音楽評論家・Rabbit こと、川鍋 博 って何者?

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79うわさのRabbit本人

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■バルトーク弦楽四重奏曲小論■

総論
バルトークの弦楽四重奏曲は27歳から58歳までの30年間に亘って六曲が作曲され、
それぞれが、その時代のバルトークの作風を見事に反映している。その意味では、
この六曲を一挙に聞くことはバルトークの作風の変遷を辿ることを意味し、彼が
どのようなスタイルで作曲活動を進めていったかを知るには格好の資料ともなるだろう。

後記
久しぶりに全曲通して聴いてみた感想は、やはり弦楽四重奏曲という音楽形態の持つ
難しさと、それを克服したベートーヴェンはいかにこのジャンルにおいて傑出していたか
ということであった。バルトークはもちろん旋律、和声、リズムと言った古典音楽の三要素
を全く度返しした語法を試みながらも、結局、古典回帰をせざるを得なかったが、これは
単に回帰しただけではなく、ヘーゲルの弁証法のごとく、テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼと言う風に、一度は古典的技法すべてを否定しながら
も、それを、新規な語法と昇華
させた上で、真の意味での新古典主義とも呼べる語法の獲得に成功したと受け取る
べきであろう。さらにそこには民謡採集とその素材吟味というシェーンベルクらには
持ち合わせていない要素が加わるのである。

バルトークの音楽を特徴付けている民謡旋律は決してもとのままではない。すべて
バルトークによって、クラシック音楽形式に当てはめられるように改変されているのである。ここを誤解してはいけないと思う。民謡の精神という
ものは重視したが、形式は
クラシック音楽なのである。ここが、数多くの民俗音楽作曲化とバルトークを分かつ
広い間隙であることを、鑑賞者であるわれわれも常に銘記しておくべきことがらであり、
それなくしては、この類稀なる作曲家の作品を真の意味で享受できなくなってしまうだろう。

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