【なんで】ダイワハウス【なんだ？】

役所「だいたい名監督はワンテイクオッケーだよね」
ディレクター「……よく聞きます」
役所「役者もテイクワンが、もっとも集中してるから」
Ｄ「……はい」
役所「……じゃ、いきましょう!!」

役所「……へ〜。ダイワハウスってマンションもあるんだ」
Ｄ「ニュアンスは役所さんにおまかせします」
Ｄ「テイクワンよ〜い……っ！」

役所「マンションも、ダイワハウチュ」

関係者一同「……???」
女性関係者「……ちゅ？」
Ｄ「役所さん、今、ビミョ〜に、ハウスがハウチュに……」
役所「……なってない！」
ミキサー『ダイワハウチュ。ダイワハウチュ。ハウチュ。ハウチュ。』
役所「……まぁいい。もっかいやろう！」
Ｄ「ありがとうございます……！」
役所「……ハウスゥ、ハァウゥスゥ……！」
Ｄ「じゃあテイクツー、よ〜い……っ！」

役所「マンションも、ダイワハウチュ」

Ｄ「……なんでダイワハウチュなんだ……!?」

ｺﾞｰﾝ♪ｺﾞｰﾝ♪ｺﾞﾝ♪ｺﾞｺﾞｰﾝ♪
「ダイワハウス」

何故、チュ、になってしまったのか？
俺なりの分析

役所が「へ〜、ダイワハウスってマンションもあるんだ」と関心しながら
台本の紙にある“マンション”の文字に目がいってしまった。
そこへディレクターから「ニュアンスはおまかせします」という指示。
間髪入れずに「テイクワン」の指示が来たから役所は咄嗟に
「マンションもあるんだということも伝えなきゃ」
と思ってしまい、その気持ちの先走りからダイワハウスにマンションの文字が重なって
気持ちとして出る時にマンションの音はショの部分に凝縮されて、
ダイワハウスのスに取って代わってしまった。

ではテイクツーで何故わざわざもう一度言ったのか。
あれは噛んだんじゃなく、役所の意地。
ミキサーに『ダイワハウチュハウチュハウチュ』と繰り返され、
ディレクターからはまるで噛んだみたいに指摘されたのが、
役所にとっては腑に落ちず気に入らなかった。

役所としては
「だってニュアンスは俺に任せるって言っただろ
だからマンションもあることを伝えたくて言ったのに
ああ確かに噛んだように聞こえるよ
いや、聞こえるかもしれないし、それでやり直しもまぁいい
だが、俺のその意図を、気持ちをディレクターは何故理解せず、
まるでただ間違えて噛んだだけかのように俺を責めるんだ」

だから、「もっかいやろう」のあたりからすごく憮然としてるし、
最後の凛とした横顔からは役所の意地が感じられる。