【マガジン】ジャンプ首位奪回【陥落】

朝日新聞１０月１５日付文化総合面から

ジャンプとマガジン　なぜか静かな逆転劇

　なんと静かで地味な逆転劇だろう。５年前に「少年マガジン」(講談社)に部数トップの座を
24年ぶりに譲った「少年ジャンプ」(集英社)がここにきて再び首位に立ったと言うのに。
　「『ラブひな』と『ＧＴＯ』が相次いで終わり、これに代わる人気作を提供できなかったこ
とに尽きます」と、「マガジン」の野内雅宏編集長は「転落」の理由を率直に語る。
　では、「ジャンプ」がはしゃいでいるかといえば、首位奪回についての宣伝はいっさいなしだ。
　無理もない。出版関係者によると、最近の推定発行部数は「ジャンプ」３２３万、「マガジン」
３１０万。５年前に比べて共に１００万部近くも落としているのだから。
　不思議だ。「ジャンプ」の連載陣は「シャーマンキング」「ヒカルの碁」など一時の低迷を脱して
上がり調子。特に「ＯＮＥ　ＰＩＥＣＥ」は、9月に出た第25巻が２５４万部という史上最高の初版
部数を記録している。
　「週刊少年マンガ誌を買う習慣をもつ人が少なくなってきている気がする」と野内編集長。確か
に、電車の中でマンガを読む人の姿は以前に比べてめっきり減ったという印象がある。
　それにしても、だ。人気作は出るのに母体の雑誌は先細っていくという、この構図、何かに似てい
ないか。そう、小説と文芸誌の関係だ。文芸誌の発行部数は今や数千からせいぜい数万部。少年マ
ンガ誌にも少子化など逆風が強まっているけど、まさかねえ。　　　　（宮崎健二）