1 :
名無しの笛の踊り :
2005/10/04(火) 21:59:10 ID:iNY4WMwT やれやれ、またアバドか、と僕は思った。 係員がやってきて、僕の隣りに腰を下ろし、もうアバドは大丈夫かと訊ねた。 「大丈夫です、ありがとう。ちょっと哀しくなっただけだから」と僕は言って微笑んだ。 (It's all right now, thank you . I only felt lonly, you know.) 「Well, I feel same way, same thing, once in a while. I know what you mean.」 (そういうこと私にもときどきありますよ。よくわかります) 彼女はそう言って首を振り、席から立ち上がってとても素敵な笑顔を僕に向けてくれた。 「I hope you'll have a nice concert. Auf Wiedersehen !」(良い演奏会を。さよなら) 「Auf Wiedersehen !」と僕も言った。
2 :
名無しの笛の踊り :2005/10/04(火) 22:00:36 ID:yVC1aZqE
まんこ飽きた
3 :
名無しの笛の踊り :2005/10/04(火) 22:01:39 ID:yVC1aZqE
今夜はもういい
4 :
名無しの笛の踊り :2005/10/04(火) 22:01:51 ID:YKHiNRRI
「やれやれ、3だよ」 (Well well, it's 3.)
5 :
名無しの笛の踊り :2005/10/04(火) 22:03:55 ID:YKHiNRRI
ヽ(`Д´)ノウワァァァン、ジャムマガノバカ!!
6 :
名無しの笛の踊り :2005/10/04(火) 22:08:08 ID:iNY4WMwT
メジューエワは僕をひどく混乱させた。 まさかビジュアル系ピアニスト!だったなんて。 僕は心のなかでホロヴィッツとなま暖かいビールで乾杯をした。 「ボジュモイ」「ボジュモイ」...。 なすがままに...そう、それが恋心を紛らわす方法だったのだ。
7 :
名無しの笛の踊り :2005/10/04(火) 22:34:18 ID:zmC4JUEu
I feel the same way, the same thing, Correction
8 :
名無しの笛の踊り :2005/10/04(火) 22:42:41 ID:vfFrX8Ll
前スレ落ちてたのか
9 :
名無しの笛の踊り :2005/10/05(水) 00:42:44 ID:FZxCdo65
前スレなんてあったか?
やれやれ
やれやれまた春樹か
12 :
名無しの笛の踊り :2005/10/05(水) 09:17:34 ID:zRjK8fKq
吉本ばななと村上春樹ってどう違うの?
やれやれまた糞スレか
やれやれ
村上春樹の文章って、文体を真似するのは誰でもできるんだけど、 前後の繋がりをあそこまで緊密に練るのがやっぱ難しいんだよな。
じゃむまがのほうがいい文書く。
やれやれ、またデカパイから夜の誘いを受けるのか、と僕は思った。 デカパイは夢中になると声が大きくなる。そしていつも3回行く。 娘はそろそろ両親の夜の営みに気づき始めているのかもしれない。 部下がやってきて、僕の隣りに腰を下ろし、夫婦仲を冷やかした。 「たまに抱くよ。ちょっとうんざりするけどね」と僕は言って微笑んだ。 部下は当惑した表情を僕に向けた。 「また2ちゃんねるに書かなきゃ」 僕はひとりつぶやいた。
ヤレヤレ!
やれやれ
22 :
まんこ :2005/10/08(土) 23:50:28 ID:KzC9Ljw8
今日は、寝る
やれやれ、またデカパイからクンニの誘いを受けるのか、と僕は思った。 デカパイは夢中になると臭いがきつくなる。そしていつも3回行く。 女房はそろそろ両親の夜の営みに気づき始めているのかもしれない。 女房がやってきて、僕の隣りに腰を下ろし、両親仲を冷やかした。 「たまにフェラするよ。ちょっとアゴが痛くなるけどね」と僕は言って微笑んだ。 部長は当惑した表情を僕に向けた。 「また2ちゃんねるに書かなきゃ」 娘はひとりつぶやいた。
24 :
まんこ :2005/10/10(月) 00:03:43 ID:d6mz6cnf
今から宿題ごっこだぜ。イヤだなぁ。
25 :
名無しの笛の踊り :2005/10/10(月) 23:50:18 ID:lK0Z9vaC
じゃむまがが来てるよ・・・ やれやれ
やれやれ
27 :
名無しの笛の踊り :2005/10/12(水) 23:17:19 ID:MF1SfBIb
やれやれ、 天才でないモーツァルトファンなんて・・・プ ・・・僕は彼らを見下した。
やれやれ
やれやれ、糞スレになってしまうとは… 削除依頼よろ
文字通りの「糞」スレですかwww
なんか一人だけものすごいがんばっているヤツがいるが、 スレ違いだな。
34 :
まんこ :2005/10/16(日) 00:18:07 ID:uoRf8IrJ
寝る
35 :
名無しの笛の踊り :2005/10/19(水) 23:05:01 ID:3l0uJCYk
ここもじゃむまがスレか やれやれ
最近スレを立てただけで放置する香具師が多いな
クラ板も末期症状だね。
38 :
名無しの笛の踊り :2005/10/23(日) 00:51:58 ID:Ron4HNtd
や れ や れ
そろそろアク禁にしろよコイツ
そういう問題じゃねぇだろ
42 :
名無しの笛の踊り :2005/11/08(火) 00:31:59 ID:Fx1qTtjz
やれやれ
43 :
