ブラームスのsym.4thって大好きなんですけど。
ベイヌム、アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1958)
PhilipsのDutch Mastersシリーズの同コンビの全集からの演奏ですが、
肌理の細やかな美しい弦、張りがあって圭角のとれた金管の響き
(特にホルンが素敵)、木管群も渋さの中にも無限のニュアンスを
秘め、ひたすらオケの響きの美しさに聞き惚れていました。
解釈は恣意性のないオーソドックスなもので、全体のテンポは
やや速めですが、それでいて同コンビのブルックナーの8番や
モーツァルトの29番に特に感じられたせかせかした感じ
(けれども、あのブルックナー、なぜか好きです)がなくなって、
しっとりと落ち着いた雰囲気もあります。特に第4楽章の
第12変奏のモノローグや第15変奏の終わりのフルートの響き
もほのかな愁いを帯びた滋味あふれる音色と節回し
(バルワーザー?)はこの演奏のハイライトのひとつでしょう。
また繊細さと力強さを兼ね備えたヴィオラ以下のパートの
動きも手にとるように分かるバランスで、この速いテンポに
しっかりとした安定感を植えつけているとともに、先の
クレンペラーのスタジオ盤と比較して押し付けがましくない(笑)
構築性ももたらしています。いわば、この曲の知と情のバランス
を見事にとってみせた演奏の一つといえるのではないかと
思います。ならば中庸の、生ぬるい演奏かといえば、
そうではなく、第3楽章のテンポ・プリモや第4楽章の第16変奏
などでの、金管やティンパニの迫力がこの端正な美をたたえた
演奏に適度なメリハリをつけていて、楽音が豊かな残響を残して
消えた後に、ああ、いい演奏を聞いたなぁ、としみじみと
うれしくなった演奏でした。
補足として、全集としても、各曲・各楽章の性格の描き分けも
明快な、いい全集だと思います。ただ、1番は旧盤の熱気も
捨てがたいですね。