海藍18

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21名無しんぼ@お腹いっぱい
あたしはいつも七瀬八重のことが羨ましかった。妬んですらいたかもしれない。
彼女はあたしが持っていないものを全部持っていた。
それはあたしには決して貰えるはずのないものだった。
でも、ときどき変な考えが浮ぶ。彼女はあたしにそれを与えてくれるかもしれない。
けど鏡を見るたびそんな考えは消えていった。そこには恐い顔をしたあたしがいた。こんなあたしに彼女が優しく微笑んでくれるはずなんてない。そう思っていた。
そのまま学校生活は淡々と過ぎていった。
そして調理実習の授業が始まった。
もともと調理実習の授業は嫌いだった。自分で料理を作ったこともないし誰かに教えてもらったこともない。そもそも食べること自体楽しいと思ったことは無かった。
けど、このときは違った。
前の週に学校を休んだあたしはまだ班が決まってなかった。明日までにどこかの班に入れてもらわなければいけない。
調理実習の班は1班4人。ちょうど七瀬の班は1人空いていた。
あとから考えればばかばかしいことだけど、そのときあたしはこれは偶然じゃないなにかだと思った。
あたしは彼女の方へ歩いていった。平静を装っていたけれど手は汗だらけで口はからからだった。
そしてせいいっぱいの勇気を振り絞って言った。
「七瀬、ちょっと顔貸して」
それが始まりだった。
今ではお昼は七瀬と一緒。デザートにあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル。
なぜなら彼女もまた、特別な存在だからです。