128 :
名無しの笛の踊り:2005/05/07(土) 18:18:55 ID:dsmjREf4
オヤジは奈々の方をチラッ見やってから
『良さそうな娘さんじゃないか』
『・・・かな』
『おとうさんの昔からの知り合いが大阪にに新しい店を出すんだ、
このことはおかあさんにはとっくに話してる』
『うん・・・うまく言ってるの?おかあさんと』
『もちろん』
『そう、なら安心したよ。離婚だけは認めないからさ』
『これっぽっちも考えたこと無いな。その店の立ち上げから2年間の期限付きで
全て任されることになってね、条件もいいし・・・どうだろ?』
129 :
名無しの笛の踊り:2005/05/07(土) 18:23:43 ID:dsmjREf4
俺は嬉しかった。
『もう一花咲かせてみたいんだ。大阪は食文化の街だし、厳しいと思うが』
『正直、俺さ疑っていたんだよ』
『言ったら2ヶ月に1回しか帰れ・・・薫!聞いてるか?何を疑う?』
『聞いてるさ、もう疑いは無いよ』
オヤジは次々と俺たちの将来のことや、過去の失敗からの教訓をも話してくれた。
『俺、応援するよ、家のことは任せてよ、ところでいつ行くの?』
130 :
名無しの笛の踊り:2005/05/07(土) 19:04:14 ID:dsmjREf4
『まず、なによりも美ちゃんが元気に退院すること。それと中学が決まったらだ』
『じゃ、春?』
『その頃だね。そうそう美ちゃん受験の準備は済ませたから』
『ありがとう』
『ほんとに薫のとこの中学だけでいいのか?』
『それしか行きたくないみたいだよ。問題はそれまでの勉強だよね』
『病室でもできるさ』と言った後で奈々に声を掛けた。
『お腹すいてないかな?美味いもの作るけど』
『じゃ、俺の好きなお好み焼きが食いたい、なっ、奈々?』
奈々は笑いをこらえながら頷いていた。
131 :
名無しの笛の踊り:2005/05/07(土) 19:07:06 ID:dsmjREf4
『奈々ちゃんか、変なとこあるけど、薫のことよろしくね』
調理場に向かうオヤジの背中に対して
『どうかな、玉入れやってる俺に近づいてきただけの関係だし』
その俺の言葉は耳に届かなかったようだった。
『もう!そればっかだし』
俺は奈々に睨まれてしまった。
132 :
名無しの笛の踊り:2005/05/07(土) 19:08:36 ID:dsmjREf4
満足した気分で二人とも店を出た。
『いいなあ、薫くんのおとうさんって』
『くん付けかよ!』
『夢も失敗も子供に話せるなんて・・・うちの親なんか、いいとこしか
見せようとしないし、綺麗事ばっか。それが妙に余裕の無さを感じ
ちゃって、苛つくよ。あんた達は全知全能かよって言いたくなる』
『へーえ、そうか』といいつつも俺は、奈々のスタイルを観察していた。
『ほんとに賢い人って、自分の失敗談を晒して、どうそのミスをクリア
してきたかを説明できる人だと思うけど、思わない?』
『結構、考えてんだ』
133 :
名無しの笛の踊り:2005/05/07(土) 19:10:06 ID:dsmjREf4
初めてのオンナか。
少なくとも、最初に抱いた奈々のイメージは少し無くなった。
棄てる価値はありそうだった。
『明日、棄ててみるか・・・いや、トライだな』
『えっ!なんの事?』
『明日さ、昼で学校抜けてさ、映画観に行かないか?』
『抜けるのは余裕だけど、どんな映画?』
『決めてないけどね』
134 :
名無しの笛の踊り:2005/05/07(土) 19:13:18 ID:dsmjREf4
もう一度、奈々の体を舐めるようにして眺めた。
妄想に耽った。激しい欲情の血が体中を熱くした。
股間からドロッとした液体が滲み出ていることに気付いた。
あの一夜限りのおかあさんの生々しい肉体が鮮やかに蘇った。
この間、ブランコで半ば強引にキスしてもとりたてて感じるものは
なかったのに。いったいどうしたっていうのだ。
奈々のイメージが違っていた事を知った瞬間に血が騒いだ。
奈々とは4時30分に駅前で別れて、急いで美有の病院へと走った。
135 :
名無しの笛の踊り:2005/05/07(土) 22:57:52 ID:dsmjREf4
病室に入ったら、美有は顔を隠すようにして教科書を見ていた。
しかし、俺の気配を感じたのか、その本を急いで横に置き、こちらを見るなり
愛嬌たっぷりの笑顔で舌を出した。おかあさんもいた。
美有の隣の女の子は、真樹という名前だった。
モーニング娘を脱退した後藤真希と同じ名前で、漢字だけが違っていた。
その子の横にも母親が座っていた。
この病室の匂い、雰囲気は、最初の2、3日は馴染めなかったが、
今はここに来るのが楽しみでならなかった。
日増しに元気を取り戻してゆく美有の姿が、なによりも楽しみでならない。
136 :
名無しの笛の踊り:2005/05/07(土) 23:00:27 ID:dsmjREf4
真樹と目が合った。真樹とは何度も会話していたので、軽く会釈
したら、ピースサインで応えてくれた。
美有よりひとつ年上の中学1年だった。美有は可愛い部類だが、真樹は
美形といっても良いくらいの気品ある美少女だった。
特徴は声質にあった。耳障りの良いトーンと、透明感ある響きに、
思わず引き込まれそうになるくらいだ。
ただひとつ気になることがあった。真樹の病気に関する情報が一切、
わからないのだ。詮索趣味を持っているわけではないが、
下世話といわれようが、やはり美しい少女の病名は知りたいものだ。
137 :
名無しの笛の踊り:2005/05/11(水) 10:29:57 ID:kXA/LA1V
市川と高橋は本当ゴミですよね。
138 :
名無しの笛の踊り:2005/05/13(金) 08:22:32 ID:FL2iM1p0
139 :
名無しの笛の踊り:2005/05/16(月) 10:48:39 ID:FhVTMdjw
age
140 :
名無しの笛の踊り:2005/05/20(金) 00:42:15 ID:nGxgU7V6
age
142 :
名無しの笛の踊り:2005/05/30(月) 10:46:12 ID:KY6QJs5A
もう小説おわったのか?