名無しの笛の踊り :2005/11/08(火) 20:00:59 ID:MiRmR1Nf
彼は原則として死後30年以上経っていない作曲家の音楽を聴こうとしなかった。 「現代音楽を信用しないというわけじゃないよ。ただ俺は時の洗礼を受けていないものを聴いて貴重な時間を無駄に費やしたくないんだ。人生は短い。」 「永沢さんはどんな作曲家が好きなんですか?」 「バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ドビュッシー、シェーンベルク、矢代秋雄」と彼は即座に答えた。 僕は頭の中で計算してみた。「でも、矢代秋雄が死んでからまだ29年しか経っていませんよ」 「構うもんか、1年くらい」と彼は言った。「矢代秋雄くらいの立派な作家はアンダー・パーでいいんだよ」
「何処に行くの?」 「アバドを聴きに行く。行き先はわからない。」 「アバド?」 「あの馬ヅラで品のない……。」 「知ってるわよ。でも、何故アバドなんて……。」 「さあね?この世の中には我々の哲学では推し量れぬものがいっぱいある。」 彼女はテーブルに頬杖をついて考え込んだ。 「アバドは上手いの?」 「以前はね。僕がレコードを買う唯一の指揮者だった。」 「私には誰もいないわ。」 「失くさずにすむ。」
45 :
名無しの笛の踊り :2005/11/09(水) 00:25:41 ID:1SC6lowl
「ワタナベ君、あなた何枚アバド持ってるの?」 と直子がふと思いついたように小さな声で聞いた。 「チャイ5だけです」と僕は正直に答えた。 レイコさんが練習をやめてギターをはたと膝の上に落とした。 「あなたもう四十歳でしょ?いったいどういうクラヲタなのよ、それ?」 直子は何も言わずにその澄んだ目でじっと僕を見ていた
46 :
名無しの笛の踊り :2005/11/09(水) 01:09:24 ID:nIXAJXNX
「アバドなんか聴いてるよりも・・」 そういって彼女は肉幹をつかんで来た。
47 :
名無しの笛の踊り :2005/11/09(水) 07:14:18 ID:+enZ8D70
「ねえ、山崎渉さん。ところであなたの人生の行動規範っていったいどんなものなんですか?」と僕は訊いてみた。 「お前、きっと笑うよ」と彼は言った。 「笑いませんよ」と僕は言った。 「ぬるぽであることだ(^^)」 僕は笑いはしなかったけれどあやうく椅子から転げ落ちそうになった。「ぬるぽってあのぬるぽ(^^)ですか?」 「そうだよ、あのぬるぽだよ(^^)」と彼は言った。
48 :
名無しの笛の踊り :2005/11/09(水) 21:25:35 ID:nWJTqdak
これはクラヲタについての小説である。 クラヲタの研究書「わが魂のクラシック」 の序文はこのように語っている。 「あなたがクラシックから得るものは殆ど何もない。 CDやレコードに置き換えられたプライドだけだ。 失なうものは実にいっぱいある。 ベルリンフィルの歴代首席指揮者にギャラが払えるくらいのお布施と (もっともあなたにClaudio Abbadoにギャラを払う気があればのことだが)、 取り返すことのできぬ貴重な時間だ。
「雨の日にはクラヲタはいったい何をしているのかしら?」と緑が質問した。 「知らない」と僕は言った。「指揮棒振ったりとかネットショッピングなんかやってるんじゃないかな。 クラヲタってよく聴きもしないBOXセット買ったりするからさ」 「そんなにCDを買うのにどうして珍ポーコーのすごすぎる世界なんかも行ったりするの?」 「知らないな。でももともと体の構造とかがクラシックに向いてないんじゃないかな。つまり朝比奈なんかに比べてさ」 「あなた意外にいろんなこと知らないのね」と緑は言った。「Hしたい林君って、世の中のことはたいてい知ってるのかと思ってたわ」 「世界は広い」と僕は言った。
50 :
名無しの笛の踊り :2005/11/09(水) 22:34:18 ID:c5bJo0Rb
私がブラームスのこの曲に後期ロマン派のデカダンスを感じていたとしても、それはブラームスを冒涜したことにはならないだろう。 私は彼女と共に音楽を聴くというこの最初の経験が、二人の魂を一つに溶け合わせるための媒介となればよいと願っていた。 そして私は特に私の作品が彼女の心を一層私に引き寄せることを願っていた。 私は、私たちの間にあるものが遊びでなくて愛であることを今や信じ始めていたが、その愛が二十年前のように一つの信念であるとは思わなかったし、十年前のように救いであるとも最早思わなかった。
51 :
名無しの笛の踊り :2005/11/10(木) 12:03:24 ID:+myOPvWW
「・・・・・つまりベートーベン以来、音楽というのは大変人間的でしょう。 チャイコフスキイやドヴォルザークも人間に向かって語り掛ける音楽でしょう。 シベリウスはむしろ人間のいない音楽。自然が自然だけで充足している音楽、 たとえその自然の中に人間の姿が映ったとしても、それは『カレワラ』の英雄たちで、 我々の世界とはまったく関係のないところに生きている、そして彼等を魔法と呪術とで 操るのは無慈悲で残酷な自然そのものだ、それをシベリウスは書いたのだと思うんです。 つまり自然そのものが音楽の中で語り掛けてくる、その自然も我々の知っている、 或いは我々の空想するようなものじゃなくて、シベリウスの中にだけ息づいている自然なんです。 だからフィンランドはシベリウスを選んだが、シベリウスの選んだのは、フィンランドでは ない別の国、別の自然、つまり別の世界だというのが僕の感想です。」
うわなにこのスレつまんね(^ω^;)
53 :
