週刊少年ジャンプ文字バレスレッド8

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411164話 St.Valentine
真剣な顔で東城のノートを読みふける真中。
小説は王女を勇者が迎えに行くところで終わっていた。
「東城は・・やっぱすごい・・俺も・・・がんばらないと・・」
真中の脳裏に東城の最後の笑顔と文化祭の時の悲しそうな西野の顔がよみがえる。
「・・西野・・」
中学時代の登場が去る描写の後、ヒロイン西野や旅行の時の西野の描写。
(いつだって・・俺のそばにいてくれた)
真中は西野の携帯に電話するが繋がらない。
「怒ってる・・よな・・ごめん、西野」
真中はノートの最後のページを開いて机の上に置いたまま走って西野家へ。
「はあ、はあ」
息切れしつつチャイムを押すが、誰も出てこない。
(俺は西野まで失うのか?そんな・・)
「西野つかさちゃーん!お願いだ、いるなら、でてき・・て・・」
切羽詰った様子で叫ぶ真中の前で、静かに玄関が開く。
真中の机の上のノートが風にふかれて最初に戻る。
「じゅんぺーくん?来てくれたんだ!チョコつくってたとこだよ!入って入って」
笑顔の西野にほっとしつつも後ろめたい真中。
「ねえ・・何があったかなんて・・聞かないけどさ。
 あたしって・・このチョコ・・じゅんぺーくんに・・あげていいのかな?」
エプロン姿の西野を真中が硬い表情で抱きしめてヒキ。

412メディアみっくす☆名無しさん:2005/07/07(木) 21:28:51 ID:???
ユートをぐんぐんと引き離していく牧原。
監督、スピードなら瀬尾の方が上だったはずなのに、と驚く。

(俺は、これまで、半端な気持ちだったのかもしれない)
と以下牧原のモノローグが続く
ギャッ、シャォォッ、
「コーナーは、一段と速い……!」
と驚きの言葉を口にする監督。
(周りにいるやつらより速かったから、口に出さなくても
皆、俺が一番であることを認めている。そんな雰囲気。
そんな、ぬるま湯につかりきっていたのかもしれない)
ギャオッッ!
牧原、さらに加速し、ユートを突き放す。
(違う、そうじゃないんだよ、俺は)
牧原の精悍な表情、ビュォッ、と風を切る音。
(本当は、誰にだって負けたくなかったんだ。
狭い世界で一番だなんて、そんなちっぽけな
ものを誇りにしたくはなかったはずなんだ)
(牧原君、速い――!)
ユート、冷や汗。
(お前のおかげだ。瀬尾。俺は、お前に、絶対に負けたくない!)

ユートの視界から、牧原の背中がどんどん遠ざかっていく。
「化けたわね。牧原」
監督、確信に満ちた表情で呟く。

ゴールイン、ユートは、牧原に半周近い差をつけられていた。

皆が牧原に近寄っていき、すごい、すごいよ、すげーぜ、と口々に称えている。
監督が牧原に近づいていき、ポン、と肩を叩きながら微笑む。
ユートは、誰に話しかけられる訳でもなく、寂しげな後ろ姿を見せながら、
その場を後にした。
413メディアみっくす☆名無しさん:2005/07/07(木) 21:29:45 ID:???
場面変わって、父と連れ立って家路につくユート。しょんぼりとしている。
やれやれ、これでやっとあきらめがついたみたいだな、と思う父
「おい、もう、ほどほどにしておくんだぞ。金もかかるんだから」
「う、うん……」
(スラップで滑れたら、僕が勝てたんだ。速さもペースも、ずっと違うんだもの。
スピードスケートは僕の方が慣れてるんだから、本番で、スラップで、
ロングで滑れれば勝てたんだ)
父の考えとは裏腹に、たら、ればを心中で繰り返し、自分の勝利を疑わないユート。

場面変わり、ユートの自宅。
父は愚痴を言いながら煙草を吸っている。
仕事場から持ち帰ったと思われる資料の山を見て、渋い顔。
「労働時間減らせって…これじゃあ残業手当カットと変わらないじゃないか…!」
トントントントン、とテーブルを指でこづき続ける父。
テレビでは野球中継がやっている。ひいきのチームは負けているらしく、
チッ、と舌打ちする父。