抒情
144 :
名無しの笛の踊り:2005/06/08(水) 23:12:34 ID:81k7xEdr
おかあさんが一度、そのことを聞いたらしいが、真樹は、
(よくわかんない病気なんだって)と答えたという。
おかあさんも真樹の母親と談話室で話していたとき、それとなく聞いてみたら
やはり、真樹と同じ返事をしたらしい。
地方の小都市の病院から紹介状を携えてこの病院に転院してきて、
もうすぐ2ヶ月になるらしい。
美有と真樹は姉妹のように仲良くなっていた。まだ身動きのとれない美有の
世話をしてくれているみたいだった。
驚いたのは、その3年後だった。
真樹がTVのうた番組に登場し、アイドルグループの一員として
歌い踊っている姿で出会うなんて。まさに歓喜の衝撃だった。
あの出来事があったから・・・よけいに嬉しくてならない。
145 :
名無しの笛の踊り:2005/06/08(水) 23:16:27 ID:81k7xEdr
ちょうど夕食が運ばれるころにおかあさんは家に帰り、仕事に行く。
おかあさんが居るときは自分でご飯たべてるらしいが、なぜか俺しか
居ないときは、(まだたべられないの・・・)とか言って健気な表情で
訴えるから、食べさせてやってる。
それを見て真樹はいつも笑いを堪えながら食事をしている。
『お兄ちゃん、もし、受験までにひとりで歩けなかったら失格なの?』
『そんなことはないさ。松葉杖でも車椅子でも自力で受験できれば問題ないよ』
『だいじょうぶかなあ』
『うん、たしかに俺みたいに高校から入るやつより、中学入試の方が
受験生の質が高いみたいなんだ。つまり合格圏内の生徒ばかりが受験するからね。
でも、美有なら合格できるよ、絶対にさ』
俺がこの病室に入る前は必ずケータイの電源をOFFにしている。
相変わらず頻繁にメールが奈々から入ってくるから、美有の前では
ブロックしておく必要があった。
大怪我をしてしまったのも、俺が何気なく発してしまった、カノジョに
対し、美有の心の中はわからないが、過剰に反応してしまったわけだし。
7時近くになると決まって手をつながされる。
『美有ちゃんって、甘えん坊さんだったんだあ』
真樹はそういっていつも冷やかす。
『真樹ちゃんも手をつなぎたい?おにいちゃんと・・・やっぱり、ダメ!』
病室を出るとき、真樹にもおやすみの挨拶をした。
美有に負けないくらいの、いやそれ以上の瞳の輝きと、憂いを帯びた横顔に、
正直、ちょっとドキッとしてしまった。
146 :
名無しの笛の踊り:2005/06/08(水) 23:25:44 ID:81k7xEdr
その夜、珍しく俺は遅くまで勉強してしまった。
何かに集中したかった。勉強でなくてもよかった。たまたま好きな英語が
一番集中できたに過ぎなかっただけのこと。
おかあさんが帰宅し、シャワーに入っているとき、オヤジも帰ってきた。
しばらくしてオヤジが俺の部屋に入ってきた。
『大学には進むだろ?』
『絞ってないけど、外大とか考えてるけど・・・なんともいえないけどね』
オヤジが持ってきたバッグから中身を取り出し始めた。
それはオヤジの昔からの趣味だった。DOMKEのバッグにVelbonの三脚が
目の前に置かれた。バッグには何が入っているかほぼわかっていた。
ローライとペンタックス、それにそのレンズ数本が納まっているはずだ。
『デジタルならよかったんだろうけど、まあ使ってくれ』
前に商売で失敗したときも絶対に手放さなかった物だった。
ただ、この3年あまりこのカメラを手にするオヤジは記憶がなかった。
『どうしてさ?』
『あっちに引っ越したらもう使うこともなさそうだし、薫に使ってもらおうと
思ってね』
『ふーん、もう準備してるんだ?荷物とか』
『ぼちぼちだけどな』
なんだか妙な間を感じた。それを振り払うように俺は言った。
『大事に使うよ・・・ひょっとして趣味になったりして』
147 :
名無しの笛の踊り:2005/06/08(水) 23:29:04 ID:81k7xEdr
翌日、俺と奈々は昼休みで早退した。奈々は渋谷あたりの映画館に行く
ものと思っていたようだった。
だが、俺は上野を選んだ。別に上野でなくたってよかった。
馴染んだ渋谷を避けたかっただけのことだ。
儀式、他愛無いことといえばそれまでのこと。達成できるかどうかは
わからない。俺なりのこだわりでもって、棄てたい。
あっさりと、棄てたい。さっさと次のステージを体感したい。
それだけだ。奈々を好きかどうか問われたら、好きと答える。
ただし、どれほど好きなのかがわからない。
アメ横の裏通りのファーストフード店に入って、昼食を摂った。
俺と奈々は向き合って座った。
『なに観るの?』と奈々。
『決めてないけど、ロードショーは遠慮したいな』
『なにあったっけ』
『名画座みたいなの上野にあるよね、少々古びた造りでさ、人気もないような』
『なにそれ?』
俺は奈々の両膝に自分の膝を当て、その間に割り込んだ。僅かに開いた膝を
さらに膝で広げた。抵抗はまだなかった。
『つまり映画の館に潜りたいってわけ』と俺は答えた。
『おもしろいような、つまんないような』
奈々の顔を見つめた。左右にその視線が泳いだ。その視線を追った。
