松本人志 第1回監督作品「大日本人」 Part17

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645ネタバレ注意
Twitch 「大日本人」批評
http://www.twitchfilm.net/archives/010096.html
大佐藤を紹介しよう。彼はよくいる典型的な日本の労働者だ。金はないし将来
の展望もない。娘にはほとんど会ってないし、祖父は痴呆を患っている。しか
しそれだけじゃない! 大佐藤は大日本人、電気にさらされると巨大化して、
日本中を荒らし回る怪獣と戦うスーパーヒーローの六代目でもあるのだ。残念
ながら誰も構いやしないのだが……

日本の有名な漫才師、松本人志の「大日本人」は海外でのふさわしい評価を彼
にもたらすかもしれない。ありそうにないスーパーヒーローの日常生活をク
ルーが追いかける偽ドキュメンタリーのスタイルで撮られた「大日本人」は不
条理主義のごちそうであり、労働者階級の日常生活と日本のテレビのかつての
スーパーヒーローの茶目っ気のあるパロディであり、すべては愉快なほどドラ
イな――ほとんど不毛なほどの――ユーモア感覚によって演じられている。

映画の中心は大佐藤、すべてのシーンに登場する(彼が物理的に現れないシー
ンであっても――すべての会話、すべてのアクションは最終的に彼に向かって
いくので)男だ。とにかく大佐藤はただうんざりしている。生活に、仕事に、
あらゆることにうんざりしている。このことは彼が戦いに取り組む時の活力の
ないやり方に現れている。この戦いは毎晩深夜のテレビで放送されているが、
視聴率は下がり続けており、彼の体中にロゴを貼り付けるスポンサーたちによ
って提供されている。彼は公園で一日を過ごす。あるいはパワーヌードルを食
べたり、いろいろとくだらないことをして一日を過ごす。国防省が彼に電話し
て彼の役目が必要なことを知らせてくれるのをただ待っているのだ。

そして電話が来た時には? 地元の発電所に出向いて巨大なパンツの中に入り
込み、乳首から高圧電流を流すと、巨大なスティックの頭で悪者をやっつけに行
けるようになるのだ。悪者とは? バーコード頭の圧搾怪獣がいる。筋肉質の一本
足のてっぺんに竹内力の顔を植え込んだジャンピング怪獣がいる。人間の糞便の
一万倍の強さの匂いを放つ悪臭怪獣がいる。大体わかってもらえただろう……
646ネタバレ注意:2007/05/24(木) 05:37:30 ID:ZROVMtST
松本はおそらく、世界の歴史の中で最高に無表情な不条理ユーモアに対するア
プローチをしている。誰も笑顔を見せない。誰もカメラにウィンクしたりしな
い。すべてはある種の退屈さ、いつもと変わらぬ会社での一日といった感じで
演じられており、そのことがすべてのばからしさをさらに高めている。この映
画はおそらく映画祭やカルトDVD以上の広い観客を得るほどの勢いはないだ
ろうが、ひねくれた日本のユーモアを解する者にとっては純金である。

Variety「大日本人」批評 pdfファイル、11ページ目。
http://www.variety.com/graphics/print_pdfs/0522cnd.pdf
「大日本人」は今年のカンヌで間違いなく一番変な映画にちがいない。不運や
ひどいマスコミやさらにひどいテレビ視聴率に悩まされる電気仕掛けの巨大
スーパーヒーローに関するこの偽ドキュメンタリーは、日本の基準からしても
明らかに奇妙で、涙が出るほどおかしく、真性の、あごが外れるほどの変物で
ある。深夜上映の際物用やアジアおよびファンタジー関連の映画祭には欠かせ
ない映画であり、あらゆる種類の観客を仰天させるだろう。脇役的カルトアイ
テムとしての長く健やかな生涯が待っている。

映画は長く、ほんのわずかだけ面白い場面から始まる。くしゃくしゃ頭の奇妙
な服装をした普通の男、大佐藤(松本人志 Hitosi Matumoto)がひどい落書き
を書きなぐられた彼の郊外の家の中や周りで画面に映らないテレビクルーから
インタビューを受けている。通りの人々はドキュメンタリーの主役をじろじろ
見つめるが、彼が小さな傘と乾燥した海草に興味を持っていること以外、彼に
特別なことは何もないように思われる。佐藤は休みを取ることが出来ないと、
娘と過ごすことが出来ないと不平を言う。そのとき彼は国防省から仕事に行く
よう連絡を受ける。
647ネタバレ注意:2007/05/24(木) 05:38:54 ID:ZROVMtST
バイクに乗って東京のある発電所に向かいながら、佐藤は彼が日本の市民に人
気がないことを示す個人的に向けられた看板をいくつか通り過ぎる。セキュリ
ティの理由からカメラの外に出ると、佐藤は発電所に入り電気のバーストと耳
をつんざく衝撃波のような轟音とともに(ぜいたくなコンピューターアニメー
ションのおかげで)刺青をいれ紫のパンツを履き「イレイザーヘッド」の髪型
をした「超人ハルク」風のばかでかい姿に変身する。

CGIの佐藤は、バーコード頭をもち伸縮性のループ腕で高層ビルを持ち上げ
る好きな痩せたミシュラン男に似た怪獣との戦いに出かける。

映画の残りこうした戦いの反復であり、発展でもあり、それぞれの怪獣は前の
敵よりさらにてごわくなる。対決場面はさらなる佐藤の日常生活にはさまれて
いる。佐藤の引退した祖父であるアルツハイマーを患う四代目大日本人(直接
的に訳すと大きな日本の人)を訪ねる場面などである。

一本調子のジョークであったはずのものが、探求され、あらゆる方向から押し
たり引いたりされ、奇跡的にその新鮮さが失われない。
648ネタバレ注意:2007/05/24(木) 05:39:54 ID:ZROVMtST
フィナーレは日・米・北朝鮮の超人によって演じられる三国関係の奇妙なパロ
デイである。クレジットには佐藤が困惑気味のディナーゲストとして招かれる
中、アメリカのスーパーヒーローが崩壊家庭を演じる腹がよじれるほどおかし
い描写がついている。

松本人志――彼は監督、共同脚本、出演をこなしている――の創造物は彼の潜
在意識から直接かつ完璧な形で出てきたように思われる。演出は偽ドキュメン
タリーのスタイルを効果的に表現している。リアリズムの正反対の極としてC
GIのシークエンスが適切に扱われている。

無表情な演技はとてもおかしい。映像に対するサウンドのクオリティはきわめ
て良好で怪獣のバトルシーンをスタイリッシュに盛り上げている。

日本の人気お笑いタレントである松本 Matumotoは悪名高い悪ふざけ屋である。
その精神にのっとり、彼の名前はスクリーン上でもプレス用資料でも監督週間
のカタログでも意図的に、彼の名前 Hitoshi Matsumoto のミススペルで書か
れている。