「お暑うごいますねぇ」
「夏は暑いのが当たり前であります」
さわやかな朝の挨拶が、澄みきった青空にこだまする。
鋳銭司村の医院を営む村田蔵六が、今日も天使のような無垢な
デコで、村の老爺をずっこけさせていく。
汚れを知らない日本を包むのは、深く重い沈滞感。オランダの警告は
気にしないように、蛮社の徒どもはのさばらせないように、じっくり弾圧するのが幕府でのたしなみ。
もちろん、牢に火を放って逃げ去るなどといった、はしたない高野長英など存在していようはずもない。
風雲児たち。
昭和56年連載開始のこの漫画は、もとは潮出版の「少年ワールド」のために描かれたという、
伝統あるみなもと太郎の歴史ギャグマンガである。
1600年。関が原の遺恨を未だに残している恨みの多いこの薩長土佐で、神に見守られ、
会津藩から倒幕までの連続した歴史が描かれる歴史のロマン。
時代が移り変わり、将軍が家康から十回も改まった家慶の今日でさえ、
大塩が立ち上がれば温室育ちの純粋培養鳥居耀蔵が水野忠邦とつるんで保守に務める、
という仕組みが未だに残っている世情が背景である。