(その3 音楽之友掲載の批評)
「音楽の友」(02年?)3月号の記事
●川上敦子
川上敦子の<ピアノ編曲の世界>へ足を運んだ。目玉は ベートーヴェン=リスト編の第9交響曲である。
川上はリ ストを得意とする技巧派のピアニストであり、プロ・デビ ューの演目は
ブダペスト版(新リスト全集)の超絶技巧練 習曲全曲であったという。
先ずはリストの《リゴレット》のパラフレーズ、楽譜を 用いての演奏だが、
豪快な導入部に続く主題のテンポが対 照的に極めて遅く、
どんな理由でそうなるのか考え込んで しまった。
そしてピアノ版第9交響曲、第1楽章からすでに先が見えたというか、決して速く弾くことができないわ けではないだろうが、
完成に至らなかったものなのか、あまりにもテンポが遅いのだ。
第2楽章はより滑らかに進行 し、第3楽章、そして第4楽章、オーケストラでは通常は 呈示場面で、
カデンツァの男性バリトン・ソロが入る直前 の序奏は相当ぐらつき、聴く方も緊張したほど。
展開部ク ライマックスの左手オクターヴ (右手=歓喜の歌の主題) によるパッセージとオスティートも・・・・・・?
全体 的に見ても左右のバランスが今一つで、強弱をつけるのに 精一杯のようであった。
それでも実演でピアノ版《第9》 を聴けたことは意味があるし、欲を言うなら、安全にまと めようとせずに、
危険であってもあえて60分台あるいは 70分台に収める冒険をしてほしかった。 (85分は少し長すぎる)。
(12月26日・東京オペラシティ・リサイタルホール)