
こくりと頷いたゆうすけくんの手をもういっかい握って、私たちは幼稚園に向かった。
「まあ、それは大変だったわねえ祐介くん。由絵さんも、祐介くんをありがとうございます」
幼稚園に着いた私たちを迎えてくれたのは、若くて綺麗なゆうすけくんの担任の女の先生だ
った。ピンク色のエプロンの胸のあたりに、「たむらまりえ」と書かれたバッジをつけている。
「いえ、私は全然大したことはしてませんよ」
「そんなご謙遜を……。それじゃあ、祐介くんのお母さんに電話するわね。祐介くん、ちょっ
と待っててね。由絵さん、お疲れでしょうから、これでもどうぞ」
そう言ってまりえ先生は、缶に入ったオレンジジュースを差し出してくれた。
「あ、ありがとうございます」
ずっと歩いていて喉が乾いていたから、先生のプレゼントはとても嬉しかった。
ゆうすけくんも笑って頷いた。私もようやく一安心。ゆっくりとオレンジジュースを飲み干
した。
「それでは由絵さん、もう帰って大丈夫ですよ。本当にありがとうございました」
「あ、はい。……」
本当はゆうすけくんが帰るところまで見届けたかったけど、これ以上残ったら迷惑だ。私は
おじぎをしようとして、立ち上がった。
「ええっと……。さような……」
「――由絵さん、もしよろしければ、祐介くんのお兄さんが迎えにくるまで残っていきませんか?」
「えっ?」
「もちろん、無理にとは言いませんが」
まりえ先生はにっこりと笑った。きっと、私がもう少し残りたいと思っていたのが分かった
んだと思う。
「じゃあ……お言葉に甘えて」
「ゆえおねえちゃん、いっしょにいてくれるの!?やったあ!いっしょにあそぼう!」
ゆうすけくんがピョンピョン飛び跳ねて喜んでくれた。そんな姿に私も嬉しくなる。
「うん、一緒に遊ぼうか」
私が笑って頷くと、ゆうすけくんは教室の隅っこに置いてあったマリンブルーのおもちゃ箱
に走っていった。
「どれにしようかな〜。せんせい、ゆえおねえちゃん、なにがいい?」
「先生は何でも良いわよ」
「私も何でもいいよ。ゆうすけくんの好きなもので」
「じゃあねえ……これ!」
そう言ってゆうすけくんが手に取ったのはけん玉だった。小さめのけん玉を持ったまま、私
とまりえ先生のところまで戻ってくる。
「せんせいはけん玉できる?」
「ちょっと苦手なのよー」
「ゆえおねえちゃんは?」
「私?けん玉は得意だよ!」
「ほんと?じゃあ、やってみて!」
ゆうすけくんからけん玉を受けとって、私は得意の「世界一周」を披露しようとした。自慢
じゃないけど私は結構手先が器用だから、小さい頃からけん玉は得意だったんだ。
「ほいっ!」
リズムをつけてけん玉を振ると、赤い玉が綺麗に大皿に乗った。
赤い玉が。
「おねえちゃんすごーい!」
「えへへ……。――!?」
ゆうすけくんに褒められて照れていると、急に身体が縮むような感覚に襲われてきた。――
ああっ、そうか、けん玉の赤い玉を見たのがいけなかったんだ!
「……おねえちゃん?」
「由絵さん、どうかしましたか?」
ゆうすけくんとまりえ先生が心配そうに私の顔を覗き込む。私は大慌てでまりえ先生に言
った。
「あ、あのあの!す、すいません、ち、ちょっとめまいがしちゃって……。べ、ベッドとか
貸していただけませんか!?」
「まあ、それは大変。それでは、職員室に簡易ベッドがありますから、そこを使って下さい。
養護の先生もお呼びしましょうか?」
「だだだ、大丈夫です!寝てれば治ると思います!」
「そうですか?お大事になさってくださいね。職員室は教室を出て、廊下をまっすぐ行って
右に曲がったところにあります」
「は、はい!廊下をまっすぐ行って右ですね!」
「おねえちゃん、だいじょうぶ?」
「大丈夫、大丈夫だよ!!そ、それじゃあ、ちょっと失礼します!!」
私は全速力で教室を出た。廊下に出た途端、身体はどんどん縮んでいって、すぐに黒猫の
姿になってしまった。
(ギ、ギリギリセーフ……。自分がバケネコ族だってことすっかり忘れてた……)
部屋にあるけん玉もどこかに隠しておかなきゃなあ、と思いながら、私は幼稚園の廊下を
とことこと歩く。
(今何時?……4時ちょっと過ぎかあ……。変身が解ける前にゆうすけくんのお兄さんが来
ちゃったらどうしよう。まりえ先生もゆうすけくんも、私がいきなりいなくなってたらびっ
くりするだろうし、お兄さんにもちゃんと挨拶したいし……)
廊下にあった古い柱時計を見ながら、私はどうか変身が解けてからゆうすけくんのお兄さ
んが来ますように、と心の中でお祈りをした。
しばらく猫の姿で幼稚園を歩き回っていたら、市役所から6時を告げる音楽が鳴り響いた。
(あ、6時になったんだ。変身が解けるまであとちょっとだ)
動き回るのも疲れた私は、ゆうすけくんとまりえ先生のいる教室の前で変身が解けるまで
じっとしていることにした。
(早く解けないかなあ……)
私がそんな風に思ったそのとき、教室の中からゆうすけくんの声が聞こえてきた。
「わー、お兄ちゃん!」
ゆうすけくんのお兄さんが迎えに来たみたいだった。……ちょっとまずいかもしれない。
もし、ゆうすけくんかまりえ先生が職員室で寝てる(はず)の私を呼びにきたりしたら……。
「祐介、母さんも心配してたぞ。ったく、相変わらず方向音痴なんだな」
教室の中からは、どこかで聞いたようなゆうすけくんのお兄さんの声が聞こえてきた。
でも、今の私にそんなことはどうでもいい。
(早く!早く変身解けろ〜!!)
