『生も暗く』マーラー「大地の歌」『死も暗い』 

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624名無しの笛の踊り
伝説的存在であるというヘルデンテノール、セット・スヴァンホルム(Set Svanholm)を起用した
クレツキ指揮VSO演奏の録音(1954年ライヴ録音、ORFEO盤をようやく聴くことができたので紹介しておこう。
アルトはオラリア・ドミケス(Oralia Domiquez)。
演奏時間は以下の通り。クレツキの指揮は真に手堅いというところだろう。
I 8:23 U 9:00 V 3:06 IV 6:33 X 4:16 VI 27:39

Svanholmには1948 Bruno WALTER & NYP, Kathleen FERRIER との録音、
1953 Bruno WALTER & NYP, Elena NIKOLAIDI との録音も残されている。後者は聴いた
はずだが、あまり印象として何も残っていないが、この録音では、語気の鋭いドラマテ
ィカルな歌唱で凄みがあり、圧倒的な迫力で押してくる。先に紹介した1964年録音のカ
イルベルト盤よりも遥かに音質が良いことを考えると、きっとこの録音が最も音の状態
が良いのではないかと思える。
声量ではヴンダーリヒには及ばないものの、時に見得を切ったかのような個性的な歌
い回しも聴くことができて驚かされる。
しかし、特筆すべきは彼よりも更に個性的なオラリア・ドミケスの歌唱。メキシコ生
まれというからでもないのだろうが、イタリアオペラのアリアのような熱っぽさを伝
えてくれる歌唱で新鮮だ。芯の強い声質には強く惹かれるものがある。
スヴァンホルムであれ、ドミケスであれ、これほどの歌唱力のある歌手をこれまで
聴いたことがなかったのを取り返すべく、アンドロメダから出ている前者のアリア
集やDGの後者のそれを遅まきながら聴く機会を得たいと思っている。