そして、視線を捕らえた。『キスしたい・・・すごく』
148 :
名無しの笛の踊り:2005/06/08(水) 23:31:06 ID:81k7xEdr
捕らえた視線がテーブルに落ちた。
『奈々のこと好きだから、キスしたい』
『・・・うん』
『ここでだ』
『うそ、やだ』
『する』俺は腰を浮かせ奈々の唇に顔を近づけて、キスをした。
3秒、4秒、5秒
奈々の唇が逃げた。
『見られてるって』
俺は、もう一度、キスをした。15秒。長く世間に見せ付けた。
『やばいよ、見られたよ』
『平気、平気、だって、ここ上野じゃん』
149 :
名無しの笛の踊り:2005/06/08(水) 23:36:17 ID:81k7xEdr
「情報が変です」だとさ・・・
150 :
名無しの笛の踊り:2005/06/09(木) 00:03:21 ID:sVWyXK8+
店を出たら冷たい雨が降っていた。僅かにみぞれ混じりだった。
奈々の冷たくなった手を掴み、その手を俺のズボンのポケットに入れた。
剥き出しの太ももが部分的に赤みを帯びていた。
歩きながら、棄てるプロセスを思い描いた。外気なんてお構いなしの
興奮を覚えた。
雑多な人種が一番多い上野。すれ違うオッサン達が俺たちを見てゆく。
最も、見てるのは奈々であり、奈々の制服のミニから晒された肉付きの
いい白い大腿部に違いない。
それだけ気を惹く容姿を備えている。
膨らみ始めた俺の陰部に奈々の手をそこへずらし、触れさせた。
黙っていた。指が触れていることを自覚しているくせに。
探していた映画館はあっさりと見つかった。
《ウォール街》を上映していた。なんの映画だろうといいのだ。
『これ観たかったんだ、入ろ!』
『うん、寒いから入りたいよ』
イーメージを裏切らない館だった。暖房が全身の緊張を解し、
血液の循環がさらに活発になるのを感じた。
薄暗い館内。まばらな客。
カップルはあまり居なかった。一人が多かった。
みんな申し合わせたかのように散って座っていた。
151 :
名無しの笛の踊り:2005/06/09(木) 00:05:07 ID:sVWyXK8+
《ウォール街》は20分前に上映していた。
『どこに座るの?』
『座りたくないな。こうゆう映画館はうしろで立っているのが粋なんだぜ』
『ええ!立つの?』
『疲れたらさ、後で座ろうよ。空席だらけだし』
俺たちは一番うしろの右端に入った。斜めうしろの扉が開かれたとき、
その扉で目隠しになる位置を選んだ。
木製の長く太い手すりが程よい高さだった。
『あったかーい!』奈々も暖かさで表情が和らぎ、いつもの笑顔に戻った。
しばらくスクリーンを観ていた。俺たちは体が触れ合うようにしていた。
ここでも奈々の手を取り、俺のポケットに突っ込んだ。
時々、触れる奈々の手。俺は遠慮せずに、さらに陰部の形がわかるように接触させた。
『・・・もう・・・ったら』
スクリーンを見ながら奈々は俺の悪戯に多少抵抗した。
『ぶっちゃけ、奈々さ、やったことある?』
ダイレクトに聞いてみた。あるかないかが、重要だった。
万が一、ないなんて奇跡を言おうものなら、この計画は中止するつもりだった。
『答えなきゃいけない?』
『あるなしだけだよ、知りたいのは』
『・・・じゃ、ある』
『わかった。もう聞かないよ』
『どうしてそんなこと聞いたの?』
『奈々がスキだからだろ』
152 :
名無しの笛の踊り:2005/06/09(木) 00:07:03 ID:sVWyXK8+
間違いなく、これから棄てられる。確信を得た。
と同時に興奮が極度に達した。オンナの体を触りたい。
もう誰も止められない。いま奈々の体を貪ってやる。
奈々の横顔をドキドキしながら見つめた。
『プラトーンのチャリー・シーンの方が好きだな』
『比較できないよ。プラトーン観てないし』
奈々のロングの茶髪に指を潜らせ、耳に触れた。耳たぶをつまんだ。
隠れていた耳に内緒話をするように、俺は顔を近づけた。
『奈々、俺のことどう思ってる?』
『嫌いじゃないよ。だから一緒してるし・・・うーん、スキかな』
『俺、スキだよ。奈々がほしい、奈々の全てがほしいんだ』
奈々の耳に舌を這わせ愛撫した。
『くすぐっ・・・』
ポケットの中の手を抜き、屹立した陰部をしっかりと握らせた。
俺の右手を奈々の腰に回し、見事なくびれを確認した。
耳から頬を愛撫し、奈々の唇を捉えた。唇が重なり、互いの舌が絡み合った。
受身だった奈々の舌が徐々に絡んできた。熱い唾液が混ざり合った。
口端からその唾液が滴った。
公園で初めてキスしたときとは明らかに違う匂いがした。あのときはオンナの
匂いはしなかった。
左手が白いブラウスの胸元をまさぐった。ブラ越しの乳房に苛点いた。
右手でブラのホックを手こずりながら外した。
奈々の頭が左右に振られた。奈々は胸を押さえた。
その邪魔な手を払いのけ、そこから離した。
153 :
名無しの笛の踊り:2005/06/09(木) 00:11:40 ID:sVWyXK8+
ブラが開放された。左手がすかさず乳房を捉え、下から上へ、右から左へと
揉んだ。けっして大きくはなかった乳房だったが、とても柔らかな感触だった。
理想的な大きさだった。
