映画クレヨンしんちゃんを語ろう 28

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『しんちゃん』はタレントの出演を宣伝の一環にしていたので、誰にしようかという話がずっとありました。
ある日、夜中からコタツで寝ていて、「ああ、コタツで寝ちゃったよ」と朝起きたら、付けっぱなしのテレビに
丹波哲郎さんが出ていた。「ああ、この声いいよな」と思ったものの、無理だと思ってました。でも
プロデューサーに話してみると、「じゃあ一応聞いてみるから」と。そしたら決まってしまった。
 丹波事務所に打診して、後日「どうですか」とプロデューサーが電話したら、事務所の人が言うには、
「丹波はその映画に俺が必要なら出ると言ってます」ということでした。ちょっと感動しました。
「ええ、必要です」(笑)。それで本当に決まってしまった。いつもより早くゲストが決まったので、
この時は絵コンテも丹波さんの顔と声を想像しながら、丹波さんに合うセリフを考えて描くことができました。
 丹波さんはああいう人だから、はっきり言ってコントロールできない(笑)。現場も全部しきってましたから。
休憩も自分で出してました。「はい、ここで休憩」と(笑)。
 アニメのアフレコは経験のない人には難しいものです。『しんちゃん』のようなスケジュールでは、
完成した絵はできてないので、線だけでやる。セリフはボードが出たらそれに合わせて言うといっても、
プロの声優じゃないととてもできない。最初は一生懸命合わせてもらっていたのですが、結局
「何パターンか俺がやるから、それに合わせて絵をずらしてくれ」と。「うわ、困ったなー」と思ったけど、
そんなにズレはなく収まった。
7972/2:2006/09/25(月) 21:03:50 ID:u7gzJEBu
 丹波さんは魅力的な人です。西荻の丹波邸にご挨拶に行きました。「今丹波来ますから」と言われて、
応接間で待っていたら、風呂上がりで、ガウンを着て葉巻を持って現れて、「やられた」(笑)。
「やぁやぁやぁ、待たせたねえ」と。「僕は君の言ったとおり、何でもやるから、何度でも言ってくれよ、
何度でもやってあげるからー」と嬉しいことを言ってくれる。そんな人に言われると感激してしまう。
霊界の話とかもさんざん聞きましたが、全然嫌な感じがしない。「面白いなぁ」と。うさんくさいって感じが
全然しない。とにかく、丹波さんの「その映画に俺が必要なら出る」という言葉は心に残りました。
『クレヨンしんちゃん』とはいえ、「俺は映画を作っているのだ」と気づかせて貰えました。
(晶文社『アニメーション監督 原恵一』48〜49ページより)