名無しの笛の踊り :2005/11/10(木) 20:08:59 ID:65V14T62
「ねえ、アバド知ってる?」 「もちろん。」 「アバド聴きたい?」 「今、すぐに?」 「いつかもっと先によ。」 「もちろんアバド聴きたい。」 「でも私が訊ねるまでそんなこと一言だって言わなかったわ。」 「言い忘れてたんだ。」 「何を聴きたい?」 「LSOのペトルーシュカ」 彼女はコーヒーで口の中のパンを噛み下してからじっと僕の顔を見た。 「嘘つき!」と彼女は言った。 しかし彼女は間違っている。僕はひとつしか嘘をつかなかった。
「アッバードのこともっと知りたい?」 「興味はあるわ。」 「ねぇ、僕は『アッバードのこともっと知りたい?』って質問したんだよ。そんな答っていくらなんでもひどいと思わない?」 「もっと知りたい、アッバードのことを。」 「本当に?」 「本当に」 「目をそむけたくなっても?」 「そんなにひどいの?」 「ある意味ではね。」 と言って僕は顔をしかめた。
NHKの大規模な人員削減が始まった。。多くの人々は「N響解体」を叫んでいた。 結構、解体するならしてくれよ、と僕は思った。解体してバラバラにして、足で踏み つけて粉々にしてくれ。全然かまわない。そうすれば僕だってさっぱりするし、あとの ことは自分でなんとでもする。手助けが必要なら手伝ったっていい。さっさとやってくれ。
「ねえ、このあいだの日曜日あなたN響に客演したでしょう?」と緑は言った。「いろいろと考えてみたけど、あれよかったわよ、すごく」 「それはよかったといえよう」 「『それはよかったといえよう』」と緑はまた繰り返した。「あなたって本当に変わったしゃべり方するわよねえ」 「知らなかったとは言って欲しくない」
なんか面白いスレだね。 だれか古楽マニアをネタに村上春樹して欲しい。
「君はアバド聴くか?」 「聴きませんね」と僕は答えた。 「アバドは嫌いか?」 「好きも嫌いも、聴いたことないですからね」 彼は笑った。「好きも嫌いもないなんてことはなかろう。大体においてアバド聴いたことのない人間は みんなアバドのことが嫌いなんだ。決まってるんだ。正直に言って いいよ。正直な意見が聞きたい」 「好きじゃないですね、正直言って」と僕は正直に言った。 「どうして?」 「何をとっても馬鹿げているように感じられるんです」と僕は言った。「こましゃくれた過大評価のベト全 とか、何でもマンセーの狂ったアバヲタとか、気取ったヘアースタイルとか趣味の悪いシャツとか綺麗 な奥さんとか、ニンジンに釣られた馬面の揺れ方とか、そういうのがひとつひとつ気に入らないんです」 「ニンジンに釣られた馬面?」と彼は不思議そうな顔つきで聞き返した。 「ただの言い掛かりです。意味ないです。ただアバドに付随する何もかもが気にさわるというだけです。 ニンジンに釣られた馬面のことは冗談です」と僕は言った。 「君は少し変わってるのかな?」と彼は訊いた。 「変わってないです」と僕は言った。「ごく普通の人間です。ただカラヤンが好きなだけです。」
「ね、ここにいる人たちがみんなマスターベーションしてるわけ?シコシコって?」と緑はサントリーホールを見上げ ながら言った。 「たぶんね」 「男の子って女の子のことを考えながらあれやるわけ?」 「まあそうだろうね」と僕は言った。「コンマスとか音響とかラトルのピロピロ指使いのことを考えながらマスターベ ーションする男はまあいないだろうね。まあだいたいは女の子のことを考えてやるんじゃないかな」 「ラトルのピロピロ指使い?」 「たとえば、だよ」
60 :
名無しの笛の踊り :2005/12/09(金) 23:36:00 ID:yLQieakt
いるね、基地外が
61 :
まんこ :2005/12/12(月) 20:38:34 ID:2qFWYzBX
62 :
まんこ :2005/12/12(月) 20:47:19 ID:2qFWYzBX
やれやれ
やれやれわろすわろす
65 :
名無しの笛の踊り :2005/12/19(月) 23:12:17 ID:tPhobGoj
じゃむまが汚染の悪寒。
66 :
まんこ :2005/12/25(日) 23:00:26 ID:KS2Rg7rC
67 :
まんこ :2005/12/25(日) 23:00:57 ID:KS2Rg7rC
68 :
ワタナベ :2005/12/28(水) 21:56:13 ID:/othsSom
冬眠中の熊の親子でさえ寝返りをうちそうな、とても気持ち良く晴れた12月の午後だった。 僕はipodに取り込んだマーラーの第5交響曲を聴きながら学生食堂のカレーライスを食べていた。 楽曲は第3楽章の半ばに至り、ホルン奏者のソロ演奏が始まった。 僕は目を閉じて耳を澄ましていたのだと思う。すると突然すべての音楽が消滅した。いや、これは 正確な表現ではない。そして単にイヤホンを取り外されたのだと認識するまで2度の深呼吸が必要 だった。目の前には、ipodを手にした緑があきれた表情を浮かべて立っていた。 「ねぇワタナベ君、あなたいったい何を聴いているの。」 緑の質問に僕は、 「クラシックだよ。ほんの100年前の音楽さ。なにも特別な音楽じゃない。」 「ワタナベ君。あなたどうかしてるわ。」そう言うと緑は蔑んだ目で僕を見下ろし、しつけの悪い 飼い猫のようにそそくさと立ち去っていった。 その日僕は新宿の家電量販店に立ち寄り、3台目となるipodを購入した。
69 :
まんこ :2005/12/28(水) 22:58:08 ID:j56vwIDl
ウンチとおなら
>>69 頭の悪い取り巻きにチヤホヤされて
良い気になってるじゃむまが様ですか?
