喫茶店から煙が消えた 諏訪の「煎豆茶亭」全面禁煙
愛煙家たちのオアシス、喫茶店。屋外の公共スペースでも禁煙が進む中で
貴重な場所であり、最近では営業面での“売り”としている店もある。しかし、
諏訪市の老舗喫茶店が半年ほど前から試験的に店内の全面禁煙を打ち出し、
7月から本格実施をはじめた。常連客も一部減ったが、「香りもコーヒーの一部。
きれいな空気の中でおいしく飲んでほしい」との思いを大切にした大英断だ。
煎豆茶亭(こうひいてい、古畑しのぶ店長)は、同市JR上諏訪駅前の商業施設
スワプラザ4階にある。同施設の開業当初から約30年にわたって営業する市内
でも老舗コーヒー店の1つ。場所柄から買い物客や市民会館利用者、商談の
営業マンらが多く利用する。奥まった位置関係から、サラリーマンの憩いの場所
でもあり、女性の喫煙者にとっても重宝がられていた。
同店が、禁煙の検討をはじめたのは昨年12月。スワプラザが共用スペースで
全面禁煙に移行したのがきっかけだった。
スワプラザでは、たばこの煙の健康被害を考慮。「公共の場での喫煙は時代に
即さない」との考えで踊り場などの灰皿を一斉に撤去した。事前にステッカーなどを
張って買い物客に啓発。一方で、入り口近くの屋外2カ所に新たに灰皿を設置した。
しかし、テナントについてはそれぞれの事情もあり、各店舗の対応に任されている。
これを受けて、煎豆茶亭でも、振って沸いたように禁煙論争が起こった。
(つづく)
長野日報 更新:2008-8-4 6:00
http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=11500 >>318つづき
心配だった客離れ
コーヒーを飲みながらたばこを吸う人の割合は非常に多い。また、禁煙の広がりで
喫茶店を“喫煙の聖地”と考える愛煙家もいる。いずれにせよ、この業種にとっては
営業面で大きな影響を持つからだ。最も心配されたのは「常連客の“店離れ”だった」
(同店)と振り返る。
数度にわたるスタッフ会議も紛糾した。コーヒー豆の卸元メーカーにも相談。
ファミリーレストランなどが取り入れている禁煙時間を設定する「時間制」や、場所を
区切る「分煙方式」も提示された。しかし、方向付けの決め手となったのは「経営者の
考え方を大事にしたほうが、悔いが残らない」というアドバイスだった。同店では、
スワプラザの禁煙に合わせて半年後の見直しを視野に試験的な全面禁煙に踏み切った。
常連客の中には「そんなことをしたら店がつぶれる」と心配する声も多く、実際に
店から足が遠のいた喫煙客もいた。反面、禁煙が浸透すると客層にも変化が表れ
「安心してコーヒーが楽しめる」と言う女性客が増えた。売り上げ面では、年明けからの
景気後退感もあり、1割ほどの減少になっていると話す。
6月下旬、同店では禁煙についてのアンケートを行った。半年の試行を経た上で
来店者に賛否を問うものだ。結果は「どちらでも良い」を含め75%が禁煙に好意的な
回答だった。「以前からの喫煙客の中には、屋外でたばこを吸ってから来店し、
コーヒーを飲み終わって再び屋外で喫煙する手慣れたお客さんもいます」。
同店では、徐々に「禁煙の喫茶店」が浸透してきたとし「香りを楽しむのも味わい方の
1つ。きれいな空気の喫茶店のイメージを大切にしたい」と話している。