アバド

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215名無しの笛の踊り
だいぶ前 >>21 あたりにアバドの演奏の時代性というような話があった。
それで思うのは80〜90年代に伸びてきた指揮者はほとんどドイツ・中欧から見ると
辺境の出身だったということだ。
クライバー,小澤,アバド,メータ,バレンボイム,サロネン,ラトル(等々)
(アバドはイタリアだがイタリアは声楽・オペラの国で交響曲の伝統はない。)

ところが世紀の変わり目あたりからドイツ・中欧出身の指揮者が急速に台頭してきた。
現在一番受けている指揮者といえば誰が見てもアーノンクールとブーレーズだろう。
(ブーレーズはフランスだがフランスは西・中欧でドイツに対抗できる唯一の国だ。)
アーノンクールはVPO, BPO, ACO, COEを制覇する勢いだ。ブーレーズはVPOとBPOを
盛んに振っている。二人のレパートリーも主流の作曲家にまで拡がっている。
アーノンクールとブーレーズがブルックナー8番を録音すると10年前に誰が予想したか。
またアーノンクールがニューイヤー・コンサートを指揮すると。
両人の解釈も正統的な方向へとシフトしつつある。

このことは冷戦終結・東西ドイツ統一以後のヨーロッパの雰囲気を反映している
のではないか。ヨーロッパにおけるドイツ語圏+フランスを中心とする政治の再編成と
文化の求心性への欲求を反映しているのではないか。
ウィーンはかつてのハプスブルク文化圏の中心地だがアーノンクールがハプスブルク家
の末裔らしいことも意味深長だ。

ベルリンももう一つの中心地だが過去のいきさつがあってむしろ国際的な方向を
選択しているように見える。カラヤンの後任にアバドを選びその後任にラトルを
選んだことがそれを示している。

今後のヨーロッパ指揮界の勢力図をこんな視点から観察するのも面白いのではないか。