目でケツ噛んで、とっとと死んだらいいじゃないですか。
71 :
まんこ :2005/12/29(木) 22:47:29 ID:CKFL7EE4
ウンチ、夕方大型弾投下。おなら、ビビビビビと耳をつんざくような音。
72 :
名無しの笛の踊り :2006/01/11(水) 15:48:08 ID:NIPGHprH
やれやれ・・・
73 :
名無しの笛の踊り :2006/01/15(日) 00:17:30 ID:8U7IuVkI
鼠ならぬじゃむまがが来てるよ やれやれ。
74 :
名無しの笛の踊り :2006/01/19(木) 23:49:18 ID:YviSdPnw
こんな面白いトピあったんだ。 本当に笑わせてもらったよ。 悪くない。
今頃気付いたの? やれやれ
「ワタナベ君、あなた何組くらいのベト全聴いたの?」 と直子がふと思いついたように小さな声で聞いた。 「アバドだけです」と僕は正直に答えた。 レイコさんが練習をやめてギターをはたと膝の上に落とした。 「あなたもう55歳でしょ?いったいどういうクラオタなのよ、それ?」 直子は何も言わずにその澄んだ目でじっと僕を見ていた。
「あなたは本当にCD買う気があるの?」 彼女が真剣な目で僕を見ていた。 「どうだろう、よく分からないな。正直なところ、僕にはさしあたってCDを買わなければならない理由が無いんだ」 途端に彼女の表情が険しくなった。 「どうして?」 「鰤のモツ全箱があるからさ。半年間何も買わなくてもモツ全聴ける」 「半年が過ぎて鰤箱に飽きたらどうするの?半年後にはあなたは65歳で、年金生活者になるわ。 それに、CDラックにアバドのベト全飾っているようなあなたに一体何が聴けるっていうのよ?」 彼女の言うとおりだった。僕は彼女と目を合わさないようにビールを一口飲んだ。 「やれやれ」
78 :
名無しの笛の踊り :2006/01/29(日) 16:36:34 ID:kEiKJO9x
「まあ当分アシュケナージを聴くこともないと思うけど元気でな」と別れ際に永沢さんは言った。 「でも前にいつか言ったように、ずっと先に変な市民会館でお前に会いそうな気がするんだ」 「楽しみにしてますよ」と僕は言った。 「ところであのときとりかえっこした指揮者のことだけどな、イルジー・コウトの方が良かった」 「同感ですね」と僕は笑って言った。 「でも永沢さん、デュトワのこと大事にした方がいいですよ。 あんな良い指揮者はなかなか来ないし、あの人見かけより傷つきやすいから」 「うん、それは知ってるよ」と彼は肯いた。 「だから本当を言えばだな、アシュケナージの後を準メルクルがひきうけてくれるのがいちばん良いんだよ。」 「冗談じゃないですよ」と僕は唖然として言った。 「冗談だよ」と永沢さんは言った。 「ま、幸せになれよ。いろいろありそうだけれど、お前も相当に頑固だからなんとかうまくやれると思うよ。 ひとつ忠告していいかな、俺から」 「いいですよ」 「ほりに同情するな」と彼は言った。 「ほりに同情するのは下劣な人間のやることだ」 「覚えておきましょう」と僕は言った。 そして我々は握手をして別れた。僕はNHKホールのぬかるみへと戻っていった。
「お前がアバドのベト全を空しいと感じるなら、それはお前がまともな人間である証拠だし、 それは喜ばしいことだ」と永沢さんは言った。 「アバドで得るものなんて何もない。疲れて、自分が嫌になるだけだ。そりゃ僕だって同じだよ」 「じゃあどうしてあんなに一所懸命アバド聴くんですか?」 「それを説明するのはむずかしいな。ほら、ドストエフスキーが賭博について書いたものがあったろう? あれと同じだよ。つまりさ、可能性がまわりに充ちているときに、それをやりすごして通りすぎるというのは大変にむずかしいことなんだ。それ、わかるか?」
その目を見ると、この男はもうすぐ引退するのだということが理解できた。 アシュケナージの指揮には解釈というものがほとんど見うけられな かった。そこにあるものは、そこそこ名の知れたピアニストの弱々しい微かな痕跡だった。 それは家具やら建具やらを全部運び出されて解体されるのを待っている だけの古びた家屋のようなものだった。乾いた唇のまわりにはまるで 雑草のようにまばらに無精髭が生えていた。これほど才能を持たない 指揮者にもきちんと髭だけは生えてくるんだな、とほりは思った。
良いアシュケナージは死んだアシュケナージだけだ
「ねえ、アシュケナージさん。」としばらくの沈黙の後で、 笠原メイはふと思いついたように言った。 「私は思うんだけれど、人がN響を怖がるのは、 それが人生の終末みたいなものを思い起こさせるからじゃないかしら。 つまりさ、人はN響がいると、自分の人生が擦り切れてきつつあるように 感じるんじゃないかっていう気がするのよ。 自分が死に向かって、最後の消耗に向かって、 大きく一歩近づいたように感じるんじゃないかしら」 アシュケナージはそれについて考えて見た。 「たしかにそういう考え方もあるかもしれないね」
トメは器用な手つきでツナサンドを食べていた。 僕宛に今日も犬から鰤箱が配達されてきた。 「今日もまた鰤箱なの。」 トメはツナサンドを齧りながら呟いた。 「そうさ。鰤箱さ。ブリブリしてるよ。人間ってそんなところがある。」 「嘘吐き!」 トメはいきなりツナサンドを僕に投げつけた。
85 :
名無しの笛の踊り :2006/01/30(月) 12:40:52 ID:RhUx9XS7
いつも楽しく読んでます。 ノルウェー以前ので読みたいな。
86 :
名無しの笛の踊り :2006/01/30(月) 13:33:36 ID:YsQfHLd1
アフターダークでどうでしょう?(笑)
そんなことを考えているうちに僕は眠ってしまった。 夢の中に緑色のブーレーズが出てきた。 夢の中のブーレーズは少しも微笑ましくはなかった。闇の中でつまらなそうに指揮しているだけだった。 演奏が終わって場内が明るくなったところで僕も目覚めた。観客は申しあわせたように順番にあくびをした。 僕は売店でDGから出たバルトークのPコンをふたつ買ってきて彼女に与えた。 去年の夏から売れ残っていたような固いバルトークだった。 「ずっと寝てたの?」 「うん」と僕は言った。「面白かった?」 「すごく面白かったわよ。最後にブーレーズが爆発しちゃうの」 「へえ」
みんなうまいねえ。相当読み込んでるね。
あげ
保守
91 :
名無しの笛の踊り :2006/02/09(木) 00:26:44 ID:IqNIakb6
age
>>76-77 ここら辺あたりは、何度読んでもおかしいはずだ。
もちろんここでは、ぼくは、村上春樹のファンということになっている。
だけど、
「でも、でも、、、」と何度も心の中で繰り返した。
保守
功芳、連絡を乞う 至急!! ドルフィン・ホテル406 電話はその日のうちにかかってきた。一本は「功芳とは何を意味するのか?」という一市民からの問い合わせだった。 「友達のあだ名です」と僕は答えた。 もう一本はからかいの電話だった。 「いえよう」と電話の相手は言った。「いえよう、いえよう」 僕は電話を切った。まったく都会というのは奇妙なところだ。
95 :
名無しの笛の踊り :2006/02/12(日) 12:57:57 ID:/tI/ECdO
「ところで、あなたの未聴CD枚数は?」 「100枚」と僕は言った。 「そりゃ少ない。」と彼は表情も変えずに言った。 「実に少ない。」そしてまた耳を掻いた。
>>84 まるで現代音楽のオペラのようだ。
いい案だな、村上春樹がゲンオンおぺらのシナリオを書く。儲かるぞ!
