755 名前:前住所音更 投稿日:03/06/01 00:17 ID:487mX7bd
ピアノの奏法論は作曲年代やピアノの歴史と切り離してしまっては空理空論にしかならない。
モーツァルトがピアノ学習者に極力ペダルを控えることを主張したことをもってモーツァルト演
奏はノンペダル奏法に限るというのなら現在の演奏家が現在のピアノに向かってノンペダル奏法
を駆使する理由は何に拠るのか。またモーツァルトの自筆譜の記号を尊重してモーツァルトが書
いたとおりに演奏することを標榜するのならば、現代のピアノで出せる強弱の幅とモーツァルト
時代のそれとの比較論がなければならないだろう。それがなければ「モーツァルトが書いたとお
り」かも知れないが、それが「モーツァルトが望んだとおり」であることにはならない。「音楽
現代」野崎氏の論は今更ながらまったく正しい。
川上女史はおそらく今日に向けて相当の練習を積んだに違いない。それもおそらくはメトロノ
ームを徹底的に使用して。定刻より8分押しで始まった演奏会は地元ということで川上女史のMC
で始まる。いわく「私の弾くモーツァルトは自筆譜に基づき右足のペダルは一切使用しないで演
奏します。」(早くも予防線を張ってる)
そして1曲目はソナタイ短調K.310。冒頭ちょっとしたミスタッチがあったもののフォルムは崩
れず打鍵も安定。2曲目のソナタニ長調K.311も同様、少なくともディスコードした音は一つもな
し。テンポも安定していて、右足を全く使わない分ブツ切れの音になるのはこれは当然で、違和感
というほどはなし。
ただしフォルテはどう考えても唐突に大きく荒い。弱音との差は確かにはっきりしているがこれ
がモーツァルトが望んだ響きだとは到底思えない。必然性がないのだ。「週末徴集」氏が書いてい
た如くとにかく「ぶっ叩く」という表現がぴったりの荒々しい打鍵なので違和感しか残らない。こ
んなデフォルメを繊細なモーツァルトが望んだんだろうか。
フォルテとピアノの交代はどこを聞いてもハイドンの「びっくり」を連想させずにはおかない。だ
から途中からは「またかよ」という思いが先行してすぐ新鮮味は失せ耳障りな衝撃音ばかりが印象
に残っていく。それでも3曲目イ長調K.331の第2楽章まではさっき書いたように「おっけっこう練
習してきたみたい、悪くない箇所もあるぞ」という感じだった。
756 名前:前住所音更 投稿日:03/06/01 00:20 ID:487mX7bd
しかし、やってくれましたね期待に違わず。第3楽章「トルコ行進曲」、ものすごい
テンポ(2/4で四分音符166位)で始まり「大丈夫か?」と思った矢先、例のトルコ風の
太鼓が左手ででてくる箇所で右手がボロボロになり中間の早いぱっセージは何とかクリ
アしたもののさっきのテーマのところでまたもボロボロ、コーダは何とか間違えないで
弾けたが一切のリピートを飛ばしたのでアッという間に終わってしまった。間違いなく
彼女は逃げた。このまま続けたら取り返しのつかない破綻になる確信があったからリピ
ートしないで突っ切ったに違いない。だけどね、「モーツァルトが書いたとおりに演奏
する」んじゃなかったの?
おそらく「週末徴集」氏が聴いた時よりはマシにはなっていると思われるが、いかに
もメトロノームに合わせて練習しまくりましたという雰囲気のテンポキープなので呼吸
している感触がゼロ。それから先にも書いたとおりフォルテがいたずらに荒くでかいの
で騒々しい。現代のピアノであんな打鍵をすればあんな音になるのは当然なので彼女は
それがモーツァルトの望んだ響きだと考えているわけだが、そんなことは断じてないと
思う。
後半は伊福部作品だがこれは他の演奏も知らず曲も初めて聴いたので彼女の演奏の良
し悪しは分かりません。少なくとも「そんな音のわけはないだろう」ということがなか
ったのは確か。
さて次の問題はアンコール。
1曲目ショパンの前奏曲(太田胃散のやつ)
2曲目子犬のワルツ
3曲目ベートーベン月光の1楽章
4曲目モーツァルトのソナタK.284の1楽章
5曲目ショパンのノクターン(あの有名なやつ)
6曲目リスト「愛の夢」第3番
やりすぎ!それととりとめのない選曲!いくら地元で招待券ばっかりで普段ピアノ
聴かない人達に来てもらってるからってこれはないだろう。アンコールだけで30
分もあった。もっと早く帰れると思ったのに。
結論、地元出身で外国留学までした地元では結構知られた会社社長の娘さんが開
く最初で最後のリサイタルで料金1000円ならまあいいかとも思うが、これで5
000円だったら怒らない人はいますまい。
759 名前:前住所音更 投稿日:03/06/01 00:25 ID:487mX7bd
追伸、川上ページの壊れた2つの画像はおそらく今日はさまっていた(黄色い!)
「定期演奏会」のチラシの表裏でしょう。第1回目が網掛けで「終了」になってい
て第2回目に伊福部作品が追加になったことと、あの定期会員渡辺某氏のコメント
が囲みで載っとります。レア物なので大事にとっておこうと思います
762 名前:前住所音更 投稿日:03/06/01 00:30 ID:487mX7bd
以上、11時ころ家に着いて「メモ帳」で一気に書いてから貼り付けたらこんな時間
になってしまいました。首を長くして待ってていただいた皆さんすみません。私は主
筆閣下の顔を知りませんが、今日慣れない手つきで譜めくりをしていたあのちょっと
「ヒゲの殿下」に似た男性がそうなのでしょうね。川上女史が次の曲を弾くために下
手から登場してピアノに向かってから出てくるので鬱陶しい上に、抜き足差し足とい
う感じで歩くので終盤では客席から笑われてました。