音楽の時間となると
クラスメイトのうるさい奴らは楽器を出鱈目に叩きまくる。
私は正直うんざりしていた。
ああ、また音楽の時間か。
その日は音楽鑑賞の時間だった。
小学2年生にとってクラシック音楽を聴くのは校長先生の
朝礼を聞くのよりの耐え難いのだろう。
先生が教室に入ってきた。
相変わらずお喋りはやまない。
「今日は皆さんに音楽鑑賞をしてもらいまーす」
先生の言葉に聴く耳を持たない。
ああ、どうしてこんなやつらと同じクラスなんだ。
いつのまにか私は自分を嘆いていた。
机の上にのって遊ぶ山田、リコーダーで叩き合う野村と菊地。
恋話に花が咲く飯田さんと池内さん
怒りを通り越して惨めな気持ちになっていた。
・・次の瞬間、信じられないことが起こった
・・・・・・
教室内が静寂に包まれた
ブルックナーの交響曲第9番のアダージョだった
さっきまで遊んでいた奴等はぴくりとも動かない。
口をあけたまま石像のように固まっている
そのうちに目から涙をながすやつも出てきた
みんな崇高なアダージョに胸を打たれてしまったのだ
山田「なんて崇高なアダージョなんだ」
野村「この世のものとは思えない」
菊地「ピアニッシモから金管楽器のコラールへ・・・美しい・・」
・・・音楽は天に溶けていくように終わった