「1位はマユコ・カミオ――」
29日夜、モスクワのチャイコフスキー国際コンクールの会場に審査委員長の声が響くと、拍手の中で神尾真由子さんは両手を高々と突き上げた。
期間中を振り返って「調子がいいのか悪いのか、自分では分からなくて、2日前には帰ろうとすら思った。それだけに本当にうれしい」と語る。
優勝して、師匠のバイオリニスト、ザハール・ブロン氏と抱き合った。ブロン氏からは「帰るくらいなら、どんな風に弾いたっていいじゃないか」とアドバイスされ、気持ちが切り替わった。
この夜の最終審査で、神尾さんは最後に登場。チャイコフスキーとシベリウスの二つの協奏曲で力強く情感あふれる演奏を披露した。コンクールの審査員でもあったブロン氏によると、審査員の9割がトップに推す圧勝だった。
「音楽に内在する論理と自由との結合がうまく発揮された、すばらしい演奏だった」。ブロン氏は弟子の成長に賛辞を惜しまなかった。
やはりブロンの登場だ。