その日オレ(ジャズ)は、けたたましい笑い声で目を覚ました。
例によってスイングが勝手に部屋に入り込んで、テレビを見てやがった。
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[__l二l| ∬ ブハハハハ
ミ>∀<ノ,っ━~
ミヾ~,,~彡 _と~,,, ~,,,ノ_. ∀
( ´д⊂ヽ゛ ミ,,,/~), | ┷┳━
/ 】 【 ノ⌒⌒ヽ.  ̄ ̄ ̄ .し'J ̄ ̄|... ┃
./( ̄⊂人 //⌒ ノ.. ̄/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ┻
⊂ニニニニニニニニニニニニニ⊃
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| ̄| ̄ ̄ ̄|
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「いい加減に、勝手に人の部屋に上がり込むのは止せよ。
あと勝手にテレビ見るな。勝手に酒を飲むな」
「それよか、今日暇か?
ジャパニーズのバックバンドの仕事があるんだが。。。
手伝ってくれれば貸してる家賃、チャラにしてやってもいいぜ」
______
ミヾ~ ,,彡 [l二l__| ←帽子
( ´д`) ミ゚ー゚,,彡 ←もみあげ
( 】 【 )つ ミ ⊂ミ ←もわもわした服
| | | ミ ミ
(__)_) し'` J
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│☆☆☆☆☆☆☆―おいらの胸の心の愛 ―☆☆☆☆☆☆☆│
│☆ ┏━┓┏┳┓ ┏┳━━━┳━┓┏┓ ☆│
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│☆ ▼▼▼▼ ☆│
│☆ 本日 PM19:00 開演 場所クラブXX ・__・ ☆│
│☆ 来ないやつは殺す 〇 ☆│
│☆ 3 .☆│
│☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆│
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「。。。来ないヤツは殺す? こいつはサムライか?」
「まぁ少し凶暴だけどよ。根はいいヤツなんだ。で、どうする?」
「気分が乗らねーな。悪いがパスだ」
「そうか。じゃあ二ヶ月分の家賃、耳そろえて返してもらわねーとなミ ´ー`彡y-~~」
「Σ(゚д゚lll)」
「チッ、スイングの野郎、人が金がないのにつけ込みやがって」
( ______ マ、ガンガッテ
( [l二l__| カセイデクレヤ
ミヾ~ ,,彡 O ( ミ゚ー゚,,彡
( ´д`) o ( ⊂ ア、アトコレ ヤルワ
( 】 【)
人 γヽ
(__人__ノ
「しかしなんだ? これ。耳栓なんて何に使うんだよ」
スイングがオレをからかったのだろうと思い、オレは耳栓を
遠くに投げ飛ばした。思えば、それが運の尽きだった。
「おお! 心の友よ!」
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ヽ_)_/ \ (__ノ
「。。。アンタがジャイアンか? さっそく曲の摺り合わせをしたいんだが。。。」
「そんなのは適当で構わねぇ! みんなはオレの歌を聴きにくるんだからな!」
「。。。そうか。じゃあ適当にやらせてもらう」
「たのんだぜ。じゃあ少し喉慣らしでもするから、併せてみてくれ」
「あぁ」
「逝くぞ!」
?
??
ホゲーーーーーーーーーー
酷い放置っぷりだ……
/∧ ≡ |||| ||||
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≪ ≪ ≫ ノ/ ┌┐ ┌ __
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mm __‐⊂⊃‐__
||| 川 | ⊂ l ⊃
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「うぉっ!」
オレは思わず叫んでいた。これまでどんなプレイにもビビったことなどなかった
というのに、その強大な声量、得も言われぬ不快な共鳴、まるで鼓膜を通り
抜けて脳髄まで揺さぶるような深い唸り。耳元で道路工事でもされているかの
ように、頭の中にガンガンと突き刺さるような高音まで現れはじめた。
楽器を握りしめる指が震えてきて、まるで伴奏など思いもつかない。
今どのコードを辿っているのかもわからなくなり、額から脇にかけて冷たい汗が
噴き出してくる。
だというのに、他のメンバーたちは淡々と演奏を続けている。いや、続けて
いるように見えた。彼らは涼しい顔をして演奏をしていたが、その音は
ジャイアンの声に全てかき消され、まるでオレの耳には入ってこない。
「くそっ、今どこなんだっ! うぅ、耳が、耳が。。。」
拷問でも、これ以上の音を聞かされた人間は。そういないだろう。
譜面を捲る指の震えを止めることができず、視界は汗で濁り、
次第に意識が薄れてくるのを感じていた。
,, , ヘヾ丿彡彡 彡
ヾゞ` ヾ, \ ,,, 彡
ヾミ::::::::.. ○ \
/:::::::: ○ . |.
