昨日まで来客だったのでっつーか遠距離の彼女が休みで久々に遊びに来てまして・・・
分析に割ける時間がありませんでしたスマソ
Powder Snow
これは音質にこだわった録音が聞かせどころでしょうね。
ギターとソプラノサックスは恐らく生音、ヴォーカルも近いマイクで息遣いを活かしている。
サックスやギターの弱音の細かな所作などを活かした曲風と雪夜のイメージがうまくマッチ
していて、そこが人気の所以でしょう。
惜しむべくはドラムを始め編入打楽器群がおそらくすべて電子音だったこと。
後ろのヴォーカルやストリングス、エレクトリックピアノなどのキーボードに由来する音色は
仕方ないとしても、チューブラーベル(キンコンカンコンの音)は生音を活かせばかなり
表情は変化する。まあチューブラーベルはレンタル料が高いとしても、スレイベル
(別名ジングルベル、鈴が縦に並んだもの)やらウィンドチャイム(縦状の棒が横に
一列に並んだ楽器)なんていくらでもレンタルできるはずだし、買ってもそんなに
高くないでしょう。
(あるいは出身高校の吹奏楽部のコネでも使って安く一式借りるとか。)
もちろんこれらの楽器もプロのパーカッショニストが演奏すればそれなりの音がするけど、
素人でもクリアな音色がある程度犠牲になるとしても裏拍で打つだけならとりあえず出来る訳だし、
MIDIよりはよほどいい音がするでしょう。
全部MIDIで開き直ってしまうならともかく、せっかくギターとサックスを呼んで
録音セッションを組むのなら、この辺までこだわっても良かったのではないかと。
(MIDIでもアタックレベルの打ち込み方次第ではある程度表情が豊かになるらしいが)
まず冒頭のDb。このほぼ正弦波に近い和音は、漏れの耳で聞いた限り平均律ではなく純正律です。
おそらく、全ての和音に純正律の設定を施しているでしょう。
全く濁り無く奇麗に響く和音ですが、
しかし後奏のチューブラーベルは平均律のまま鳴らしているようで、そこでずれというか
濁りが生じてしまっているのが惜しいところですが。
というかまずチューブラーベル、スレイベルなどの打楽器にエフェクトをかけない
アコースティックギターという音色を選んだ時点で、雪夜あるいはクリスマスという
暗黙の了解が生まれています。
前奏
Db Major
Db | AbonC | bbmin7 | Gb(F#) G# A B |
特に問題はないですね。最後の小節のメジャー和音平行移動は、もちろん平行五度違反
ですが、ポップスとしては散々使われている語法であり、特に違和感は感じません。
ベース進行はディミニッシュスケールに準じています。
第1主題(Aメロ)
Db | GbMaj7 | bbmin7 | Ab(*)6 F7 |
(* 平行五度の和声違反。fonAbだったら回避できた)
GbMaj7 Ab7 | bbmin7 fmin7 | GbMaj7 Ab7 | Db
bbmin7からfmin7が、b minor上のI - Vになっています。普通は解決を最後に持ってくるので
V-Iにするためにfmin7 - bbmin7とすべきですが、ここはまあご愛嬌でしょう。
Db | GbMaj7 | bbmin7 | Ab(*)6 F7 |
GbMaj7 Ab7 | bbmin7 |(R)| ebmin7 Ab7 | Db
次、9-12小節は1-4小節の完全な反復です。弦の単旋律とサブギターがオブリガートで
かぶさるなど、伴奏面で展開が見られます。
13-16小節は全休止を挟み、次をIV-V-IではなくII-V-Iにすることで進行の強度を上げています。
ブリッジ(Bメロ)
GbMaj7 Ab6 | bbmin7 fmin7 | GbMaj7 Ab | Db |
GbMaj7 Ab6 | bbmin7 fmin7 | ebmin7 GbMaj7 | Ab
ebmin7 Ab7 Aaug7onG
7小節目でII-IVという逆進行が見られます。本来IV-IIとすべきなのでGb ebすが、
1小節分の短いブリッジがありますが、ここで出てくるGC#FAの和音、つまりAaug7onG、
和声的に見るとナポリの二度、しかも借用和音o-II7を入れることによって、
強引にGbMajor(F#Major)に転調しようとしています。
ちなみに「スクリャービンの神秘和音」という和音はこれと良く似ていますね。
GC#FBEAという6音を重ねたものです。
第2主題(サビ)はまた次回に。
まあでもアナリーゼスレでこんなことを言うのも何ですが、作曲というのは
理論の正誤を越えた音楽全体の霊感があってこそ良い曲悪い曲というのがあるわけだし。
(といってもやはりあからさまな理論の違反は、流し聞きしていてもなんとなく
バランスの悪さが感じられるんですけどね。)
そういう意味ではこの曲は全体の雰囲気が雪夜をとてもうまく表現していて、
それゆえに曲の人気も高いのでしょう。