中高生にも読んでほしい…「さぶ」カバー劇画調に
時代小説の巨匠、山本周五郎(1903〜67)の人気作品「さぶ」のブックカバーが、
この夏の「新潮文庫の100冊」フェアを機に、漫画家の池上遼一氏(61)が描く劇画調の装画となった。
15年ほど前、角川文庫が夏目漱石作品のカバーを、わたせせいぞう氏のイラストにした例はあるが、
名作のカバーを劇画調にするのは珍しく、往年のファンには戸惑いの声もある。
「さぶ」は、無実の罪をきせられて島送りになった栄二と江戸職人さぶとの交流を描いている。
新潮文庫編集部によると、1965年の文庫化以来、178万部売れ、同文庫で58点、
総計2950万部出ている周五郎作品でも第1位。
しかし若い読者への浸透度はいま一つで、栗原正哉編集部長は
「中高生などにも名作を読んでもらいたい」と、装画変更の理由を説明している。
これまでの辰巳四郎による装画は、橋に雨が降りかかる江戸情緒の漂うものだったが、
今回は、大海原に立ち向かう男たちの姿を漫画にした。
池上氏は「男組」や「HEAT―灼熱」などで知られ、周五郎作「松風の門」などの漫画化も試みている。
時代小説評論家の寺田博氏は「周五郎作品に、漫画の装画というのは違和感がある。
しかし、作品が読まれないより読まれた方がいい。仕方がないのかなあ」と話している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20050719i506.htm