乳首を摘まんだときだ。
『・・・薫くん・・・ここはいや、恥ずかしいよ』
俺は無視した。嫌ならもっとはっきりと抵抗すればいいんだ、そう思っていた。
『奈々のオッパイ舐めてもいいかな?』
『いやだ』
背後から乳房を揉みしだいた。奈々の体がそれに反応していった。
俺は制服とブラウスを捲り上げた。奈々は、あっ!と声を出した。
誰かが振り向いたら高校1年生の乳房が剥き出しなっている姿に驚く違いない。
その人は、偶然振り向いてラッキー、というわけだ。
映画館自分の乳房が剥き出しにされるなんて、想像外のことだろう。
もちろん誰かが気付けばブラウスですぐに隠してあげる。
そんな俺たちを見て、おせっかいな大人が注意しに来たとしたら、とぼける。
(なにもしてないよ、妄想が現実に見えたのと違いますか?)ってね。
俺は奈々を背中から抱いた。硬く硬直した陰茎を奈々の尻の間に当てた。
スカートからその尻を撫ぜまわした。おかあさんの尻とはまた違う感触が得られた。
スカートの中に手を忍ばせた。
奈々はさっきから口から漏れそうな声を片手で押さえ堪えていた。
太ももの感触は、おかあさんの方が柔らかかった。しかし奈々の太ももは
かなりの肉付きで、肉感は最高だった。
俺はしつこく太ももの付け根あたりをまさぐった。
じらすようにして微妙な位置で、奈々の陰部に触れるのを避けた。
154 :
名無しの笛の踊り:2005/06/09(木) 00:14:04 ID:sVWyXK8+
パンティーに手がかかった。ゆっくりと尻からずり下げた。尻が半分近く
剥き出しになったあたりで、奈々にパンティーを押さえられた。
『それ・・・以上は・・・』
『パンツ脱ごうよ、脱いだほうがいいよ、濡れちゃうしさ』
『・・・濡れないもん』
『じゃ、確かめようか』
俺の指が尻から奈々の陰部を這いながら、目的の部位を見つけなぞった。
少ない陰毛に少々とまどったが、そのせいであっさりと、濡れた秘部に
指が滑り込んだ。にゅるっとした粘液が指に絡みついた。
そこは以上に熱を発していた。俺は濡れた陰部を状態を堪能した。
『すごい濡れてるよ・・・気持ちいいの?』
『だって・・・いけないことする・・・から』
『汚れるから脱ごうよ、取っちゃうよ』
『はずかしってば』
パンティーの両端をつまみ引き下げた。それも一気に引き下げた。
俺はしゃがんでローファーを脱がさずにパンティーを脱ぎ取った。
下から見上げた。ぞくぞくする光景が目に入った。
(すげー、こんな姿、こんな場所で見られるなんて)
俺は内面の激しい興奮を押さえて言った。
『奈々、すっぽんぽんになったね』
『来たら・・・誰かが・・・』
たしかに、危険すぎる。スカートで隠れているとはいえ、薄暗いとはいえ、
超ミニでは、角度が変わっただけでばれてしまうだろう。だからいいんだ。
だから最高なんだ。だからここを選んだんだ。
奈々の膝の裏を舐めた。
『もっと脚を開いて、奈々』
155 :
名無しの笛の踊り:2005/06/09(木) 00:26:39 ID:sVWyXK8+
観念しているのか、身を委ねたのか、そうすることでさらなる快感を
得られると期待したのか、奈々は躊躇うことなく両脚を40cmほど
開いてくれた。
肉がたっぷりと付いた形の良い脚の付け根が、はっきりとではないが、
確認できた。背後の扉が開かないようにと最高の緊張感でもって、
太ももにむしゃぶりついた。まるで獣だった。俺の口から、はあはあと
息の漏れる音ががときおり出てしまった。
奈々の太ももを舐めまくりながら、
尻へと唾液にまみれた舌が這い上がって行った。
尻の割れ目に顔を埋め、濡れた陰部をしゃぶった。奈々の体から滲み出す
粘液をぺちゃぺちゃと吸い尽くした。
(間違いなく棄てられる、今だ、この濡れた奈々の陰部に・・・)
俺は立ち上がり、いまにも崩れそうな状態の奈々に囁きかけた。
『入れるぞ、奈々』
『・・・や、やばいよ・・・』
俺はズボンのファスナーを下ろし、いったいどこまで硬直するのだ、と
少々、驚きながら、慌てて最高に屹立した陰茎を取り出し
奈々に握らせた。
『どうする?奈々、これを入れるよ、嫌かな?』
『・・・嫌・・・じゃない・・・ほしいよ、薫くん、大好き』
ポケットに入れていたゴムを被せた。
奈々の尻を後ろに引き寄せ
『もっと腰を曲げて・・・そうだ、手すりにもたれるように』
俺は周囲を見回した。どうせすぐ射精してしまうだろう。
いまでもいきそうなくらいだ。
156 :
名無しの笛の踊り:2005/06/09(木) 00:28:44 ID:sVWyXK8+
奈々の濡れた秘部に俺の先端を押し付けた。
頭が入った。力を込めて突くべきか、ゆっくりと挿入しながら突くべきか。
俺は以外にも興奮とは別の欲情をコントロールしていた。
『奈々、先っぽがはいっちゃったよ、止める?』
『・・・きら・・いだ・・・もう』
俺は腰を奈々の尻に向かって押し付けた。一気に未体験の熱い肉体の内部に
陰茎が食い込んでいった。ねちゃねちゃとした心地よい感触。
弾き返されそうな肉体の圧力の快感がすごい。
腰を激しく動かした。奈々のうめき声がもれる。構わずにさらに強く突いた。
『・・・すごいよ・・・いい、薫・・・・くん』
