【080202:イベント】<初音ミク>アニメ・マンガを超える“新ジャンル” コミケでも旋風
昨年12月29〜31日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれたマンガの祭典
「コミックマーケット73」。今回は、動画投稿サイトなどで話題を集めた音楽ソフト
「初音ミク」の大ブレークを反映し、同人やコスプレ、企業ブースでのグッズ販売など
コミケに旋風を巻き起こした。
毎年夏と冬に開催されるコミックマーケットには、マンガや小説、音楽、ゲームソフト
などの同人誌を販売するサークルや関連企業が出展。「コスプレ広場」と呼ばれる
スペースでは、多くのコスプレーヤーが集まり、好きなアニメやマンガのキャラクターに
成りきって自慢の衣装を披露する。今回も、3日間で約3万6000サークルが参加。
企業ブースには約130社が出展した。
日本中のオタクが集まるコミケに参加する同人サークルやコスプレーヤーの感度は
鋭く、これまでも「テニスの王子様」や「鋼の錬金術師」などブレーク直前の作品がいち
早く人気となった。そんな中、今回最大の注目を集めたのは、アニメでもマンガでもなく、
音楽ソフト「初音ミク」だった。
「初音ミク」は、札幌のソフト開発会社「クリプトン・フューチャー・メディア」が発売した
音楽制作ソフト。声優の藤田咲さんの声を合成して自由に曲を制作でき、可愛い
バーチャルアイドル歌手をプロデュースするという設定が受け、「ニコニコ動画」などの
動画サイトに「初音ミク」の曲とPVが続々投稿され、大ブレーク。“妹分”となる「鏡音リン
・レン」も発売された。
今回のコミケでは、発売元のクリプトン社が企業ブースに出展。「公式設定資料集」など
のグッズを販売し、ミクの声を担当した藤田さんと「鏡音リン・レン」の声優・下田麻美さんが
登場するトークショーを開き、多くのファンが集まった。同社以外にも、Tシャツやステッカー、
トートバッグなどの関連グッズが発売され、完売が相次いだ。
同人サークルでは、「初音ミク」をテーマにした同人誌や、「初音ミク」で制作された音楽CDが
続々と登場。次回は「初音ミク」コーナーができるかも知れないというほどの人気だった。
「コスプレ広場」でも、「初音ミク」のコスプレが大人気で、発売されたばかりの「鏡音リン」が
早くも姿を見せていた。音楽ソフトの「初音ミク」はアニメやマンガと異なり、ジャケットのイラスト
ぐらいしか情報がないため、コスプレーヤーたちはネットで投稿された動画や自分自身の想像で
衣装を制作したといい、コスプレーヤーの一人は「動画サイトでミクの映像を見て可愛いので
挑戦しました。背中など分からない部分は想像しながら作りました」と話していた。通常の
“成りきる”コスプレではなく、“創る”コスプレだったようだ。
コミケを運営するコミックマーケット準備会のメンバーは「一つの『作品』というより、『初音ミク』
という一つの『ジャンル』が誕生したと言えるぐらい」と驚くほどの人気だった。コンテンツ文化に
詳しい美術評論家の暮沢剛巳さんは「『初音ミク』の面白さは、自ら作品を作って参加できる
ところにある。誰もが同じ土俵の上で等しく創作でき、それぞれが影響しあって新たな作品が
生まれる。真の意味での“インタラクティブ(双方向的)”なメディアだったことが、コミケとマッチ
した」と分析する。