『生も暗く』マーラー「大地の歌」『死も暗い』 

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593名無しの笛の踊り
松の内も過ぎたので昨年11月に出た新加坡交響樂團演奏、水藍 指揮 梁寧(mezzo) 莫華倫(tenor)の
試聴した感想を記しておこう。年を越えたので新譜に対する気遣いは要らないだろうから。
中国語による響きが新鮮で深い趣きを添えてくれるのなら良いのだが、中国語発音で歌うのは曲目によ
ってはかなり無理があり、ドイツ語に較べると美しく響かないところが多々ある。
例えば、テナー独唱の李白、宴陶家亭子(Von der Jugend)、中国語の音節の少なさを無理して伸ばして
歌うので無理やり歌っているかのように思えてしまう。逆にメッツォによる李白、採蓮曲は比較的メロ
ディに中国語がうまく乗っていて成功しているように思える。
中国語の四声にどれだけ旋律が合致しているかという問題も別にあるのだろうが、率直に言って中国語
で歌唱されることで得られた深い響きや息遣いは概して乏しいように思える。
テナーはヴンダーリヒの歌唱を意識しているのだろうが、やや力任せなところもあるが、その歌唱力は
素晴らしい。メッツォは今ひとつ声に伸びと深みに乏しいように思える。
シンガポール響は以前の投稿の指摘とは違って、アジア系の演奏家が写真を見る限り、7割以上を占め
るようだ(ビオラ、チェロ、コントラバス陣方向の写真から判断する限りの話だが)。
テンポが遅いときには弦楽器の響きが弛緩してしまうところもあり、非力は隠せないが、それでも思い
入れの深い渾身の演奏ではある。管楽器はクレンペラー&PO盤で耳にする虚無僧の奏でる響きなど微
塵もない普通の演奏。
終楽章の演奏時間は32分03秒、極めて遅く響くのも当然だが、初めて聴く中国語音節の連続に耳を奪わ
れるせいかもしれない。ewigに代わるjaahchenという響きは新鮮ではある。

新譜で無理して購入することを薦められるほどの出来ではない。安価に購入できる機会があれば試聴さ
れれば良いだろう。