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ラピュタ帝国の謎:
700年前、城は突如封印され、ロボットは眠りについた。かつて天上に君臨し栄華を誇ったこの城に、何が
起きたのか興味はつきない。
ムスカの家に代代受け継がれてきた古文書が、その謎を少し明かしている。それによると、ラピュタ人は
およそ考えられる最高の富を持ち、ぜいたくの限りをつくしていたが、正体不明の疫病に襲われた。人はやせ
おとろえ、ささいな病気にも勝てずバタバタと倒れていった。王はついに決意する。
「いずこかに得ん、死生の地」───
『ラピュタ伝承』の最終章には、地上のどこかに降りたことが暗示されている。かつて君臨した地上の人々の
悪意を極度に恐れたラピュタ人は、ごく限られた、たとえば金貨と身の回りの物しか持たず、しかもひっそりと
暮らすため目立たぬところを選んだであろう。ゴンドアの谷など最適だったといえる。
ところで、病がいえて後、なぜ天上にもどらなかったのだろう。想像するに、かりそめの地面に暮らしてきた
ラピュタ人が本物の大自然にふれたときの衝撃はいかばかりだったろうか。それは億万の宝物にも勝るもの
だったのではないだろうか。
こうして歳月がすぎ、ラピュタは伝説となり、ロボットを動かす言葉も"おまじない"となり、シータの「飛行石」
も単なる結婚式の飾りとなっていった。しかし、伝説となって後、ふと満天の星を見上げたとき、谷の人の薄め
られたラピュタ人の血は騒いだのではないだろうか。