「また、ホリエモンという緑茶を買ってきてくれよ。」 僕は、いつものようにおねだりをした。 「ホリエモン?伊右衛門でしょ、それは!ばっかじゃないの?」 直子は、メンス時のように機嫌が悪いようだ。 「あなたは、いつもそうよ!いつも肝心なことを忘れるのよ!」 直子は、かけようとしていたキース・ジャレットのCDを僕に投げつけた。
100 :
100 :2006/02/16(木) 22:24:38 ID:PkJBb1YN
ユミヨシさん、100だ。
嫌味を言うように、直子は質問した。 「この堀右衛門、確かTLDで飲んだわね。覚えている?」 「うーん、微妙にTermを取り違えているな。」僕は心の中で思った。 しかし、今度こそは大切な”アバドのベートーヴェン全集BOX”を叩き潰されないように小さな声で言った。 「伊右衛門ならTDLで飲んだ。」
164 名前:名無しの笛の踊り 本日のレス 投稿日:2006/02/16(木) 21:15:47 QyqnNi+z 直子は、ふと思った。 「みんな、音楽家としてのアバドは死んだって言うけれど、 一体アバドのどの部分が生き生きしているって言うのよ!?」 165 名前:名無しの笛の踊り 本日のレス 投稿日:2006/02/16(木) 23:09:19 ECEddDxN ↑ けだし名言だねwww
103 :
名無しの笛の踊り :2006/02/19(日) 21:16:16 ID:N2F5KF6g
あげ
104 :
名無しの笛の踊り :2006/02/22(水) 23:54:11 ID:4lsBYs/r
219 名前: 名無しの笛の踊り Mail: sage 投稿日: 06/02/22(水) 23:25:30 ID: EJ/gcYqA アバドの病状が心配だった。 気持ちを整理するのにはもっと長い時間がかかった。 まず一番最初に知人の語ったそのニュースを信じるか信じないか という問題があった。僕はそれを純粋な可能性の問題として 分析してみた。感情的な要素を見渡せる限りのフィールドから 徹底的に排除した。それはさして困難な作業ではなかった。 僕の感情はそもそもの最初から刺されたみたいに ぼんやりと麻痺していたからだ。アバドのことだ。 まだ可能性はある。と僕は思った。
105 :
名無しの笛の踊り :2006/02/28(火) 22:28:11 ID:czpuWlLN
春樹の音楽エッセイ風レス読みたいage
106 :
名無しの笛の踊り :2006/03/02(木) 23:46:11 ID:nKZMiAIf
保守
2カ月ばかり仕事を離れて、家のとある場所にこもってしこしこと鱒を書いていた。 そういうときはだいたいいつも夜明け前に起きて、午前中詰めて鱒を書き、午後はのんびり抜きネタ集めをする。 鱒を書くというのは、一種の非現実な行為なので(もちろん僕の場合は、ということですが)、ある時期日常をきっぱりと離れることがどうしても必要になる。
なかには、矢不億で売られ100万円以上の値段がついたものがあるという。 やれやれ。
>>109 ヤフ億に原稿がたくさん出て話題になったのは、2年ぐらい前だったと思う。
そのときから、もう安原から流れたって話が出てたはず。
112 :
名無しの笛の踊り :2006/03/10(金) 13:31:11 ID:aMZPqZxg
なんだよ、安っさん、小遣い稼ぎかあ。 オーディオやCDも、生原稿売った金で購入したのかな?
113 :
名無しの笛の踊り :2006/03/14(火) 07:17:46 ID:sFXtEpLh
「私たち、本当に正しい曲を聴いているの?」と彼女が訊ねた。 僕は指揮者を見上げた。アシュケナージは正しい位置にあった。しかしどことなく偽物のアシュケナージにも見えた。大きすぎるし、明るすぎる。 「どうだろうね?」と僕は言った。 「何かがずれているような気がするの」 「はじめての曲というのはそういうものなんだよ。まだうまく体がなじめないんだ」 「そのうちになじめるかしら?」 「ふうむ」と僕は言った。「なじめるとも言えるし、そうでないとも言える」
「もし君が功芳だとする」とHしたい林が言った。 「そして『いえよう』するのがすごく気持ちよくて好きだとする。でもいろんな事情で たまにしか『いえよう』できない。そうだな、ゲルギエフだとかあるいはアバドだとかによって、 『いえよう』できたり『いえよう』できなかったりするんだ。 でも『いえよう』できないと力も余るし、苛々してくる。どうして『いえよう』できないんだと腹が 立ったりする。 こういう感じわかる?」 「わかる」と彼女は言った。「いつもそんな風に感じてる」 「じゃあ話が早い。それが『すごすぎる世界』なんだ」
ワロタ
「ゲルギエフ、けっこううまかったですよ」と僕は言ってみたが誰も返事をしなかった。 まるで深い竪穴に小石を投げ込んだみたいだった。
「楽しかった?」とハツミさんが僕に訊いた。 「ゲルギエフの来日のことがですか?」 「そんな何やかやが」 「べつに楽しくはないです」と僕は言った。「ただ聴くだけです。そんな風にゲルギエフを聴いたってとくに何か楽しいことがあるわけじゃないです」 「じゃあ何故そんなもの聴くの?」 「俺が誘うからだよ」永沢さんが言った。 「私、ワタナベ君に質問してるのよ」とハツミさんがきっぱりと言った。「どうしてそんなもの聴くの?」 「ときどきすごくゲルギエフを聴きたくなるんです」と僕は言った。 「好きな指揮者がいるのなら、その人を聴いてなんとかするわけにはいかないの?」とハツミさんは少し考えてから言った。 「複雑な事情があるんです」 ハツミさんはため息をついた。
118 :
名無しの笛の踊り :2006/03/16(木) 15:44:04 ID:Q5VVpzBe
ドーナツとファックしてろ!
