214 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」(1)
〜PW Comic Week 2008年1月8日号〜
(前書き)
木尾士目氏は日本のオタクカルチャーを扱った愛すべきシリーズ
「げんしけん(=現代視覚文化研究会)」の作者。
全9巻は(米国では)Del Rey Mangaから刊行されている。
同作品はオタク(熱狂的なアニメとマンガのファンたち)が集まる
大学の視覚メディア系サークルでまわし読みされている。
彼らはそこに集まっては好きなアニメ、マンガ、ゲーム、
その他の関連したことに日夜妄想をめぐらしている。
日本ではげんしけんは2つのアニメシリーズになり、
そこからスピンオフしたマンガ作品として
"くじびきアンバランス"(同じくDel Rey Mangaから刊行)も登場した。
今回のメールによるインタビューで:オタクを自称する木尾氏は
PW Comics Weekに対してオタクについて解説してくれた。
また同人誌、オタク文化、あるいはコミケ(年に2回東京で開催される
巨大なコミックフェス・販売イベント)に対する質問にも答えてくれた。
通訳にたってくれた講談社に感謝します。
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
215 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/01/09(水) 23:28:41 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (2)
〜PW Comic Week 2008年1月8日号〜
PW Comics Week:
日本語のオタクという言葉は、日本から発信され
今や世界中のマンガファンへと広がりましたが、
肝心の日本ではオタクという言葉は決して良い響きではないようです。
オタクがGeek(パソオタ)みたいに
ある種の愛情をもって扱われている米国とは違い、
日本ではオタクでない者がオタクという言葉を使う時、
変質者とか異常者みたいな使われ方をされますね。
木尾さんがマンガに登場するオタクのキャラクターたちを描くにあたって
どんなことがヒントになっていますか?
木尾氏:
ぼく自身もオタクであり、登場人物がオタクであるのは
ある意味当然のことだと思っています。
この作品(げんしけん)のねらいは、オタクをふつうの人として
描くことにありました。
さっき言った通り、オタクのこの国での扱われ方は、
ある種、異様な生き物みたいなところがあります。
ぼくは、オタクを登場させながらも
普通のオタクじゃない人たちにも
理解できるマンガをやってみたかったんです。
216 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/01/09(水) 23:38:39 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (3)
〜PW Comic Week 2008年1月8日号〜
PW Comics Week:
いま、オタク文化あるいは現代視覚文化は、
どのくらいすごいものなんでしょうか?
木尾氏:
最初からすごく難しい質問で、
ぼくはそういうことについて考えたこともありません。
ぼくにとってオタク文化-現代視覚文化ですか-というものは
純粋に個人的な趣味で、誰かと共有できるようなものなく
個人に属する経験なんです。
セックスとも違い、別に他の誰かのことを考えたり、
コミュニケーションをとったりする必要さえありません。
ですから他人にある作品を積極的に勧めたり、
読者や視聴者に安易に喜びを与えるような作品を
提供するようなことは、恥ずかしい行為だととさえ思っているんです。
217 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/01/09(水) 23:45:40 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (4)
〜PW Comic Week 2008年1月8日号〜
PW Comics Week:
オタク文化は、げんしけんが始まってから何か変わりましたか?
木尾氏:
オタク文化の存在感というものが、一般社会や文化のなかで大きくなりました。
日本では"萌え" (おおまかに言うと、特定キャラや作品に対する
熱狂的な愛情みたいなもの)は普通の言葉になりました。
ぼくの好きだったオタク文化、ある意味ぼくそのものだったものが、
世間に広がっていってしまってちょっと悲しいです。
そんなわけで、さきほどのご質問についてぼくはあまり考えたくないのです。
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
218 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/01/09(水) 23:47:37 ID:JInQ3E/w0
219 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/01/09(水) 23:49:20 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (6)
PW Comics Week:
主要キャラである荻上(自己嫌悪を抱く若い女性の同人作家)が
自分がオタクであることについて恥ずかしいと感じるように、
日本では(オタクであること)は依然として
恥ずかしいことであるように思われますが。これは正しいですか?
木尾氏:
他の人のことはわかりませんが、ぼくは恥ずかしいと思っています。
理由はさきほど申し上げた通りです。
オタク文化に対する日本の世論に大きな影響を与えたものとして、
80年代の有名な連続殺人事件があります。
マスコミの報道は犯人はオタクであったと説明し、そこを強調しました。
こうしたイメージをぬぐい去るにはたいへん長い時間を必要としましたし、
いまだにメディアオタクを変質者的なテイストでもって異様な動物でも扱うように取り上げます。
"電車男ブーム"以降、(小説・マンガ・テレビ・映画にもなった
非常に有名な作品。オタクが生まれ変わって女性とデートするという内容)、
イメージはなんだか和らいだような気もします。
オタクの男をかわいいと考える風潮も生まれてきました。
でも笑い物であり不気味な奴であると考えられている事実は変わったわけではありません。
こうした環境のなかで、オタクであることを恥ずかしいと思わずに
生きていくのは難しいと思います。
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
220 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/01/09(水) 23:51:47 ID:JInQ3E/w0
221 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/01/09(水) 23:54:58 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (8)
PW Comics Week:
げんしけんの初期のもっとも印象的なシーンとして、
みんなで最初にコミケ(Comic-Conのこと。ただしこちらは
有名マンガの二次創作物を販売するアマチュアの作家のためのもの)
へ行くエピソードがありました。
私もコミケには何度もいき、あなたの作品で描かれているように
始発電車に飛び乗り、アリアケを取り囲む行列に並んだりしたので
すごくリアルに感じました。木尾さんのコミケとの関わりを教えてください。
木尾氏:
コミケはオタクの欲望のるつぼみたいなものです。
あらゆるオタク文化がそこにあり、コミケにないものはオタク文化ではない、
とさえ言えると思います。
ぼくが初めてコミケに行ったのは、げんしけんの連載にゴーが出てからです。
読者というか消費者として行きました。
それまではほんとに行きたくなかったんです。
言葉をかえれば、行ったら何が起こるか自分でもよく分かっていたから。
行列に並び、大量のものを買いこむだろうなあと思っていました。
で、実際に行ってみると、もう完全に負けたって感じでした。
第6巻で、荻上がプンプン怒りながら買いあさるところから
転ぶところまで、あれはぜんぶ大なり小なり、ぼくの行動そのものです。