新国「ライン」について語ろう!

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172名無しの笛の踊り
>168〜170
別にヴォルフガング演出が「能」を意識した演出だなどと言ってるわけじゃないぞ。
日本にも「省略」の技法を極めた文化が存在するってことが言いたかっただけさ。

しかし、あの公演を「省略」という観点から論じた評論家は
皆無だったんじゃないかな。
肯定するにしても否定するにしても、あの演出は「省略」という視点から
論じるべきものであったと思う。
このへんで評論家どもは初めからポイントがずれていたと思えるね。

次に、その「省略」の適否について言えば、
あのような動きの少ない演出では、
演出家の音楽に対する理解力がストレートに出るってもんでね。
あの演出は、役者の動きは少なかったが、
その動きの一つ一つがスコアの細部と呼応していて、
演出家のスコアに対する読みの深さ、という点では
凄まじい説得力があったと思うね。

もう一つは、バイロイトと通常のオペラハウスとの考え方の相違も
頭に入れておく必要がある。
即ち、通常のハウスでは、演出の目的とは、観客を楽しませることに尽きるのであろうが、
バイロイトでは、音楽に対して一種の宗教的な理念があるからね。
演出についても、観客に奉仕するのではなく音楽自体に奉仕する、
というような、通常のハウスにはない独特の哲学が存在するわけだ。
残念ながら、この点に言及した評論家もいなかったな。

少なくとも、このようなバイロイトの特殊性を考慮すれば、単純に
他のハウスの演出と対比してアレコレ言うのはヤボってもんだ。
168〜170は、少し評論家に毒され気味なんじゃないかい?