119 :
名無しの笛の踊り :2006/03/16(木) 15:57:09 ID:l/KGBzDN
そういえば女の子はどうして清水和音が好きなんだろう?
遊び心も教養もない Q5VVpzBe
>>120 俺は
>>118 じゃないが
>>118 は多分ヴォネガットの小説にあるセリフだと思う。
「ファックしてろ!」じゃなくて「お○○○してろい!」ってセリフだったような気がするが。
122 :
名無しの笛の踊り :2006/03/17(金) 13:03:53 ID:CjrLWgEJ
>>120 は春樹スレなのに、最新刊行書で、本人が引用した事例すら知らない
無知で探究心に欠けたニートですね。
チクワでもレイプしててくださいププ
123 :
名無しの笛の踊り :2006/03/18(土) 12:18:28 ID:kRwXx41G
「ワタナベ君、あなた生でブラームスのシンフォニー聴いたことあるの?」 と直子がふと思いついたように小さな声で聞いた。 「フルネだけです」と僕は正直に答えた。 レイコさんが練習をやめてギターをはたと膝の上に落とした。 「あなたもう37歳でしょ?いったいどういうクラオタなのよ、それ?」 直子は何も言わずにその澄んだ目でじっと僕を見ていた。 そして、オザワのCDを隠した。
124 :
名無しの笛の踊り :2006/03/18(土) 12:49:36 ID:JBDNArGn
「ラトルなんて糞くらえさ」と言い放ち、鼠はトランペットを大切に抱き抱えたまま眠りについてしまった。 やれやれ、僕はジョニ・ミッチェルの陽気な泥棒を口づさみながら鼠の部屋をでた。
125 :
名無しの笛の踊り :2006/03/19(日) 11:43:12 ID:xbr731iv
「NHK 交響楽団なんてダニさあ」鼠はそう言っておぞましそうに首を振った。 「奴らになんてなにもできやしない。音楽家面している奴らをみるとね、虫酸が走る」 鼠は虚ろな目でバーの店内を見回した後、カウンターにうつ伏せたまま寝てしまった。 やれやれ、僕はジェイに勘定支払い外にでた。 家に帰る途中ずっと口笛を吹いていた。それは何処かで聴いた事のあるメロディーだったが、 なかなか浮かんではこなかった。ずっと昔の唄だ。僕は海岸通りに車を停め、 暗い夜の海を眺めながらなんとか曲を思い出そうと努力してみた。 それは「スカトロジー・カノン」だった。こんな歌詞だった思う。 「おおーバカのマルティノン、お前はなんてバカなんだ、俺様のケツを舐めろよ」 確かに良い時代だったのかもしれない。
126 :
名無しの笛の踊り :2006/03/19(日) 12:19:49 ID:HOBfRxK7
「ワタナベ君、あなた生で東響を聴いたことあるの?」 と直子がふと思いついたように小さな声で聞いた。 「フルネのラスト・コンサートだけです」と僕は正直に答えた。 レイコさんが練習をやめてギターをはたと膝の上に落とした。 「あなたもう37歳でしょ?いったいどういうクラオタなのよ、それ?」 直子は何も言わずにその澄んだ目でじっと僕を見ていた。 しかし、手許では、虚教授の本をもてあましていることを見逃さなかった。
127 :
名無しの笛の踊り :2006/03/26(日) 00:26:34 ID:lpws3fld
128 :
名無しの笛の踊り :2006/04/06(木) 21:29:13 ID:byopzBCl
129 :
サリンジャー :2006/04/07(金) 00:19:41 ID:5xuoubgB
日本音楽コンクールで1位になった人の、みんながみんな等しく順調な その後を歩んだわけではないみたいだけど、中には今日に至るまで変わ らず素晴らしい活躍を続けてきた人もけっして少なくはないようです。 現時点で活躍著しい人や売出し中の若手も、この先どうなっていくの か、楽しみでもあり不安でもあります。下表には、既に一線を退いてし まった人も大勢含まれていますが、いずれも過去に一時代を築いた素晴 らしい人達です。 渡辺玲子 伊原直子 宮田大 中村紘子 山本正治 市原多郎 諏訪内晶子 藤井香織 堤剛 釜洞祐子 藤田晴子 高橋敦 伊藤京子 宮村和宏 仲道郁代 江口有香 三原剛 澤村康恵 戸田弥生 原田禎夫 木村俊光 黒沼ユリ子 澤畑恵美 野島稔 山崎伸子 高木綾子 栗林朋子 海老彰子 上村昇 小谷口直子 松浦豊明 勝部太 金昌国 向山佳絵子 潮田益子 関山幸弘 二宮裕子 安田謙一郎 柳川守 安永徹 佐橋美紀 小山裕幾 米元響子 長谷部一郎 阿部麿 野原みどり 霧生吉秀 神谷郁代 福島明也 栗林義信 田部京子 藤原真理 江藤俊哉 森川栄子 竹澤恭子 遠藤真理、、、
130 :
名無しの笛の踊り :2006/04/29(土) 00:36:44 ID:2Kxvngdu
ここのスレおもしろいねえ(但しマルチの129を除く)。 1人、真剣に書いてる人がいるけど、その人 才能あるよ。 久しぶりに腹かかえて笑うた、どうかやめないで続けてくれ!(喝采)
A定期公演で僕らは黙ってラヴェルの『ダフニスとクロエ』を演奏していた。 時々僕は指揮棒が手に刺さらないように気をつけていたけれど、それを別にすればただ沈黙が続いた。 ほりは顔を背けるようにしてじっと外を見ていたし、僕の方もとくに言うべきことはなかった。 五分ばかり僕はそのまま指揮を続けた。でもささやかな予感がした。 頭の中を音のない弾丸のように素早くさっとその予感がよぎった。 予感には小さな字で「演奏をどこかで止めた方がいい」と書いてあったような気がした。
