147 :
:
【政界に隠然たる力をもつ謎の男・四元義隆】
東京・台東区の谷中墓地にほど近い所に全生掩という禅寺がある。中曽根はこの庵で一咋
年十一月二十日の夜。総理大臣に決定する五日前、座禅を組んだ。
総裁予備選のまっただ中であった。その夜八時ごろ、血盟団事件の中心的人物であった古
山栄一が全生庵に行った。古内は、やはり血盟団事件の同志であった四元義隆に頼まれて
行ったわけである。
しはらくして、中曽根と中曽根の派の長老である稲葉修が来た。
古内は、四元から「中曽根さんに何か話してくれ」と頼まれた。四人で庫裏(くり)の
別室へ行き、お茶を飲んだ。古内は、中曽根に言った。
「日本の本当の意味の首相になるには、小我を捨て、超人にならんとする覚悟でやれ」
九時になると、四人そろって座禅を組みに本堂へ行った。それから十一時まで、二時間
座禅を組んだ。平井玄恭禅師の指導で、四人が座った。
座り、正面方は向かって左側に、中曽根と稲葉。右側に四元と古山が座った。
つまり2人がそれぞれ対面する格好であった。四人は黙々と座ったままだった。
一時間たち、十時になると、玄恭が、重々しい声を発した。
「径行(ちんしん)」
四人とも座禅をやめ、本堂の中を歩きだした。黙々と十周ぐるぐるまわった。
やがて、ふたたぴ十一時まで座禅を組んだ。同じころ四元は、中曽根の件でかつて″財
界四天王の一人と謳われた日本興業銀行相談役・中山素平に会っている。
四元は、中山に会い、頼んだ。「どうしても中曽根は、行革をやらなけれほならない。
ついては、第二臨時行政調査会の土光敏夫会長をぼくは知らないので、紹介してほしい」
中山は、すぐに土光に会えるよう段どりをつけた.四元はさっそく土光に会った。四元は、
土光に頼んだ。