ここはまぁ一つ
『僕と小さな彼女』
汚れた猫は一人で夜の街を歩く
まるで孤独を自由と思い込んだように
俺は虚ろな眼で彼女を見ていた
彼女は朽ちたベンチに座っている俺の膝に頭を擦り付ける
「ごめんよ 餌はないんだ」細い手で彼女の頭をなでる
ねぇ 僕が見えるかい
ねぇ 僕は生きているかい
ねぇ 君は一人なのかい
ねぇ 僕も一人なのかい
夕立の湿った空気の中彼女は僕の隣で
哀しい眼をして遠くどこか見てる
少し湿った彼女の背中を撫でる
餌のない僕にはそれしか出来ないから何度も撫でる
「君は何処を見ているんだい?」喋らない彼女に尋ねてみる
あぁ 僕はまだ生きている
あぁ 僕はまだ息してる
あぁ 君はまた頭を擦り付ける
あぁ 僕は後どれくらい・・・
ねぇ 僕の腕の中へおいで
ねぇ 一人で泣くは辛いだろう
あぁ 確かなものは二つだけ
あぁ 君を撫でる僕と頭を擦り付ける君だけ