【ネタバレ総合】ラストサムライ 二人目

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711toto ◆GIyFjXJ4X2
http://www.news.harvard.edu/gazette/2003/11.13/11-zwick.html

11月9日日曜日の夜、ハーバード・スクエア・シアターにて、エド・ズイック監督(74年度卒業生)の
新作品「ラストサムライ」のプレミア試写会が行われた。彼にとっては、30年ぶりの帰還である。
1971年、この同じ劇場にて、アキラ・クロサワ映画祭が開かれ、これがきっかけとなって、
ズイックは日本文化に取り憑かれた。「今夜、ここにいることは、喜ばしき皮肉です」。
試写会に招かれたハーバード大学の学生・教授たちに向かって、彼は語りかけた。
ズイックは、監督、プロデューサー、そして脚本家でもあり、テレビ・映画業界において高い名声を
得ている人物である。彼は、オスカー受賞作品『グローリー』『レジェンド・オブ・フォール』で
監督を務め、『タイタニック』『アイ・アム・サム』ではプロデューサーを務めた。
また、ビジネスパートナーであるマーシャル・ハースコヴィッツと組んで、『thirtysomething』
『My So-Called Life』『Once and Again』といった優れたテレビ番組も製作してきた。
712toto ◆GIyFjXJ4X2 :03/11/28 02:20 ID:2fPb2yoB
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『グローリー』『レジェンド・オブ・フォール』と同じく、『ラスト・サムライ』もまた19世紀後期を
舞台としており、強烈な戦闘シーンを組み入れる一方で、壮大な道徳的テーマを掲げている。
主役はトム・クルーズとケン・ワタナベ。テーマは、19世紀後期の日本における西洋の権勢と
伝統的日本文化との対立である。クルーズは、南北戦争の英雄ながらもアル中になり果てた
ネイサン・オルグレン大尉を演じている。オルグレンは、日本の天皇に雇われ、
近代軍隊の訓練を任される。目的は、日本の近代化にとってのお荷物であり、反乱を繰り返し、
伝統に固執するサムライ軍団を倒すことである。南北戦争後のアメリカ先住民虐殺に荷担した
ことについて、悩み苦しんでいたクルーズだが、早くも、カツモト(ワタナベ)を首領とする
サムライ軍団の捕虜となる。そして、徐々に、サムライたちの影響を受けるようになる。彼は、
日本語を習い、サムライの剣術をマスターする。そして、サムライの倫理の中核である名誉を引き受ける。
クライマックスでは、オルグレンとカツモトが、サムライたちを指揮して、中世型の武器・戦術で以て、
西洋流に訓練・装備された帝国政府の軍隊に挑む。驚くべき、そして運命的な最終場面が待っている。
713toto ◆GIyFjXJ4X2 :03/11/28 02:22 ID:2fPb2yoB
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『ラストサムライ』は12月5日に劇場公開される。そんな中、11月10日の月曜朝、
ハロルド・ボリトー教授(日本史専攻)の特別講義「サムライの構築」が開かれ、ズイック自身を目の前にして、
手厳しい批判が加えられた。講義シラバスには、今回の作品に対するダイレクトな批判が書かれている。
そして、サムライの神話についての分析が為され、もはやサムライの神話は、日本のポップカルチャーと
西洋のイマジネーションの中にしか存在しないものなのだという理解が示されている。
カジュアルな服装で柔らかい物腰のズイックは、これに対して冷静だった。
学術的な真実探求と映画製作上の技能とを切り離して、いじめられただけだったからだ。
「1つの文化が有する神話は、その歴史と同じくらいに重要な場合が多い」と彼は言う。
「劇作家みたいなものだ。僕らは、特定個人の真実に関心を持つが、同時にその偶像的意味にも興味を持つ」。
オルグレン大尉のようなアメリカ的な「厳格な個人主義」の観念はもはや存在しない、と彼は言う。
ストーリーの信憑性に関する学生の質問に対して、このストーリーの「all and none」が真実である、
