$ 漫画家 と 金 について語る $

このエントリーをはてなブックマークに追加
154名無しんぼ@お腹いっぱい
手塚は漫画をせっせと描いて金を貯め、自分のアニメーションの
プロダクションを作った。それで、趣味的な実験芸術アニメーションを
作るのが本来の目的であったことになっているが、それだけでは
スタッフを食わせてはいけないのでディズニーに習ってアニメーションの
キャラクターのマーチャンダイジングを見込んで、ダンピング価格でTVに
アニメを売り込んで、競合相手を排斥しようと目論んだが、結果的には
他社の排除にはならず、テレビアニメ製作をどこもかしこもやり、
週に何本も新作アニメばテレビで放送されるという日本独自の世界的に
みても「異常な」状況が生まれた。
しばらくは羽振りもよく、特に念願のアメリカ進出も果たして、
外貨を稼いで手塚のアニメスタジオは一時的には大変に潤ったが、
もともと坊ちゃん育ちでお人よしで経営には明るくなかったのと
作家として多忙を極めて経営に気を配るには無用心すぎたのと、需要の
拡大期に不景気になるリスクを考えず楽観論で労働者を自前で抱え込み
すぎたために、一時期の特撮ブームなどとアニメの人気の冷え込み
などでスタジオの経営は左前になり、多額の負債の債務保証と引き換えに
経営陣からおろされた。(それまで相当額の自前の原稿料などをつぎ込ん
で赤字補填などをしていたにもかかわらず。)

その後すぐに、そのスタジオは借金の債務保証と引き換えの権利
の価値を狙った一部の債権筋により破産させられて(?)、結果的に
手塚にも莫大な借金返済義務がかかってきた。それは普通の個人の
感覚であれば、完全に破滅で二度と立ち直れないレベルのものであった。
かりにその時点で首をつって自殺していても不思議ではない。
(関連する出版部門の会社も倒産してしまっている。)

ところが、この非常に破滅的な状況の元で、奮起して、債権者を裏切ること
なく借金を返すべく、鬼気迫る勢いのもと、孤立無援の環境下で、漫画
雑誌に(安い価格の)原稿を多数描きつづけ、作品の内容と質で人気をもり
返して、単行本も売れて、あれだけの借金も個人の努力で無事完済する
ことができた。驚異の回復であった。(この時期の作品はアニメとの二股が
できなかったためもあり、優れたものが多い。)

すべてこれらのことは頭脳とペンにおいて努力により為されたことである。
破産からの回復の点だけとっても努力の天才と称えるに十分である。

大金を稼ぐ人気漫画家は多くいるけど、利益を更なる事業に
自己資金で投資(投機)するここまでスケールの大きい作家は
今はあまり聞かない。たとえ作品が道楽仕事だと言われたとしてもだ。

破産した時期の関連出版社を石森(当時)が経営を買い取る申し出をした
がプライドから断ったという話が伝えられているが、石森が東映系の
特撮もので設けた莫大な金で自前のスタジオなり出版社を作ろうと
したという話は聞かない。石ノ森は仮面ライダーブーム以降は、
それ以前の作品と傾向が変わって駄目になってしまったと感じる人が
多いが、その理由が金回りが良くなったためであるとすれば、
惜しいことである。漫画はやはりハングリー芸術なのかもしれない。