そこに、空気を読まずにユートが話しかけに行く。
「お父さん」
「何だ!」
初っ端からキレ気味に応対する父。
「僕、スケート、負けちゃったけど、やっぱりまだ続けたいんだ」
「……!」
絶句する父。手に力が入ったのか、持っていた資料がグシャグシャになる。

ユート「ちゃんとロングで滑れば勝てたんだ。スラップで滑れれば
勝てたんだ。ねぇ、お父さん、スラップ欲しいよ――」
414メディアみっくす☆名無しさん:2005/07/07(木) 21:30:30 ID:???
バァン!!
資料をテーブルに叩きつける父。ユートびくりとする。
「何だよ!金がかかるってか!?お前にメシ食わせるのに
どれほどかけてやってると思ってんだ!どれほど!」
激昂する父。
「お父さん……?」
「むしりとるのが好きなのはホントの親と一緒だな!やっぱり
兄貴のガキだよ!お前!」
どうやら、ユートの本当の父親は違ったらしい(以下父→義父)
「え……?」
「どこまで人にたかって、押し付けて生きていく気なんだよ!この野郎!」

しばし沈黙。気まずい雰囲気になるユートと父。
「……ちっ…お前が、もう少し大きくなるまでは言わないつもりだったんだが……」
「まって、お父さん、僕、お父さんの」
「もういい、寝てろ。雄斗」
「お父さん」
「いいから寝てろって!いいから!」
ユートを追い払う父。

放心状態のユート。
(僕には、お母さんはいないけど、優しいお父さんがいて、
スケートが得意で、本気を出せば誰にも負けなくて……)
スケート靴を手にしたまま、虚ろな目つきでモノローグをするユート。
415メディアみっくす☆名無しさん:2005/07/07(木) 21:31:21 ID:???
トントントントン、
相変わらずテーブルを指でこづいている義父。
「ったく、なんだって……」
そう呟く義父の後ろには、スケート靴を振り上げているユートがいた。
そして、振り下ろす。

ガシィッッ、
背の低いユートの一撃は、椅子に座っている義父の背中に当たった。
「!?……っぐっ!お前、この!!」
振り返り、ユートに襲い掛かろうとする義父。
しかし、ユートの投げつけたスケート靴が今度は左ひざに当たり、倒れる義父。
「あ、あぁぁっ!」
さらに、倒れこんだ父の頭目掛け、手にもったままの方のスケート靴を振り下ろすユート。
ガッ!、頭に命中。
今度は、叫び声をあげることのなかった義父。
ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、
殴り続ける音。音。音。

場面転換。
ユートは氷のリンクの上に立っている。
しかし、それは幻影で、実際は夜の車道のど真ん中に突っ立っているユート。
はいているスケート靴の片方は、血に濡れている。

(負けないよ。牧原君)
416メディアみっくす☆名無しさん:2005/07/07(木) 21:32:03 ID:???
ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ、ばたんっ、

スケート靴で路上を駆けるユート。当然バランスを崩して転ぶ。
しかし、ユートの顔には爽やかな笑顔。
(こんなことじゃ駄目だよね。高月君に笑われちゃうよ)
立ち上がるユート。

ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ、

再び路上をスケート靴で駆けるユート。
まばらな人通りではあるが、何人かの通行人が気味悪そうに見ている。
(負けないぞ、負けないぞ高月君)

ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ、

恍惚の表情で路上を駆けるユート。
目の前には高月の幻影。

プップーー!キキィーーーーー!!

幻影が、光にかき消される。
ユートの眼前に、大型トラックのヘッドライトが迫っていた。
417メディアみっくす☆名無しさん:2005/07/07(木) 21:33:41 ID:???
場面変わって、朝、ユートの自宅前で、ノックを続ける吾川。
「おーい、学校行こうぜ。瀬尾ー」
ドンドンドン、
「おーい?瀬尾ー?」

部屋の中には、血だまりに伏しているユートの義父。
テレビはつけっぱなしのままで、朝のニュースが流れている。
交通事故のニュースをやっているらしい。

最後の、暗転したコマの中にアナウンサーのセリフが入っている。
「死亡した瀬尾雄斗君は――」

ご愛読ありがとうございました!河野慶先生の次回作にご期待下さい!

コメント
自分の力不足は否めませんでした。
本当に、反省しています。
今まで、お世話になりました。<慶>