メロディーの影・・ ジムノペディーに隠された・・

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101名無しの笛の踊り
おめーらホラ吹くんじゃねえ! 真相はこうだ!!

生まれてすぐに教会の前に捨てられていたサティは
孤児院で育ったが、意地の悪い少年たちのいじめに
耐えかねて、12歳の誕生日を目前にしたある日、
逃げ出してパリの雑踏に紛れ込んだ。

カネもなく身寄りもない少年がひとりで生きて行くには、
パリはあまりに冷たい大都会だった。
すきっ腹をかかえて路頭に迷う彼に残された唯一の道は
身体を売ることだけだった。

「 マッチを買ってください。 マッチを買ってください 」

ミラボー橋のたもとの暗がりで、サティはマッチ箱を
握りしめながら通りすがりの男たちに声を掛けた。
男色趣味の男がひとり近づいてきた。
サティはマッチを一本掲げて見せながら男に言った。

「 早くしてね。 このマッチが燃え尽きるまでですよ 」

彼は下着をおろして尻を差し出すと、男がそれをしやすい
ように、マッチの炎で自らの尻を照らし出した。
やがて事を終えた男が立ち去ると、投げ与えられた小銭を
拾ってパンとマッチを買うのだった。

月が移り、クリスマスになった。
サティはいつものようにマッチを握りしめてミラボー橋に
向かったが、あまりの寒さに思わずしゃがみ込み、凍える
指で何度もマッチを擦って暖をとった。

点いては消え、点いては消える小さな炎のなかに、サティは
いまだ知らぬ母の面影を見たような気がした。

ふと近くの家の窓を見上げると、部屋の中には暖炉が赤々と
燃え、美しく飾られたクリスマスツリーの側では、着飾った
家族が楽しげに微笑んでいる。
手を伸ばせば届くほど近くにありながら、そこはサティとは
無縁の世界だった。

「 ああ、ぼくはほんとうにひとりぼっちだ 」

彼の両眼からみるみる溢れ出た涙が頬をつるつると伝い、
足元に散らばったマッチの燃えさしの上に落ちて黒い跡を
いくつも残した------------

後年、サティはそのマッチの燃えさしと涙の跡を
音符に見立ててジムノペディを作った。
ジムノペディ(=裸の踊り) という自虐的なタイトルは、
少年の頃の自分自身の哀しいカリカチュアだったのだ。