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「くそっ、なんてこった。耳栓、耳栓は。。。」
最後の気力を振り絞ってオレはポケットに手を突っこんだが、
それはとうに投げ捨ててしまっていたことを思い出すと、
そのまま力尽きて倒れ込んでしまった。
「ジャズ。。。ジャズ、どうしたの?」
薄れ行く意識の中に、酷く懐かしい声が聞こえてきた。
「あぁ、ボサノバ。。。ようやくお前の所に行けるよ。。。
オレはもう駄目みたいだ。。。」
,;';,.,, : ;.,., ,,.. ,.:,
; ,__. ,__. .; ;
':、 - *;;, ; ;
/ ̄ヽ,:´,― 、 ;' o。。。
| ||三:,.;.●)三;':';Ε∃.
\_,へ--イ :' ゚ ゚ ゚
;'"゙゙':、;'"゙゙':、 ,:'
゙':、.,:' ゙':、,.,:'"
○
O
o
=■● ←ジャズ
「何云ってるの。ジャズはどんな音楽でも楽しめる人じゃない」
「いや、アレは音楽なんかじゃねぇ。。。殺人音波だ。。。」
「馬鹿云ってないで。さぁ、私がギターを併せるから」
「いや、けど。。。」
「いい? ♪おーれーは ジャイアーン がーきだいしょー
てんかむてきの おとこだぜー」
「はっ! ボサノバッ!」
、、,,
(;゚jコ゚)ミ
⊆ ̄ιノu
もちろん、ボサノバなんて何処にもいるはずがなかった。だが
オレの耳には確かに彼女の歌声が響いている。
「♪何だよ、何だよ ぬかみそにふたしとけだって そりゃないよ母ちゃん」
「聞こえる! 聞き取れるぞ!」
それまでノイズにしか聞こえなかったジャイアンの発する音。
僅かに耳に残っているボサノバの歌声のおかげで、それが
かろうじて織りなしているメロディがわかるようになっていた。
「なるほどなぁ。ボサノバに助けてもらったか」
「まぁそうなるのかな」
むろん、あのジャイアンの声を普通の人間が耐えられる訳がない。
ライブは散々に終わり、オレは逃げるようにしてクラブから帰ってきた。
日 U
≡≡≡≡≡
U ∩ [] (´;;;;;` )イイカゲン
_[ ̄ ̄| __ミヾ~ ,,彡 __ ) ツケハラエヨ ヲマエラ
ミ~~~~彡ヨ( .)ロ 凸
― ミ ミ― ( 】 【 )―――
ミ__ミ. ━┳━)
━┳━ └ ┃―・゛
「まぁ、とりあえず無事に終わって良かったじゃねぇか」
「あ?」
ヘ 彡彡彡 ......,,. ,,.......,,,
ミヾ ヽ 丿 i ヽ / ヘ
. ヾ ;; ソ.,,,,,,,ソ i `、⌒ヾ⌒ヽ ミ 丿
ヽ ~ , ... ; ... (.....ノ(....ノ...;;;:::::/ ヽ イ、イチャイ
.l::::ノ( | ι ι::(....ノノ
|:::::⌒ -=・=- / ̄ ̄ヽ ::::::::::::::/`ヽ
.|::::::::::::::::: \_(___..ノ :::::::::::::::::::(....ノノ
ヽ::::::::::::::::::: \/ヽ ι ::::::::::::::::::::::::::ノ
「それで済むと思ってんのかコノ野郎!」
「ぼ、帽子が潰れる。。。」
「とにかく、これで借金はチャラだからな! 二度とオレの部屋にくんな!」
しかし次の日も、きっちりオレはスイングの笑い声で目を覚ました。
______∫
[__l二l| ∬ ブハハハハ
ミ>∀<ノ,っ━~
ミヾ~,,~彡 _と~,,, ~,,,ノ_. ∀
( ´д⊂ヽ゛コ、コイツハ ミ,,,/~), | ┷┳━
/ 】 【 ノ⌒⌒ヽ.  ̄ ̄ ̄ .し'J ̄ ̄|... ┃
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おわり