65 名前:奥浩哉@ガンツ ◆GANTZ [カッペ編]
まあ聞いてくれよ。家族とか大切な人とガンツ送りになると、そりゃ悲しいことだらけなんだから。
オレは初めは一人だったんだが、オレより前にガンツ部屋にきてたカップルがいたんだな。
その後、3回くらいのミッションは、一緒に生き残ってたんだ。
年も近かったから、いつも一緒に行動してた。
別に妬いたりなんてしねーよ。
そしたらオレが入って4回目くらいかな。男の方が殺られてな。奴、今際の際に「美佳を頼む、彼女を守ってやってくれ」って声を振り絞って事切れたんだ。
オレも泣いたよ。彼女はしばらく放心状態だった。
それこそ、生きる気力を失って、ミッション中も何も出来なくなった。
死んだ奴の遺志を継ぐ訳じゃないけどな。やっぱ仲のいいダチが死ぬのは見たくないよな。オレは懸命に彼女を守って星人どもを狩りまくった。
そして半年も経ったかな。彼女も次第に落ち着いた。それでも毎回あんな緊張の連続だろ?女ってのは、常に支えてくれる男を必要とするんだろうな。
極限を一緒に乗り切る同志として、やがて惹かれ合い、今度はオレと付き合うようになった。
オレは誓った。絶対彼女を死なせやしないと。
…と、頑張りすぎたんだろうな。あっという間にオレが100点たまっちまった。
ガンツに「ごくろうでち」なんて言われて、やっと気付いたよ。
オレが先に卒業しちまったら、一体誰が美佳を守るんだ?って。
記憶は確かに消されたよ。ガンツのことだけな。美佳と付き合ってる記憶は残ってた。
そしてある日、彼女の家に行ったんだ。彼女はバイトで帰りが遅いって言ってた。オレは買っておいたケーキとワインとプレゼントを持ってった。彼女の誕生日だった。
ところがなかなか彼女は帰ってこない。
ふと興味本位で室内をあさってみたんだ。そしたらクローゼットの中で見つけちまった。それは彼女のスーパースーツとXガンだった。そして思い出した。
そのまま彼女は帰ってこなかった。何日も待ったが帰ってこなかった。
ま、それだけだ。昔話に付き合わせちまって悪かったな。