【UNITED 93】ユナイテッド93 Part4【9.11】

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41名無シネマ@上映中
>>22
>結局スレの最後までその根拠を提示する事はできなかった。

ちゃんと提示してますが。
「このような問題を論じる際に、知らなきゃ話にならんだろ」という知識を
持っていないと何の事だか分からなかったかも知れないけどね。

現役の軍人が映画の出演者に簡単な軍事教練などを副業として
「お忍び」で行う場合があるが、この場合は階級を明らかにする必要はないし
それ以前に階級を名乗ることはルール違反となる。これを守っていていれば
軍務に支障を来したり、参加した映画の内容などが問題にならない限り
軍当局は「黙認」という立場を貫き、介入してくる事はない。

でも階級を表に出して参加している場合は別。
この場合の協力者は軍の広報を通じて映画に参加している。
要は軍務の一環として参加しているわけだな。他のケースは最初から有り得ない。
さて、こういう参加を要請する場合、映画製作者は軍の広報に映画のシナリオと
それを軍が検討するのに十分な時間を提供しなくてはならない。
シナリオを受け取った広報の担当者は、映画の内容が触れている軍内部の
しかるべき部署にシナリオのコピーを配り、機密などに触れていないかを検討してもらう。
それで各部署からOKが出されれば、広報を通じて参加する軍人が派遣される。
42名無シネマ@上映中:2006/10/01(日) 01:11:42 ID:vPifEd7s
それで全てが済むかと言うとそうではない。
撮影には「アドバイザー」と名乗る軍関係者を立ち会わせるのが通例。
「アドバイザー」と書くと、何だか親切そうに見えるかも知れないが
実際には監視役も兼ねていて、彼らのNGには必ず従わなければならない。
そして、映画が完成したと言っても安心は出来ない。
関係者の立ち会いの下に内々の試写が行われ、ここでもNGが出る場合もある。

そのNGに従わない場合はどうなるか?
撮影の途中だろうが、制作費が膨らもうが、当局は遠慮無しに協力を打ち切る事になる。
厳しいチェックを通過して最終プリントのエンドロールにまで関係者の官姓名が残ったと言うことは
この映画には「検閲済み」のスタンプが押されたも同然ってこと。

「ハリウッドは軍の広報係か?」という映画界からの不満は全てこのシステムから来ている。
が、実物の兵器や軍隊を使えるウマ味から、映画製作者は渋々ながら従うしかないのが現実。
無論、裏をかく事も可能ではあるのだが、将来の事を考えるとこれも出来ない。
「軍隊内の男女差別」という要素を薄めなくてはならなかった『戦火の勇気』、
「人種差別」を完全に削除されたために、何のために典型的な保守白人を演じたジーン・ハックマンと
デンゼル・ワシントンとを対立させたか分からなくなってしまった『クリムゾン・タイド』、
やはり人種偏見を薄めたために大味なドラマになってしまった『英雄の条件』、
エリア51という要素に触れてしまったために、軍の協力を拒否された『インディペンデンス・デイ』など
このシステムの弊害に泣くハメになった映画は数知れない。
軍ほど厳しい機関ではない筈のNASAでさえも『アポロ13』に協力する見返りに
原作や脚本の初期稿では触れられていた「飛行士自殺用の青酸カリ」の削除を要求している。
これらのカットは全て「機密」とは関係のない理由からだ。
43名無シネマ@上映中:2006/10/01(日) 01:13:09 ID:vPifEd7s
この『ユナイテッド93』は扱うネタが「ホット」だったために、製作者側は万全の体制で協力を要請したが
それでも数々のNGを出され、当局関係者を集めて行われた試写の後では全体で5分ほど短縮されている。
カットされた主な部分は当局が「93便がハイジャックされた」と断定する前の部分。
極度の混乱状態を描いたオリジナルが当局の癇に障ったらしく、編集のマジックによって
証言から描かれたオリジナルよりも「幾分か聡明な」管制官たちが演出される事になった。
他にも当局の関係者の台詞が何ヶ所か理由も告げられず、一方的に削除を要求されている。
この部分の編集を担当したのはクリストファー・ルース。

実際のところ「軍の協力=軍の言いなり」というのは常識みたいなものなので
この映画だけを特に「プロパガンダと無縁ではない」と言う気は更々無いし、製作者の意図も別のところにあると思うが
「全くそういう要素が無い」と言い切るのは余りにもナイーブ過ぎると思う。