その声が耳に入ったと同時に、俺は例えようも無い快感に襲われ、
思いっきり射精した。
157 :
名無しの笛の踊り:2005/06/21(火) 10:51:16 ID:Ok5k134y
そこで全裸バヨリン弾きが登場、
158 :
名無しの笛の踊り:2005/06/21(火) 11:24:54 ID:mw33MgKL
美有の入院から3週間が過ぎ、受験も最後の追い込みに入った。
隣の真樹とエレベータで一緒になったとき言ってた。
『美有ちゃんね、朝の検温と同時に気合で昼まで勉強してるよ』
『まだ出られないの?』
『もうすぐだって、先生が言ってた』
ほんの短い時間だったが、無理やり入り込んできた親子のせいで
真樹が体勢を崩し、俺の腕にしがみついてきた。
微かに感じた胸の膨らみに、俺の方が戸惑った。
だが、真樹の申し訳なさそうに謝る笑顔がとても健康的に思えた。
自然だった。何かを期待してるわけじゃない。
真樹の存在感に、何故か魅入ってしまった。
159 :
名無しの笛の踊り:2005/06/21(火) 11:27:26 ID:mw33MgKL
美有の通常の成績なら問題なくクリアできる学校だった。
だが、クラスメートと隔絶された環境の中で、学力低下の不安を
感じることによるプレッシャーが有るのかも知れない。
どうにか美有もスレンレス製の杖を使って歩けるようになった。
上半身の大きな動きは肋骨のせいでまだ出来ない。
『お風呂とかどうしてんの?』
『看護婦さんがあったかいタオルで拭いてくれるよ』
『だったら、俺が拭いてやろうか』
『ベーだ!』
『兄妹じゃん・・・あっそうそう、湯島天神の学業守を買ってきたよ』
160 :
名無しの笛の踊り:2005/06/21(火) 11:29:05 ID:mw33MgKL
受験当日はオヤジが車で学校まで美有を送った。帰りは俺が病院まで送り届けた。
退院の予定は3日後だった。本当は退院をしてもよかったらしいが、
急な環境の変化で風邪を引いてしまう可能性があると主治医が話していたので、
大事をとった。
受験語の美有の表情は疲れからか、幾分、言葉数が少なかった。
同考えて美有が入れないほどのレベルじゃない。もっとランクの高い学校に行って
ほしかったが、俺が通う学校とその制服が着たい、といった気持ちは最後まで
変わることはなかった。
そして美有は無事に退院し、期待どおりに俺の学校の中学に合格した。
4月からは1年間だけだが、一緒に通学できるようになった。
273 名前: 1 ◆0qfSpMy/vE 投稿日: 03/09/27 16:12 ID:yWpnZunR
美有の退院を心から祝福したのは俺たち家族3人だけじゃない。
美有の担任もクラスメートたちも同様だった。一緒に卒業式に出れるね、
と皆が話していた。
そして、もうひとり美有の退院を姉のように喜んでいた少女がいた。
退院の前日、俺と美有と真樹の3人で病院の周辺を散歩し、小さな神社で
3時間も話し込んだ。そこで約束した。夏になったら一緒に海でキャンプを
しよう、と。ガキっぽくて少々照れくさかったが、3本の小指を絡めた。
161 :
名無しの笛の踊り:2005/06/21(火) 22:40:09 ID:mw33MgKL
入院で知り合った者同士は、そこに居る限り、互いの病の不安からか、
日常では得られない親交が芽生える。しかし残念ながら、一旦、退院して
しまうと、素敵な人とだったという印象は、日常生活に呑み込まれしまい、
必ずしも、親交が継続されるというわけではない。
それは己の精神的弱さの最中に発生する、依存現象、だろう。
通常の生活では到底接点がなさそうな相手でも、入院中に出会った素敵な人は、
最良の人間に見えてしまう。互いにそう感じてしまう。何故なら、同じ境遇
なのだから。看護婦さんが天使のごとく見えてしまうのも、そういった心理が
働く。弱者の立場の患者は精一杯のいい人となり、その患者の心理状態を
掌握している看護婦の接し方は、退院しても会いたい、付き合いとなる。
だが、それも病院内でしか通用しない。院外で見る患者のギャップと白衣を
身に纏っていないナースのギャップを痛感してしまうだけだから。
病人にとって、先に入院しながら、後から入ってきた者に追い越される。
一番淋しいときだ。
(じゃ、お世話になりました。みなさんもお元気で)と退院する者。
(こちらこそお世話になりました。お気をつけて)と残る者。
それが大部屋であっても、1人が退院してしまうと、しばし、なんとも
いえない虚しい空気が漂う。
(俺も、あの人のように、みんなより先に退院したいものだ)
162 :
名無しの笛の踊り:2005/06/21(火) 22:42:33 ID:mw33MgKL
あの真樹の笑顔は、精一杯のやさしさだったに違いない。
病名を知らされていない不安感。いつ退院できるかわからない不安感。
整形外科病棟は、他の科と比較して明るい患者が多い。
それは先が見えるからである。
同年代の美有と1ヶ月間の共同生活。親しくなっただけに、約束の指を
絡ませたときの屈託ない真樹の笑顔は、いまでも脳裏から消え去る
ことはない。
真樹は美有の退院から1ヶ月後に退院した。
