【逝ける】宇野珍宝興業6【のパヴァーヌ】

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245名無しの笛の踊り
H林 「先生、困りますね。わが社の主要業務の一つであるレコ芸執筆を
 サボったりなされては。いったいどうしたというんです?」
ポーコー 「評論家として確固たる地位を築き、指揮者としても目覚しい成功を
 おさめたぼくだが、やはり究極の野望は作曲家として作品を後世に残す
 ことだといえよう。ぼくは曲を書くための時間が欲しいのだ」
H林 「でも先生の交響曲第1番『いえよう』は、初演が不評というか、
 ほとんど黙殺されましたよ」
ポーコー 「確かにあの曲は未熟であり、恥ずかしさの限り、穴があったら入りたい。
 さっそく改訂版を出版するとともに、交響曲第2番『チャーミング』の
 作曲も進めているところであり、レコ芸月評に割く時間はないといえよう」
H林 「交響曲第2番? 確か『チンコんミサ曲』も作曲の途中じゃなかった
 ですか。自分の葬式に流すんだとかおっしゃって」
ポーコー 「いや、死ぬのは9曲の交響曲を書いた後というのが大作曲家の条件
 だといえよう。宇野珍ポーコー作曲の全9曲の交響曲全集! なんと甘美な
 響きであろうか! まさにベートーベン、シューベルト、ドボルザーク、
 ブルックナー、マーラーらに肩を並べることができるのだ。ぼくは情熱的に
 作曲に体当たりをし、いのちを賭けるのである」
H林 「ええと。そのいのちが持ちますかねぇ。あと8曲も作らなきゃならん
 のでしょう」
ポーコー 「構想はすでにできている。あとは音譜化するだけだといえよう。
 これがそのラインナップだ」

・交響曲第1番 イ短調 作品1 「いえよう」
・交響曲第2番 ロ長調 作品2 「チャーミング」
・交響曲第3番 ハ短調 作品3 「有機的」
・交響曲第4番 二長調 作品4 「愉しいメルヘンの世界」
・交響曲第5番 ホ短調 作品5 「精神性」
・交響曲第6番 ヘ長調 作品6 「光彩陸離」
・交響曲第7番 ト短調 作品7 「寂寥感の極み」
・交響曲第8番 チ長調 作品8 「心の愁いの告白」
・交響曲第9番 リ短調 作品9 「到底マイクには入り切れない」