とズイックは答えた。この作品の中心にあるのは、明治維新を舞台にした西洋的近代化と、
長期間鎖国をしてきた日本の伝統文化との対立である。それは、確固とした歴史的根拠に基づいている。
714toto ◆GIyFjXJ4X2 :03/11/28 02:22 ID:2fPb2yoB
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ズイックは、出発点として、サイゴウ・タカモリの物語から始めた。この人物については、イワン・モリスの
著書『敗北の気高さ』で語られている。タカモリが天皇を祭り上げ、後に反旗を翻す物語である。
本作品におけるディテールの多くは日本の史実に即したものだ、と彼は言う。
そして、彼に助言を与えてくれた歴史家、映画製作者、翻訳家たちを称えた。
「彼らは私の意図を全て理解してくれた。彼らは、僕が正しい理解をしていると判定してくれたよ」
ズイックによると、本作品の舞台となっている時代には、西洋から専門家が日本にやってきて、
日本人に「近代的」戦争について教育した。また、サムライ文化は弾圧され、廃刀令や丁髷禁止令が出た。
このことは作品中でも詳しく描写されている。刀、兜、布などの小道具についても、
ズイックは「驚くべきほどに時代に忠実である」と表現した。
しかし、ズイックも、歴史よりドラマ性が優先されている点があることを認めている。
忍者の姿をした暗殺団が出てくるが、これは単に、互いに敵対者であったオルグレンとカツモトとの間に
信頼関係を作り出すために用意されただけのものだ。「私は、カミソリの刃を踏み歩くような思いで、
エンターテイメントを作り、歴史フィクションを作ろうと頑張っている」とズイックは言う。
「膨大な歴史を2時間20分に圧縮しなくちゃいけない。その間はずっとソフィーの選択をやってるんだ」。
715toto ◆GIyFjXJ4X2 :03/11/28 02:23 ID:2fPb2yoB
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また、ズイックは、学生たちに、映画製作の実務・技能に関する見識を披露した。
ニュージーランドでの撮影では、日本人出演者のためのビザ、宿泊、通訳、食事などのネゴが必要となる。
彼は、剣道クラブや警察など、武術の達人たちがいそうなところを探し回り、
600-700人程度のエキストラを雇った。彼らは、戦闘演出家や振付師と、長時間を過ごした。
また、映画の中でサムライ式の戦い方を学ぶキャラクターを演ずるトム・クルーズは、
「ラストサムライ」に出演するまで、刀を手に取る機会がなかった。
ズイックによると、クルーズは、半年間にわたって訓練を受け、綺麗な刀さばきを覚えるだけでなく、
戦闘シーンで怪我を避ける方法も学んだのである。
クルーズは、その上、日本人スタッフと共に時を過ごし、微妙なアクセントを直すのを手伝ってもらったり
もしたのだ。ズイックはクルーズの言語習得ぶりを評価した。
716toto ◆GIyFjXJ4X2 :03/11/28 02:23 ID:2fPb2yoB
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ズイックによると、「ラストサムライ」の試作品を何人かの日本人に見せたところ、好評だったそうだ。
ズイックはクロサワからインスピレーションを受けているが、そのクロサワは、西洋文化を借用して、
マクベスやリア王といった物語を普遍化して作品にしている。
本作品を完璧なものにするために努力してくれた日本人協力者たちの功績を称えて、ズイックは言った。
「僕もたくさんヘマをしたけど、それに対しても、大いなるユーモアと善意とで応じてくれた」
結論を言うと、ズイックの物語は、歴史的正確さを圧倒するものと言えるだろう。
「文学の中で繰り返されてきた伝統的なサムライのイメージがどの程度正確なものなのかについて、
我々は学んでいます」ボリトー教授の講義に出席している学生、ローラ・コーエンは言った。
「この作品が真実に即していないからといって、この映画の真価を認めないわけではありません。
私は、この映画をとても気に入りました」
717toto ◆GIyFjXJ4X2 :03/11/28 02:25 ID:2fPb2yoB
以上、ハーバードでのズイックの講演内容を簡単に訳してみた。