美有はその間、2度、お気に入りの制服を着て見舞いに行った。
俺がどうだった?と聞いたとき美有はこう答えた。
(うん、元気そうだったよ。今度新しいケータイ持つから、その番号
教えてくれんるんだって・・・でもね、なんか、ちょっと・・・)
美有は同士の思いのままで真樹と接した。
美有が感じた“なんか”は当然のことだった。
3度目に俺と行ったときは、予定の退院日より3日前に退院していた。
結局、病名は“他人には”わからないままだった。
美有の退院と同時に、真樹の心は同士ではなくなっていたのだろう。
幻のように消えてしまった真樹。もう連絡もつかない。
人にはいろんな事情がある。残念がっていた美有だったが、
それでいいじゃないか、と思えた。真樹の存在は入院中の美有を
元気つけてくれたのだから。好ましくない若しくはデメリットの
可能性を秘めた場所で知り合った人間とは、断ち切る。
そのような何らかの親の方針があったのかもしれない。
事情よりも、あの真樹の人柄に偽りはないのだから
163 :
名無しの笛の踊り:2005/06/21(火) 22:45:01 ID:mw33MgKL
その頃、オヤジも何度かに分けて荷物を宅配で大阪へ送っていた。
少々おおげさな気がした。思っていたよりも多くの荷物を送っていたからだ。
2年間向こうに暮らすわけだから、当然なのかなと思っていた。
美有、中1。俺、高3。
中学の合格祝いと、オヤジの大阪行きを兼ねて、オヤジの店を3時間貸切りで、
パーティーをやった。食い物は全てオヤジが作り、サポートは後を引き継ぐ人が
やってくれた。
ひさしぶりの4人の食事。なんだか嬉しくてしかたなかった。
美有もはしゃいでいた。と同時に、オヤジが居なくなった後の責任を痛感した。
2日後、オヤジと一緒に羽田へ行った。
ショルダーバッグを1個抱えたオヤジの背中、一度振り返ってくれた。
微笑んでいた。美有は大きく手を振り(遊びに行くから!)と大声を出した。
俺は、心に空洞ができたかのように、何も言えなかった。
2年間か・・・まかせてくれ、オヤジも頑張れ!と思うだけだった。
おかあさんが何やら手紙みたいな物を俺に渡してくれた。
(おとうさんがね、帰りの電車で読みなさいって)
そう言ったおかあさんの顔に笑みはなかった。
電車に乗り込み、手紙を読んだ。
それはあまりにも衝撃的な内容だった。言葉がなかった。
4人で掴み取った、4人で育て上げた家族の幸福の
終焉が書かれていた。
オヤジは俺に大きなウソをついていた。
164 :
名無しの笛の踊り:2005/07/06(水) 23:22:45 ID:ZGVCikqK
かぐや姫のスレかと思ったら、、、、
165 :
名無しの笛の踊り:2005/07/06(水) 23:29:12 ID:3xS78WlK
さっさと続きを書けよ、キチガイw
166 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 00:03:20 ID:38T8WT9V
>165
そんなに読みたいか?
167 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 00:25:08 ID:38T8WT9V
『薫、最後まで読んでくれ。我儘な父親の戯言だが・・・
実は、おかあさんとは先月、離婚した。
原因は大阪行きの件だ。おかあさんに私の計画は
理解されなかったのだ。
どうして今になってそんな賭けをするの?
俺の夢がまるでわからない、と言ってきた。
おかあさんのいう通りだ。
どのレベルで以って、夢が実現しているのか
自覚すべきだったのだろう。
おかあさんは、今が夢なのよ、と考え、
私は、夢に到達はない、と主張した・・・
『・・・たった2年の猶予も受け入れられない、という。
4人が一緒であることの幸せを何故、わからないの?
と問い詰められた。
わかってはいる、なにもかも。
しかし、それが出来ない性分なんだ、薫の父親は。
愚かな父を許せ。
おまえと美ちゃんが大学を卒業するまでのお金は
送金する。もし許してくれるなら、
いつか会ってくれ。
永遠に薫の父親なのだから・・・そうだね?
じゃ、おかあさん、美ちゃんのこと、頼みました。
体に気をつけて 父より 』
168 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 00:28:58 ID:38T8WT9V
無情だ、こんな無情が許されると思っているのか。
俺は怒り狂った。
失敗は1度きりだから価値があると、オヤジは言った。
何故だ、なぜ2度の可能性に近づくのだ。
オヤジの幸福感と俺たちの幸福感に隔たりがあったというのか。
普通に生活できる収入を得られる、
それだけで充分に幸福ではないのか。
俺はもらった三脚を壁に叩き付けた。
オヤジ、あんただけが違う方向をいつも見ていたわけか?
自分のやりたい仕事ができる、
それだけで幸福と考えることが出来ないのか?
そんなにも己の夢へのチャレンジが尊いものなのか?
エゴにもほどがある。
人と人が偶然出会って、共に苦労と幸福感を共有していきてゆく。
それが幸福ではないのか?