「海外オケなんて嫌というほどいっぱい聴いた。もう要らない。何聴いたって同じだよ。やることは同じだもの。」 と五反田君は少しあとで言った。「アシュケナージがいい。ねえ、大変なことを君に打ち明ける。 僕が聴きたいのはN響だけだ。」 僕はぱちっと指を鳴らした。「すごい。まるで神の言葉みたいだね。光り輝いている。 記者会見をやるべきだね。そして『私が聴きたいのはN響だけです』って宣言するんだ。 みんな感動する。レコ芸に推薦されるかもしれない」 「いやレコード・アカデミー賞だってもらえるんじゃないかな。なにしろ『私が聴きたいのはN響だけです』って 世界に向かって宣言するんだぞ。普通の人間にちょっと出来ることじゃない」 「しかしレコード・アカデミー賞を受賞すると、レコ芸に載ってしまうことになる」 「なんだって載せればいい。知らなかったとは言ってほしくない」 「素晴らしい。まさに命を賭けたあそびだ」 「受賞の挨拶を宇野功芳の前でやる」と五反田君は言った。「皆様、私が聴きたいのはN響だけです、ってね。 感動の極みだ。」 僕らはまた黙りこんで、しばらくそれぞれN響について考えていた。N響について考えるべきことがいっぱいあった。 レヴァインさんをN響に招待するときは若くてぴりりとした美しい男の子を用意しておかなくちゃな、と僕は思った。 「でも、君は賞なんて何ももらえないかもしれない」と僕は言った。「変質者だと思われるだけかもしれない」
133 :
名無しの笛の踊り :2006/04/29(土) 20:14:48 ID:Fy4jYzPn
ワロスwww やっぱ毒入りはいいなあ
久々に来てるね。相変わらずワロスw
良スレage
136 :
名無しの笛の踊り :2006/05/07(日) 20:33:06 ID:xHtBjO1Z
「クラウディオ・アバドの話をしよう」と僕は言った。「どうも気にかかるんだ。」 二人は肯いた。 「何故死にかけているんだろう。」 「いろんなものを録音しすぎたのね、きっと。」 「パンクしちゃったのよ。」 僕は左手にベートーヴェンの全集を持ち、右手にチャイコフスキーの全集を持ってしばらく考え込んだ。 「どうすればいいと思う?」 二人は顔を見合わせて首を振った。「もうどうしようもないのよ。」 「土に還るのよ。」 「脳腫瘍のオットー・クレンペラーを見たことある?」 「いや。」と僕は言った。 「体の隅々から石のように固くなりはじめるの。長い時間をかけてね。最後に指揮棒が停まるの。」 僕はため息をついた。「ヤフオクに出品させたくはない。」 「気持ちはわかるわ。」と一人が言った。「でもきっとあなたには荷が重すぎたのよ。」
年が明けた二月、アシュケナージは消えた。NHKホールはきれいに取り壊され、 翌日にはそれはオールナイト営業のブック・オフにかわっていた。 僕はおそろしく安いデュトワのオネゲル全集をレジに持っていき、 NHKホールについて何か知らないか、と店員に訊ねてみた。 彼女は胡散臭そうに僕とCDを眺めた。 「NHKホール?」 「少し前までここにあったやつさ。」 「知らないわ。」彼女は眠そうに首を振った。一ヵ月前のことなんて誰もおぼえちゃいない。 そんな街なのだ。 僕は暗い心を抱えたまま街を歩きまわった。音楽監督のウラディーミル・アシュケナージ、 誰もその行方は知らなかった。 そして僕はN響の定期会員をやめた。しかるべき時がやってきて、誰もがN響の定期会員をやめる。 ただそれだけのことだ。
138 :
名無しの笛の踊り :2006/05/08(月) 16:29:29 ID:fbywFcHV
ゲヒヒヒヒ 村上スレはここに極まりました・・・
オットー・クレンペラー、連絡を乞う 至急!! ドルフィン・ホテル406 電話はその日のうちにかかってきた。一本は「それがベートーヴェンと一体何の関係があるのかね?」という 一市民からの問い合わせだった。 もう一本はからかいの電話だった。 「カラヤン、悪くない、悪くないぞ」と電話の相手は言った。「みんなが言うほど悪くない。」 僕は電話を切った。まったく都会というのは奇妙なところだ。
たまらんのうw
ワロスww
142 :
名無しの笛の踊り :2006/05/14(日) 00:43:06 ID:Io62680/
ほしゅ
クラウディオアバドにとって時の流れが均質さを少しずつ失い始めたのは三年ばかり前のことだった。 ベルリンフィル常任をやめた春だ。 アバドがベルリンフィルを去ったのにはもちろんいくつかの理由があった。 そのいくつかの理由がフクザツに絡み合ったままある温度に達したとき 音を立ててヒューズが飛んだ。 そしてあるものは残り、あるものは弾き飛ばされ、あるものは死んだ。 BPOをやめた理由は誰にも説明しなかった。きちんと説明するには 五時間はかかるだろう。それにもし誰か一人に説明すれば 他のみんなも聞きたがるかもしれない。そのうち世界中に向かって説明する羽目に なるかもしれない。そう考えただけでアバドは心のそこからうんざりした。 「フィルハーモニーのハンスフォンビューローの肖像画が気に入らなかったんだ」 どうしてもなんらかの説明を加えないといけないわけにはいかぬ折にはそういった。 実際にフィルハーモニーのロビーの肖像画を眺めにいった昭和女子大の女の子もいた。 実際にそれほど悪くなかったわ、彼女は言った。 少しばかり美化されていたけど・・・・・。好みの問題さ、とアバドは答えた。
