河合克敏【とめはねっ!-鈴里高校書道部-】十画

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802名無しんぼ@お腹いっぱい
七年まえ、プリンスエドワード島のとある岬。

大江母「……今夜の便で帰るわ」
大江父「もう引きとめてもムダか……」
大江母「ゆかりのこと、よろしくお願い」
大江父「二度と会わせることはできないぞ」
大江母「覚悟のうえよ。最後に10分だけ時間をちょうだい」

ゆかり「あ、ママー」
大江母「ゆっくん、こっちいらっしゃい。潮風でこんなにほっぺたが冷えて……」
ゆかり「ママ、あったかーい……どうしたの? ママ泣いてるの?」
大江母「…………」
ゆかり「パパにいじめられたの? どっか痛いの?」
大江母「……違うのよ。ゆっくん。よく聞いて」
ゆかり「?」
大江母「強い人間になるのよ。強いというのは、優しいということ」
ゆかり「……?」
大江母「わからないかしら、そうね、あれをごらんなさい」

岬のさきの波打ち際に、白い毛のおおきな獣がいた。「ワホ! ワホ!」

大江母「あれは、この島原産の珍獣、ワホリアン・ハスキー犬よ」
ゆかり「大きい! 魚をとってる!」
大江母「あの犬はトドより大きくなって白熊より強くなるけど、ホントはとても優しいの」
ゆかり「へえ〜。わかった、ゆっくん、あの犬みたいになる! ワホワホ!」
大江母「……ゆっくん、いい子ね……ううっ」
ゆかり「いつか、あの犬を飼えるといいなー!」
大江母「…………ゆっくん……ゆっくん……」
遠吠え「ワホ! ワホ! ワホ!」

ほのぼのとめはね……