夢ってなんだよ、オヤジ。
誰かの犠牲の上に勝ち得た夢なんて、そんなのはただの廃棄物だ。
己のみが陶酔できる廃棄物じゃねーか。
そんなもの、みたくねえよ!
そんな夢、俺たちに関係ねえよ!
その夜、俺は酒を煽り、ひとりで乱れまくった。
169 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 00:32:50 ID:38T8WT9V
あの映画館における童貞破棄遊戯の一件から奈々とは、
いつもと変わることなく、会っていた。
ただ、一度喧嘩してしまった。
というのも原因は美有のことだった。
(何故、お見舞いにいっちゃいけないの?)それが発端だった。
俺は、(妹は人見知りが激しいから、ゴメン)と言ってかわしたが、
口論となってしまった。
奈々の存在こそが入院の引き金であることを言えるわけがない。
307 名前: 1 ◆0qfSpMy/vE 投稿日: 03/09/27 23:57 ID:Fnq1KliW
3年に進級するのと同時にバイトを始めた。バイトといっても、おかあさんの
店の準備兼掃除だ。早出の大学生のバイトがやっていたのだが、その時間を
俺にやらせてもらうことになった。夕方6時半までで終わりだから、2時間
くらいのバイトだった。美有もそのまま店に来て、一緒に家に帰った。
本当はもっと長い時間バイトをしたかった。
学校から帰って、夜遅くまで家でひとりぼっちになってしまう奈々を思うと、
仕方がなかった。夕食の準備はおかさんが整えて仕事に行ってくれたが、
バイトを始めたことで、奈々と二人だけで食べることが多くなった。
ひとり欠けただけで、生活のリズムがすっかりと変わっってしまうなんて。
170 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 00:36:49 ID:38T8WT9V
中学校生活最初の夏休みがやがて来る。俺にとっては高校生活最後だ。
もうすっかりと入院時の影響もなく完治したものと思っていたが、
左下腿骨骨折の影響が残っているようだった。
何も言わないけど、時々そこをさすって、顔をしかめることがあった。
体育の授業には出てるが、我慢してるのかな、と思ってしまう。
中学生になった自意識と、成長の早さの相乗効果で、美有の容姿は
かなり変化した。モーニング娘の一番新しいメンバーの一人にとても
似ているのだ。美有もダンスは大好きだった。
この間、その事を話したら、笑ってはいたが、表情が翳ったのも、
見逃すことは出来なかった。
やはり、脚の具合があまり良くないのかもしれない。
離婚後、言わなくてはならない事を、俺もおかあさんも口にださないできた。
不自然と感じつつも、話題にしないようにしてきた、そんな気がする。
以前、おかあさんに (この言い方にもケジメを付けなくてはいけない)
姓はどうするの?と聞いてみたとき、海野のままでいいわ、と答えた。
もちろん、美有にも離婚の事実は伝えた。
かなりショックを受けていた。
(お兄ちゃんも出て行っちゃうの?美有、絶対に嫌だからね) と
握りこぶしを作って、訴えていた。
(美ちゃん、俺は居るよ、ずっと一緒だよ) そう答えたら、
翌日には、気持ちを切り替えてくれていた。
171 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 22:01:22 ID:38T8WT9V
おかあさんが帰ってくるのを待った。美有はとっくに眠っていた。
いつもの時間に帰ってきたおかあさんに、言いたいことがあるから、と
俺の部屋に呼んだ。おかあさんはいつものパジャマを着てきた。
脚を組んだとき、あの夜の出来事が蘇り、下半身が熱くなってしまったが、
それを振り払って言った。
『ねえ、おかあさん。俺、いつまでおかあさんと呼べばいいのかな』
『おかあさんでいいじゃないの』と当たり前のように答えた。
『法律的に完全に他人になってしまったんだよ・・・美有ともね』
『法律は法律。人の心とは別物でしょ』
『でも俺、立場的には居候じゃないの?』
『変なこといわないで!薫くんはいままでの薫くんじゃない』
おかあさんは続けた。
『お父さんと約束したのよ、私たちに何の問題も無い限り、一緒に暮らす
ということをね。それに、そんな思いをさせない為にも、充分過ぎる
3人の生活費を毎月送金してくれてるんじゃない』
『うん・・・ありがとう』
『だから、そんな他人行儀ないい方もやめなさい』
『俺、おかあさんのことをどう呼んだらいいか、考えてしまうよ、美ちゃんも』
『何も変わらないんだって、何もね』
『正直、オヤジに対して怒りを抱いてるよ・・・せっかくさ・・・せっかく』
おかあさんは俺の手をとった。
『おとうさんはね、大阪に行ってしまうと2年で帰ると言ってたけど、ほんとは
違うの。もっと長い期間を必要としてたみたい』
『じゃ、離婚なんかしないでさ、4人で大阪で暮らせばよかったんだ』
172 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 22:04:03 ID:38T8WT9V
『そうね、あの人の意識にそれはなかった。けじめ、だからといって離婚を求めてきたわ。
最初は、女の人でも居るものと疑ったけど、違った』
『そこが理解できないのさ。夢の為に家族をオヤジは棄てたの?』
『それは違うわ、棄ててなんかいないと思う』
『じゃ、家族の為に離婚したとでも?そんなのあるかい』
おかあさんは、俺の顔を強い眼差しでもって見つめた。
『ねえ、薫くん、家族の幸福を全て父親に委ねてはいけないわ。わたしたちは家族よ
ずっと家族よ。美有にとって薫くんはいつまでもおにいちゃんなのよ。いつまでも
責任を父親に転嫁してはダメなのよ・・・薫くん、法律がどうのこうのと言う前に
あなた自身でこの3人の本当の家族を守ってみなさいよ』
『・・・お、おかあさん』
胸に鋭い剣が突き刺さった思いがした。
173 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 22:06:19 ID:38T8WT9V
痛感。おかあさんの言葉を耳にしたと同時に、動揺を隠すことが出来なかった。
俺はいつも願望するだけの立場で安住しているだけだった。
家族の皆が笑って暮らしているとき、それに満足するだけの自分がいた。
ひとり欠けることも、最悪の崩壊も、まったくの想像外だった。
おかあさんが俺に託した言葉、悔しくて、歯痒くて仕方が無かった。
本当はそうしたかった。どうすべきがわからなかったのだ。
だが、わからないなどと逃避する時期はとうに過ぎていた。
これからはこの俺が、2人に幸福感を与え続けていくべき存在なのだ。
174 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 23:25:29 ID:38T8WT9V
この間まで俺が拘っていた家族って、一体なんだったんだろう。
この生活がスタートした時から、4人に拘っていた意味はなんだったんだ?