双子の一人は紙袋からアバドのチャイコフスキー全集を取り出して僕に渡した。 チャイ全は雨の中ではいつもより余計にみすぼらしく見えた。 「何かお祈りの文句を言って。」 「お祈り?」僕は驚いて叫んだ。 「お葬式だもの、お祈りは要るわ。」 「気づかなかった。」と僕は言った。「実は手持ちのものがひとつもないんだ。」 「なんだっていいの。」 「形式だけよ。」 僕は頭から爪先までぐっしょり雨に濡れながら適当な文句を捜した。 双子は心配そうに僕とチャイ全を交互に眺めた。 「音楽の義務は、」と僕はマズアを引用した。「誤解によって生じた幻想を除去することにある。 …アバドのチャイコフスキー全集よ、貯水池の底に安らかに眠れ。」 「投げて。」 「ん?」 「チャイ全よ。」 僕は右腕を思い切りバック・スイングさせてから、チャイ全を四十五度の角度で力いっぱい放り投げた。 チャイ全は雨の中を見事な弧を描いて飛び、水面を打った。 そして波紋がゆっくりと広がり、僕たちの足もとにまでやってきた。 「素晴らしいお祈りだったわ。」 「あなたが作ったの?」 「もちろん」と僕は言った。 「池はどのくらい深いの?」 「恐ろしく深い。」と僕は答えた。 「ベートーヴェンの全集もあるの?」 「どんな池にも必ずアバドのベト全はあるさ。」 池の底のチャイコフスキー全集は、遠くから眺めるときっと品の良い記念碑のように見えたことだろう。
アバドであるという状況がどのようなものであるのかは 僕の想像力を遥かに超えた問題である。 しかしもし僕がアバドで、アバドと僕の何もかもが同じだったとすれば、 きっと僕は恐ろしい混乱に陥ったと思う。 恐らくアバド自身に何かしらの問題があるためかもしれない。 もっともアバドは至極平穏に暮らしていたし、 僕がアバドをゲルギエフを聴き分けることができないのに気づくとひどく驚き、 そして腹さえ立てた。 「だって全然違うじゃない。」 「まるで別人よ。」 僕は何も言わずに肩をすくめた。
146 :
名無しの笛の踊り :2006/05/16(火) 23:34:23 ID:0TPY04eG
「どんな池にも必ずアバドのベト全はあるさ。」 ・・・って、く〜っ 最高! これだけで40秒笑った。
147 :
名無しの笛の踊り :2006/05/17(水) 01:57:57 ID:Vfcb5PRS
良スレ 春樹の音楽評論風できたらお願いします
「そろそろアバドを聴こうと思ってたんだ。ぱりっとした調教済みのLSOと 剃刀の刃のようなピリッとしたリズムを持った春祭をソニーのラジカセを使って聴く。 DG録音にはAIWAのHP-X122ヘッドフォンがあうんだ。 うまくいくとベイヌム/ACOの演奏を最新の録音で聴いているのと近い感じになる。 うまくいかないこともある。しかし目標があり、試行錯誤があって物事は初めて成し遂げられる」 「馬鹿みたい」 「でも悪くない」と僕は言った。「嘘だと思ったら、蜂蜜に訊いてもいい。しろつめ草に訊いてもいい。 本当に悪くないんだ」 「何よ、それ?蜂蜜としろつめ草というのは?」 「たとえだよ」と僕は言った。 「やれやれ」とユキはため息まじりに言った。「あなた、もう少し大人になれば。 もう三十四でしょう?私から見てもちょっと馬鹿みたいよ」
150 :
名無しの笛の踊り :2006/05/29(月) 04:01:33 ID:SxUS4Cw7
春樹くんのせいでアバド/LSOの「泥棒かささぎ」序曲を注文しちゃったよage
151 :
名無しの笛の踊り :2006/05/30(火) 02:42:00 ID:lha7h+l3
春樹のシューベルト評はいいですね ブレンデルとアシュケはダメみたい イストミンがええらしい
春樹と龍の区別がつかんのだが
154 :
名無しの笛の踊り :2006/06/14(水) 22:12:42 ID:zGrz4cN5
<あるノーベル文学賞有力候補作家の言葉> >ローマのサンタ・チェチリア・オーケストラをシノーポリが指揮した時に、 >演奏が退屈だといって、三分の一くらい客が >途中で席を立って帰っちゃったこと。 >現代音楽と、エルガーをやったんですが、 >これは僕もけっこう退屈でした。 >でも日本でシノーポリがコンサートを開いたら、 >誰も帰りませんよね。 >いくら退屈でも(料金も高いし)。 >その時は僕もさすがに感心しました。 >イタリア人、音楽と食い物に関しては厳しいよなあと。 >日本でもときどきブーイングする人がいますが、 >そんなことする暇があったら、黙って途中で帰れよな、とか思います。 >あれはた迷惑ですよね。
「昨夜はローマでコンサートに行きました。 シーズン・オフだから音楽にはとくに期待していなかったのだけれど、 ひとつだけとても魅力的なコンサートに出会えました。 マルタ・アルゲリッチがリストの一番のコンチェルトを弾いたのです。 私の大好きな曲です。 指揮はジュゼッペ・シノーポリ。さすがにみごとな演奏でした。 背筋がぴんと伸びていて、視野の広い、流麗な音楽。 でもわたしの好みからいうと、いささか立派すぎるかもしれない。 わたしにとってはこの曲は、もう少し胡散臭い 、大がかりな村祭りみたいな演奏の方がぴたりとくるのです。 むずかしいこと抜きで、とにかくわくわくする感じが好きなのです。・・・」
156 :
名無しの笛の踊り :2006/06/15(木) 22:23:01 ID:WpiWagGw
157 :
名無しの笛の踊り :2006/06/16(金) 02:32:06 ID:JlPMJw+V
遠い太鼓じゃないの?
や、スプートニク。最近読んだから間違いない。
スプーのえかきうた
160 :
名無しの笛の踊り :
2006/06/19(月) 23:05:40 ID:Ts82qrkM 家畜人ヤプー