猫の姿のままじたばたと足を動かしていると、ようやく身体が膨張しはじめた。
「まりえ先生、お世話になりました。先生が祐介を見つけてくれたんですか?」
「いえ、祐介くんを連れてきてくれたのは私じゃないわ」
「おにいちゃん、ゆえおねえちゃんがぼくをたすけてくれたんだよ!」
「ゆえおねえちゃん?」
「うん!いまよんでくるね!」
まずーい!ゆうすけくんは小走りでドアを開けようとしてるみたいだった。私の身体は、
今ようやく耳と尻尾が引っ込んで人のかたちになり始めたところ。
(間に合って〜!)
ギュッと目をつぶって念じた瞬間、ガラッとドアが開いた。
「……あれ?ゆえおねえちゃん。もうだいじょうぶなの?」
ゆうすけくんが私に言った。恐る恐る目を開けて自分の足を見ると、人間に戻っている
ことが分かった。
「う、うん、もう大丈夫よ。ゆ、ゆうすけくんもお兄さんが迎えに来てくれたみたいでよ
かったね」
その場に座り込みたい気持ちを抑えながら、私はゆうすけくんに言った。本当に危なか
ったけど、なんとかバレずにすんだみたいだ。
「あ、おにいちゃん。このおねえちゃんが、ぼくをたすけてくれたんだよ」
「は、はじめまして。立花由絵で――」
ゆうすけくんのお兄さんに挨拶しようとしたけど、私は途中で目を疑った。
「えっ、江上君!?」
なんと、ゆうすけくんのお兄さんはうちのクラスの江上君だったのだ。そうか、ゆうす
けくんの目は誰かに似てると思ってたけど、江上君に似てたのか。
「……お前……」
江上君は私に近づくと、しげしげと私の顔を見つめた。こんなかっこいい顔が近づいて
くると、私もドキドキしてしまう。
「あ、あの……、何?」
「……お前、誰だっけ?」
真面目な顔で尋ねる江上君。はい?まさか、私のこと覚えてないの!?
「同じクラスの立花由絵です!」
「……立花……」
江上君はしばらく考え込んでいたけど、やがてあきらめたように顔を上げた。
「……覚えてないんだね?」
「ああ。――悪い。でも、今覚えた」
存在すら認識されてないなんて……。でも、まあしょうがないか。私は人間の姿じゃ、
江上君とほとんど話したことないんだし。
「じゃあ、まりえ先生、お世話になりました。……ほら、祐介行くぞ」
「うん。せんせい、さよならー!」
「はい、さようなら」
ゆうすけくんと江上君は、手を繋いで教室を出た。私もまりえ先生に挨拶をしてから、
2人より少し遅れて教室を出た。
「はー、結構遅くなっちゃったなあ……」
大分暗くなった空を見上げて、私はひとりで呟いた。と、そのとき。
「……おい、立花」
私の少し前を歩いていた江上君が話しかけてきた。
「あ、江上君。なあに?」
「お前、家どこだ?」
「私?2丁目だけど……」
「じゃ、送ってやるよ」
江上君はぶっきらぼうにそう言って、私の隣に来てくれた。
「え?いいよ、そんなの。迷惑でしょ?」
「……別に。俺ん家もわりと近いし。お前、祐介のこと助けてくれたみたいだし」
「ゆえおねえちゃん、いっしょにかえろうよ」
ゆうすけくんにもそう言われて、私は少し顔が赤くなっちゃったけど、頷いた。
「う、うん。じゃあ、一緒に帰ろうかな」
私は江上君の隣を歩く。ちょっと肩がぶつかるだけで、意味もなく顔が熱くなった。
(猫になってるときも思ったけど……江上君って、本当は優しい人なのかも……)
私の中に、温かい光が宿った。