結局、オヤジが離脱して精神的ダメージを被って、そんなオヤジに対し、
ひとり取り乱していた。
あの美有ですら、俺が居るなら平気だよ、と言わんばかりに、翌日には、いつもの美有
の姿になっていた。
おかあさんはどうだったか。夫を失った心痛と将来への不安は、俺の比ではなかったはず。
それなのに平静を装い、俺と美有に語りかける言葉は、すでに前を向いていた。
結局、俺の甘えだけが見えてしかたがない。
小学生の時に母親が消えてしまって、淋しかったかと、問われれば、淋しかったと
答える用意をしていた自分。
だが、本音を吐けば、淋しくなんてなかったのだ。何故なら、オヤジがそれを感じ
させない愛情と優しさでもって接してくれたからだ。
少年は単に、隣の整った家族構成に羨望していただけだ。
おかあさんの胸に刺さる言葉を耳にする前までの、俺が安易に用いていた家族の幸福
などといった代名詞みたいなもんに、真実味なんてさほど無かった。
ただ、ただテメエの都合のいい家族を求め、用済みになるまで利用したかったのだ。
それが俺の本音だ。
175 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 23:27:16 ID:38T8WT9V
5年前、初めて美有と出会った時、美有はおかあさんから、こう言われていたはずだ。
(美有の新しいお父さんと、お兄ちゃんになる人だからね)と。
2年生の美有は、もうこれでひとりぼっちの夜はなくなるのかな?
どんなお兄ちゃんかな?と胸いっぱいの夢を抱き、俺たちと対面した。
そして美有は、自分にとって本当に大切なのは、お兄ちゃんなんだ、といった判断を
下したのかも知れない。
その思いは、今も変わらないままだ。
あんな大怪我をさせてしまったというのに・・・
おかあさん、俺、やれるだけやってみるよ、3人の為にさ。
もし、躓いたらさ、おかあさんと美有とで俺を立ち上がらせてほしいんだ。
176 :
名無しの笛の踊り:2005/07/07(木) 23:29:30 ID:38T8WT9V
ケータイのメールには、相変わらずの奈々、そして友達に美有、といったところが
ほとんどだったが。6月と7月に一度づつ、オヤジからもメールが来た。
電話もたまにはあったが、その内容は、東京の店のことなどのあまり興味のない
ものだった。
それだけにメールは嬉しかった。なんせ親展と同じだから。
しかし、そんな俺の気持ちとは裏腹に、2度ともメールは短いものだったが、最近の
メールは違っていた。
“まだまだ胸を張って、遊びに来いよ、なんて言えるまでにはなっていないけど、
どうかな、2日でも3日でもよいから、夏休みに入ったら、
1度大阪へ来てみないか? 返事を待つ“
俺は躊躇うことなく、メールで返事をした。
“じゃ、休みに入ったらすぐ行くから”
いつものように俺の部屋で勉強をしている美有にそのことを話したら、
一緒に行きたい、と大きな声を上げた。
そう言うだろうと思っていた。美有もまた、オヤジが大好きだった。
どうゆうわけか、両親が離婚すると、去っていかざる得ない親の方が、
その心情とは無関係に悪者扱いされがちだ。もちろん、身勝手な理由で、
出て行く親もいるが、そればかりでないような気がする。
特に子供にとっては、直接的に被害を被った場合で無い限り、
どちらが悪かったなんて、知りようがないはずだ。
なのに去って行った親が一方的にダーティーにされてしまう。
結局、子供は共に暮らす親の情報を鵜呑みにして、
居なくなった親の偏ったイメージだけが定着されていく。
177 :
名無しの笛の踊り:
『俺はかまわないよ。ひとりで行くより楽しいし。とにかくおかあさんに
確かめてからだよ』
翌日、朝食の準備をしていたおかあさんに美有は、早口で大阪に行きたい、と
懇願していた。
それを聞いたおかあさんは、いつもと変わらぬ口調で返事をした。
『美ちゃんが会いたいと思ったなら行きなさい。
薫くんや美ちゃんの心の扉を狭くさせるつもりはないの。
おかあさんとおとうさんが別々に暮らすことになった理由なんて
もうどうでもいいことだけど、このまま美ちゃんが会わないでいたら、
段々とおとうさんの印象が悪くなってしまうと思うわ。
それってなんだか嫌なの。だって、おかあさんが好きになった人だもの』